28話 転校生~後編~
お互いの事がよくわかったタイミングで西園駅に到着し、改札を通る。
「ティタニアの妹ってどんな子なの?」
「そうですね、オレンジ髪の子ですよ。目立つのですぐわかると思います。」
ティタニアから教えてもらった特徴のオレンジ髪の女子を探す。
探しはじめてからすぐに見つかった。相手もこちらに気づいたようで、ティタニアを見ると走ってくる。
「無事に帰ってきてくれてよかったです、姉さん。」
その少女はオレンジ髪のサイドテールで人目を惹くオッドアイが特徴的な、これまた美少女だ。
「紹介するね、これから私たちがお世話になる家の方々。こっちから和人くん、葉月ちゃん、千華ちゃん。」
ティタニアは俺らを順々に指差しながら少女に紹介する。
「えっと、これからよろしくお願いします、みなさん。」
「で、この子が私の妹の」
「アンヘル・レイ・サンドロットです。これから姉が迷惑をかけちゃうかもしれませんがおおめに見てあげてください。」
アンヘルと名乗った少女は礼儀正しくペコッと頭を下げる。
「ちょっとアンヘル、私迷惑かけないから大丈夫だよ。」
「姉さんは色々迷惑かけちゃうでしょ?極度の方向音痴だし。」
「でっでもそれは頑張って克服するし。」
アンヘルに方向音痴を指摘され、慌てるティタニア。これを見ると、ティタニアってほんとに姉なのかと思ってしまう。
「とっとりあえず帰りましょう。和人くん、家に案内してください。」
「そうだな。それじゃ行くか。」
俺たち3人の先導で2人をうちに誘導する。その道中でアンヘルと自己紹介をかわす。
うちに着くと、2人に合鍵を渡してから中に入る。
「うわーすごいですね!昔ながらの日本の家って感じがします。」
「素敵な家ですね。こんなところに住んでたなんて羨ましいです、先輩。」
アンヘルから笑顔でそう言われる。いつの間にか彼女は、俺の事を先輩と呼ぶようになっていた。
「和人、外に段ボールの山あるけどこれって、」
「ティタニアたちの荷物だろうな。中に入れて荷ほどきするぞ。」
段ボールを中に運んでティタニアたちの部屋に置く。その中の大半は服だった。
「あっ、すごいねこれ。シスター服ある。」
葉月はティタニアの服の整理中にシスター服を見つけたらしく、目の前に掲げていた。
「私たちは孤児院兼教会育ちなので学校以外はそれを着て生活してました。なので今ある私服はほとんど着たことないです。」
「はぇーそうなんだね。可愛いのあるのに、もったいない。」
「でもこれからたくさん着れるので楽しみなんです。」
ティタニアとアンヘルは笑顔で私服を見ている。
「おーいなんか聖書でてきたぞ。これどこに置けばいい?」
「それはそこに置いといてください。」
「聖書があるってことはティタニアたちってキリスト信者?それともユダヤ?」
「あーいえ、私たちのところではそんな大層な宗教は信仰してません。いわゆるマイナー宗教です。」
葉月の問に対して、ティタニアは苦笑して返す。
「そうですね、その聖書も教養のためですし。私たちの宗教の教えは結構ゆるいですよ。1日1回の礼拝でいいですし、食べちゃいけないものもないですし。」
「そうなのね。」
ティタニアたちの説明に「へぇー」と関心する。もっとその宗教について聞いてみたいな。
「ふぅ~ようやく終わったね。和人、早くご飯にしよ。」
作業開始から20分、荷ほどきが終わり、葉月が伸びをして言う。
「へいへい。すぐ作っちゃうな。」
「私も手伝うわ。」
「ありがとう千華。」
俺は千華と一緒に夕食作りをする。今日の夕食はシチューだ。2人でてきぱきと調理していく。
調理すること数十分、美味しそうな匂いが居間を包む。
「わあぁ……とっても美味しそうですね。」
「うん、そうだね姉さん。」
目を輝かせるティタニアとニコニコと笑うアンヘル。喜んでくれてよかった。
みんなで一斉に食べ始める。
「美味しい……先輩料理上手ですね。」
「ありがとう。ティタニアはどう……」
そこまで言って口が止まる。ティタニアはハグハグとシチューにがっついていた。言うまでもなく美味しいようだ。
「あの、すみませんおかわりください。」
「はやっ!」
「すみません先輩、姉さん食べるの早くて大食いなんです。」
「ティタニアってスタイルいいのに、栄養どこにいってるんだろうね。あっ……」
「あはは」と笑う葉月が急に真顔になった。その視線の先には豊かな胸があった。
「私も結構食べてるはずなのに、なんで栄養いかないんだろうね。」
葉月は自分の貧しい胸とティタニアの胸を見比べて言う。その目は珍しく死んでいた。
