29話 付き合ってることが周囲にバレました
ティタニアとアンヘルがうちに住み始めてから2日が経過し、2人は新しい環境になれ始めてきたようだ。
どちらも楽しそうに学校に行き、友達をつくっているようだ。ティタニアは相変わらずの人気だが、葉月が一緒にいるようになったせいか初日より賑わっているように感じる。
俺は今日もいつも通りの学校生活を享受していた……はずだが、
「ひいらぎー!!どういうことだ!」
「なんでお前が千華ちゃんと付き合ってるんだよ!!」
教室に入るなり男子数名に囲まれて、千華との関係の説明を求められていた。なんでこうなったんだ……
「えっと……1回落ち着こうみんな。」
「これが落ち着いていられるか!俺たちのアイドルである千華ちゃんと柊が付き合うなんて……きっとなにかの間違いだ!」
「「そうだそうだ!!」」
千華派のリーダーである金田と他のメンバーは血涙を流しながら叫ぶ。メンバーの中には菊地や坂田がいて驚く。お前らも千華派だったのかよ。
「おい、君たち邪魔なんだけど。」
どう収拾をつけようかと戸惑っていると、ちょうど登校してきた三宅がそう言う。
「君たちがいると僕が席に座れないんだけど。それに、もうすぐホームルームが始まる。早く席につけよ。」
「クソッもうそんな時間か。柊、あとで説明してもらうからな。」
金田ら千華派の面々は時計を確認するとそれぞれのクラス、席に戻る。
ようやく解放されたせいか、大きなため息をつく。
「助かった……でもまた絡まれそうだな。」
「どうしたんだ柊?君があの男子たちに絡まれるなんて珍しい。」
「あーいや、実はな__」
俺はありのままのことを話す。千華と付き合っているのかと詰め寄られたこと、確かに付き合ってはいるがなんでその情報が漏れたのかわからないこと。それを話すと三宅は驚いたような顔をする。
「柊が雪原と付き合ってるとは驚いた。しかし……誰にもその事は言ってないはずなのに周知されているとは。一体なにが……」
右手を口元に持ってきて考え込む三宅。葉月とティタニアは知ってるけど言わないだろうし……どっからわかったんだ?
「とにかく事実を言おうと思うよ。今の状態ではぐらかしても意味ないし。」
「あぁそうだな、頑張れ。」
ひとまず、あとで千華と話してみようと思いながらホームルームを迎える。
そのあとは大変だった。休み時間になると千華派の人間がひっきりなしにこの教室を訪れ、俺に説明を求めてくる。その度にしっかりと真実を話してなんとか納得してもらう。その作業を何回も行う。
「つっっかれた……行事並みに疲れたんだけど。」
時間は昼休み、机に突っ伏する俺を葉月が苦笑して見つめる。
「お疲れ和人、大変だったね。」
「いや人来すぎだろ。改めて千華の人気を身にしみて感じたわ。」
「だろうね。私もびっくりしちゃったよ。私も誰かと付き合ったらああなるのかな?」
「なるんじゃね?」
葉月と話ながらも、お昼をとろうと弁当を取り出す。立ち上がろうとしたときにスマホがなる。
「あっ、千華からだ。」
千華からきた内容は「部室で待ってる」だった。すぐ行こ。
俺は急いで部室までの道を駆け、千華に会いに行く。部室の扉を勢いよく開けると、中の人物はびっくりしたように肩を震わす。
「ちょっ、なにいきなり。びっくりするんだけど。」
「ごめんな千華。勢いつけすぎた。」
驚いた様子の千華に謝罪し隣に座る。座ったところで異変に気づく。
「あれ、ところで冬は?」
「冬なら屋上でご飯食べてるわ。2人で話したかったし。」
「そっか。話したいことってもしかして……」
「私たちが付き合ってることがいつの間にかバレてること。一応確認なんだけど、あんたに心当たりは?」
「ないよ。今日男子に詰め寄られて初めて気づいた。千華は?」
「私もさっぱり。対応が大変だったわ。」
「はぁ」っと千華が大きなため息をつく。その顔には明らかに疲労の色があった。
千華はこちらに体を向けると次の瞬間、抱きついてきた。彼女は俺の胸に顔を埋めてうーうー唸っている。
「なんであんなに人が大量に押し寄せてくるのよ……しかも新聞部まできたし。男子も女子も色々言って……あいつら和人のことろくに知らないくせになに知ったような口聞いてるのよ。」
「あはは……」
俺のことを強く抱き締めながら文句を言う千華の頭を、苦笑しながら撫でる。
撫でること数分、ようやく落ち着いた千華は「迷惑かけたわね」と言って俺から離れる。不満は全部ぶちまけたようだ。
