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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編②
31/171

31話 ティタニアたちの能力

その日は平和な1日だった。


特になにも事件が起きずいつものように授業をうけ、部室で駄弁る。いつもと変わらない楽しい時間。


そして、5時を過ぎたところで解散となる。今日は葉月と千華が用事で先に帰ってしまったため、俺はティタニアと帰る。


「今日も楽しかったですね~」


笑顔のティタニアが隣を歩く。転校してきて早2週間、学校生活にも慣れてとても楽しそうだ。


「そういえば今日のご飯はなんですか?」


「今日かーしょうが焼きにするか。」


「おお、お肉だやったー!」


こどもみたいにはしゃぐティタニア。そんなに嬉しいんだな。


俺たちは電車に乗って西園駅まで行き、そこから家に帰る。家の近くまで来たところでアンヘルと偶然会った。


「姉さんに先輩、お疲れ様です。」


「あっ偶然だね。一緒に帰ろう。」


3人で残り少ない距離を歩く。あと5分もすれば家に着く。


「…………」


そんな時、ティタニアが珍しく真剣な顔で明後日の方向を見つめる。


「どうしたんだ?」


不思議に思って問いかける。こいつがこんな顔するなんてよっぽどの事があったのだろう。


「和人くん、アンヘル、ちょっと着いてきてもらえますか?主に道案内として。」


真剣な眼差しがこちらを射ぬく。


「わかったよ。そんな顔されたら断れないし。」


「私も大丈夫だよ。」


「……ありがとう。それじゃあ行こうか。」


ティタニアは俺の道案内に従いながらある場所を目指していく。商店街を通り、だんだん人気のない道に進んでいく。


やがて、たどり着いたのは廃工場だった。


「ここって最近になってつぶれた工場だよな。どうしてこんな所に?」


「はい、ちょっと説明すると長くなるんですけど……話しますね。私は孤児院で暮らしていましたが、そこでシスターとしても過ごしていました。」


ティタニアは落ち着いた声色で話す。


「それはアンヘルも同じで、忙しいながらも楽しい生活をしていました。そんな中で私たちにはある能力がありました。和人くんたちと同じく能力者なんです、私たちは。」


「あぁ、それは天夜さんから聞いたよ。でもどういう能力かまでは聞いてないな。」


「そうですか……私の能力は霊能力です。どういうものかと言えば霊体が見えるし話せるし、触ろうと思えば触れるし、感じられる能力です。一般的に霊感があるって言うものの完全版です。」


「そうなんだな。」


「一般的に霊って言うのは半信半疑で信じられてきましたけど、実際にはそこら中にうじゃうじゃいるんですよ?今だって和人くんのことを抱き締めてる女性いますし。」


「はぁ!?」


驚いたせいか素っ頓狂な声をあげてしまう。


「あぁ今逃げちゃいました。なんというかずっと居るみたいなんですよね。和人くんの守護霊かなにかですか?長い黒髪のおしとやかな女性で、和人くんのことを「かっこいい」とか「可愛い彼女もらえてよかったね~!」とか言ってるたまに吐血してる人なんですけど。」


「うん待って、それ母さんじゃね?」


その女性にひとつだけ心当たりがあった。あの人なにしてんの?


「あっそうみたいですね、今自己紹介されました。和人くんのお母さんって文香さんっていうんですね。私今すごい応援されてます。」


母さんは霊になっても元気なようだ。吐血するのには変わらないようだが。


「話を戻しましょうか。私はこの能力を使ってシスターとはまた違った活動をしていました。それが祓魔師エクソシスト。」


「祓魔師か……」


漫画なんかでみたことのある祓魔師。確か悪魔や悪いものを祓う人だったはず。


「私は祓魔師としてかなり強いと自負してます。実際悪魔や悪霊を100体以上祓ってきましたし。」


その話を聞いて、俺は雷にうたれたような衝撃に襲われる。凄すぎだろ……めちゃくちゃ強いじゃん。


「それで、この中から嫌な気配を感じたので来たということです。道案内ありがとうございました。」


ティタニアは礼儀正しくペコッと頭をさげる。


「ここからは私に任せてください。和人くんは安全な場所で見ててください。」


「見るってティタニアの戦闘をか?」


「はい……アンヘル。」


「わかってるよ姉さん。」


アンヘルはティタニアと手を合わせるとこちらに来て手を差し出す。


「先輩、手に触れてください。」


俺は言われるがまま、アンヘルの手に触れる。その瞬間、異様な感覚に襲われる。誰かの温かみが身体全体で感じられる。


「私の能力は共有化です。簡単に説明すると、私に触れた相手の感覚や能力を任意で共有するものです。」


目を白黒させている俺にアンヘルが語ったのはとんでもない説明だった。


アンヘルの能力は、能力の共有までを可能にする。つまり、この能力を使えば誰でも能力者になれるのだ。彼女の能力は使い方によってはとんでもない事を引き起こすと理解した。


「あぁ、でも私の能力は時間制限があるんです。1回10分で、その人がもう1回共有化の恩恵を受けるには30分のクールタイムが科されますし、一度に共有化できる人数は私含めて5人までですし。」