「いや全然。むしろうれしいよ。」
「ふーん、それならいいんだけど……前髪ちょっと変になってる。」
千華は手鏡とにらめっこしながら崩れた前髪を直している。
「で、どうする?犯人探しするか?」
「犯人探しって言ってもね……実害は受けてないのよね。強いて言うなら人の対応ってところだけど。それに、私たちが付き合ってることをながした奴が悪いことをしたわけじゃないしね。」
「まぁそうなんだよな。俺たちは隠そうとしてはなかったわけだし。」
「それに、もともとは張本人が勝手に勘違いしただけかもだしね。今回はそれがたまたま当たったって可能性あるし。だから犯人探しはやらなくていいと思うわ。」
「そうだな。むしろこれのお陰で付き合ってることを話せたわけだしな。感謝でいいか。」
犯人探しはしないことで決定し、ご飯を食べ始める。その時間は静かで温かくて、幸せだった。
やがて昼休みが終わり5、6時間目が終わって放課後になる。今日はなぜか職員室に呼ばれているので足早に向かう。
「失礼します。」
そう挨拶して先生の領域に足を踏み入れる。そして、俺を呼んだ主である五十嵐先生のもとへ直行する。
「先生、なにか用ですか?」
「おぉ柊、よく来てくれたな。……実はな、」
「おっ柊じゃないか~元気か~?」
五十嵐先生の声を遮った声の主は女性の先生で、歳は30代後半だ。
その人物は隣のB組の担任の江川先生だ。特徴としては世間話、恋バナ好きの数学の先生だ。
「ちょっと江川先生、遮らないでくださいよ。」
「いいじゃないですか五十嵐先生。どうせ柊呼んだ理由って私と話をさせるためですよね?」
「まぁ……そうですけど。」
俺を除く2人で会話が進んでいる現状に、首をかしげるしかない。
「柊、今日お前を呼んだのは江川先生と話をさせるためなんだ。」
五十嵐先生がそう説明してくれる。が、思い当たる節がない。俺江川先生になんかしたっけ?
「今日は大変だったみたいだな柊。職員室でも話題になってたぞ。」
「そうなんですね。確かに今日は大変でした。あんなに人に絡まれたの初めてですよ。」
「その事なんだけどな……すまん、それ私のせいだわたぶん。」
へらへらしながら手を合わせてとんでもないことを言われる。言われた瞬間硬直する。
「えっあのっ、すいませんどういうことですか?」
「あぁそれがさ、私見ちゃったんだよ。夏休み中に柊と雪原が仲よさそうに歩いてるところ。それと、西園の本屋でお前らが話してるところも見てな、付き合ってるんじゃって思っちゃったんだよ。すっごい楽しそうだったし。
それでさ、職員室でお前らが付き合ってるかもって話してたら他の生徒の耳に入っちゃったかもなんだよね。」
「だから付き合ってる疑惑が公になったと?」
「実際には誇張されてるみたいだけどな。とにかくすまん、迷惑かけたな。」
「もういいですよ。大変でしたけどみんなに公表するきっかけになりましたし。」
「いやーそう言ってもらえると私も安心するわ。そうだ、これ2人で食べてくれ。」
そう言って差し出してきた袋の中にはお菓子が入っていた。
「ありがとうございます。遠慮なくいただきますね。」
笑顔で受け取り、職員室をあとにする。
その後は部室に行って、いつの間にかうちの部に入部したティタニアや葉月たちと話す。
ティタニアが入ってからより一層賑やかになったうちの部活。見ているだけで楽しい。
「ねぇ、職員室でなに話してたの?」
千華が俺の隣に来て、そう聞いてくる。
「いやそれがさ__」
職員室で話されたことを全部話す。全部話終わると、千華は顔に手を当ててため息をつく。
「犯人はうちの担任だったのね。江川先生なにしてるのよ……」
「俺も最初聞いたときびっくりした。」
「というかあの時見られてたのね。気づかなかったわ。」
「俺もだよ。まぁ、もう気にしてないからいいんだけどね。それよりもお菓子もらってきたから一緒に食べようか。」
「えぇ、そうね。」
「なになに、お菓子あるの?私も食べたい!」
「すみません私ももらっていいですか?」
「私も食べたいっす。」
「それじゃあみんなで食べましょうか。お茶いれるわね。」
次々にくる葉月やティタニア、花火を見てクスリと笑う千華。最近彼女は生き生きしてると感じる。
カーテンの隙間から夕日がのぞく特別棟の一室、そこでは男女が楽しそうにお茶会をしていた。