アンヘルは慌てて欠点を話す。それでも十分危険な能力なことがわかる。葉月や花火たちとは別ベクトルで。


「今私の霊能力も共有してるので和人くんも霊が見えるはずですよ。」


辺りを見渡してみると、ティタニアの言う通り霊が見えた。ふわふわ飛んでいるものもいれば、そこら辺を歩いているものまでいる。


「確かに見える。……ほんとに霊っていたんだな。」


「あー初めて見たときの顔ってそうなっちゃいますよね。私も初めて見たときそんな顔してましたし。」


俺が呆けた顔をしているとアンヘルが笑いかけてくる。


「長話はこの辺にして、早く行きましょうか。」


ティタニアはそう言うと廃工場の中に入る。俺たちもあとに続く。


廃工場の中はホコリ臭くて月明かりがさしていた。月明かりが照らすなかには1人の人間の男性がたたずんでいた。いや、人間ではないのだろう。


「あなたですね?邪悪な気を放っていたのは。」


「おや、僕の事が見えているのか?これは珍しい。」


振り返った男は不敵に笑う。


「で、なにかようかい?」


「言わなくてもわかりますよね?あなたを倒します。祓魔師の名に懸けて。」


ティタニアは険しい顔で応じる。そして、懐に手を入れるとあるものを取り出す。月明かりによってぎらりと光る見惚れるほどの淀みない刃。それは短剣だった。


「祓魔師か……やれやれ、めんどくさい事になった。今ここで殺してやるか。」


男は狂った笑いを浮かべるとティタニアに向かってまっすぐ突進してくる。


「ふっ!」


ティタニアは鋭く短剣を振るって迎え撃つ。男は俊敏な動きで彼女の後ろをとり、鋭利な爪で首を跳ねようとする。


それを、

「甘い!」


ティタニアは短剣で受けとめる。熱い火花が散る。


「ほう……なかなかやるみたいだね。」


「あなたは思ったより全然強くないですね。低級悪魔ですか?」


「なめやがって!僕は低級悪魔なんかじゃない。そんな雑魚と一緒にするな!」


ティタニアと男の戦いは激化する。どちらも目で追うので精一杯な動きをする。


「すごいな……これが祓魔師の戦い。」


「先輩はこの戦闘をしっかり見ることができますか?私は全然です。」


「俺はどうにか見える程度だ。」


「相手はどうやら悪魔みたいです。姉さんいつもより苦戦してますし。」


「そうなんだ。」


戦闘によって生じた風を全身で感じながらアンヘルの声に耳をかたむける。


「というかティタニアってあんなに動けたのか。びっくりなんだが。」


「はい、姉さんは元の身体能力もいいですけど祈祷術を使って身体能力の底上げをしてるんです。」


「祈祷術?」


「はい、簡単に言えば魔術の親戚みたいなものです。魔力を使って使役するのが魔術ですが、祈祷術は真なる祈りを使って使役します。」


「なるほど……祈祷術って魔術と同じ事ができるのか?」


「はい、全く同じわけではないですが似たような事ができます。今姉さんが使ってるのは身体強化ですね。あっそろそろ決着がつくころですよ。」


アンヘルの言葉通り、ティタニアの右ストレートが悪魔の頬を捉えて体ごと吹き飛ばす。その衝撃で悪魔は壁におもいっきり激突しうなだれる。


「これで終わりです。」


ティタニアはダメ押しといわんばかりに何かを取り出す。それは、

「単発銃……!」


その名の通り1発撃ってはまた装填しないといけないものだった。


それは一般的にトンプソン・コンテンダーと呼ばれる拳銃だった。


ティタニアは弾をコンテンダーに込め悪魔に照準をあわせる。次の瞬間、爆ぜるような音とともに弾が弾き出される。弾は悪魔の胸を貫通して絶命し、灰となる。


「……終わりました。」


ティタニアは十字を切りこちらに戻ってくる。


「悪魔に対して十字を切ってよかったのか?」


「えっと、癖になってるんです。なにかを祓ったあとに十字を切るの。」


ティタニアは柔らかな表情で話す。疲弊してるのか元気が無いように見えた。


「たとえ相手が悪霊だろうと悪魔だろうと、その存在を殺したのは私ですから。弔いと精神安定のためにやってます。」


「そっか……お疲れ、今日のしょうが焼き大盛りにしてやるよ。」


「えっ、いいんですか?」


「いいんだよ。お前が人知れずこんなことしてるんだ、食事くらい贅沢させてやる。」


「和人くん……ありがとうございます。」


屈託のない笑みを浮かべるティタニア。その笑顔はとても眩しかった。


「あのっ、ということはこれからのご飯全部大盛りですか?それは嬉しいです。」


「それはちょっときついからやめてくれるかな。」


「うえーそうなんですか?まぁご飯おかわりするのでいいですが。」


真剣な顔から一転、能天気にそんなことを言うティタニア。


「今の炊飯器だとちょっと足りないんだよな、ティタニアいるし。……新しいの買おう。」


「それなら今週末に行きますか?私もお供しますよ先輩。」


「ありがとう。ついでに他の家電も見ておこうかな。」


遅くなってしまった帰り道、話をしながら帰る。今週末の事や今日の夕飯の事。


どうでもいいような話も何年後かには今空に見える星のように輝いて見えるのだろうか……




帰ってきたら葉月と千華に問い詰められる。葉月には「ご飯~」と泣かれ、千華には「2人とこんな時間までなにしてたわけ?」と厳しい口調で聞かれる。


連絡を忘れた罰として葉月にはあとでなにかを奢ることになり、千華には「お風呂のあとから寝るまで私にくっついてること」という命令をうけた。


葉月のほうはわかるとして、千華の命令は「罰じゃなくね?」と思いながらその要求をのみこんだ。





今日の出来事を思い出す。ティタニアとアンヘルの能力のこと。ティタニアのもうひとつの顔のこと。びっくりしたことが多すぎる。


あの話を聞いて、気になることがある。どうして2人が孤児院で生活していたのかところだ。どういった経緯であずけられたのかとても気になる。


もしかしたら2人にもキズがあるかもしれないしな……


まぁなにはともあれ、あとで2人にもティタニアたちの事話しておかないとな……


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