「もしかして葉月って自分の胸のこと……」
「かなり気にしてる。本人のものは見ての通りペッタンコだし。」
「ペッタンコとか言わないでよ!ちゃんとあるよ!!」
「ハグハグ……なにがあるんですか?」
ティタニアは食べるのに集中しすぎて聞いていなかったようだ。
「ティタニアに言うのは負け惜しみに聞こえるから言いたくない……」
葉月は涙目でテーブルに突っ伏す。あっ撃沈した。
「これ、とどめ刺したのティタニアになってない?」
「結果的にはそうなんじゃ?」
「葉月さん、頑張ってください。姉さんはスタイルはいいですけど、そのぶん危なっかしいですし、マイナスな面も結構あるので。」
「……おかわりください。」
必死にフォローを入れるアンヘルをよそに、ティタニアは黙々と食べ進めて今おかわりをねだっていた。
「これを見てるとアンヘルが姉に見えてくるんだけど。」
「なんかわかるわ。あっ、私もおかわりいい?」
俺はちょっと泣いてる葉月、それを宥めるアンヘル、シチューをがつがつ食べるティタニア、俺の隣で若干楽しそうな千華をそれぞれ見比べて苦笑いをするのであった。
夕食も終わりひと段落ついた頃、自室で千華と話す。
「なぁ千華、俺たちが付き合ってるってことどうやって周りに知らせたらいいと思う?」
その話題が俺の口から出たとき、千華は驚いた顔をする。
「そんなに驚くことか?」
「驚くことよ。そもそも、あんたからその話題が出ること自体驚いたわ。」
「そう、なんだ。」
「まぁとにかく、その事は私も話そうとしていたことだし話しましょうか。私はほのかに匂わせることから始めた方がいいと思うわ。」
「そうすればめんどくさい事にはなりにくいってことか?」
「よくわかったわね。直接広めるよりじわじわと広めていった方がごたごたは少ないと思ったから。」
「あーそっちの方がいいのか。俺はそのまま言っちゃった方がいいと思ったな。そうすれば最初はすごい騒ぎになるけど徐々に沈静化すると思うし。」
「うーんどっちの方がいいのかしら。」
腕をくんで考えこむ千華。俺も少し考えてしまう。
「ひとまずはほのめかす程度でいいんじゃないか?で、聞かれたら答える感じでどうだ?」
「……まぁひとまずはそうしましょうか。」
考えてもいい案が思い付かなかったのか、千華は妥協案を受け入れる。
「和人くん、って千華ちゃんも一緒なんですか?」
急に部屋に入ってきたティタニアは千華のことを一瞥する。
「えぇ、だって一緒の部屋だし。」
「ふぇ!?年ごろの男女が一緒の部屋って……そんなこと駄目です!不埒です!!」
千華の言葉に顔を真っ赤にするティタニア。あわあわしまくっていて、なんかマスコットみたいだった。
「いや、別にだいじょぶよ。付き合ってる間柄なわけだし。」
「付き合っていても駄目です!そんなの結婚してからじゃないといけないんですよ!?」
「そこら辺の教育はしっかりしてるんだな。」
「しっかりし過ぎじゃない?」
若干ジト目でティタニアを見る千華。
「和人くんたちは付き合ってると言いましたけど、まさかキスとかしたんですか?」
「したわよ。こいつが急にね。」
「なっ……それはもっと駄目です!!赤ちゃんできちゃいます!!!」
ティタニアは顔を茹でだこみたいに赤くして取り乱す。てかキスして赤ちゃんできるって、古い気がするんだけど。
「ねぇ……ティタニアってキスして赤ちゃんができると思ってるの?」
「えっ、そうなんじゃないんですか?」
「それが違うのよ。詳しくは……今は言わないでおくわ。」
千華はそう言うと目をそらす。今言ったらティタニアには刺激が強すぎると思ったんだろうな。
「うぇーなんでですか!?教えてください千華ちゃん。」
「あなたにはまだ早いから駄目よ。ちょっ、くっつかないで……!」
納得いかない様子のティタニアは千華に抱きついて教えをこう。千華は困惑していた。
「先輩、お風呂あがりました。って、なにしてるの姉さん!?千華さんに迷惑かけないの!」
「うぅ……だって千華ちゃんがこどもの作り方を教えてくれなくて。」
「えっと……姉さんにはまだ早いよ。」
「アンヘルまでひどい!」
「なになに、どうしたの?」
葉月までもが顔をだす。涙目のティタニアは葉月に向き直り、状況を説明する。
「ほうほう、なるほど。こどもの作り方か……そんなの、あれをあれにぶっこんであれすればいいんだよ。」
「あの、あれってなんですか?私にはさっぱりわからないんですけど。」
葉月の話を聞いて、首をかしげるティタニア。まぁ説明は雑だな……わからないこともないけど。
「とにかく姉さんにはまだ早いんだから、今は諦めて。」
「うぅ……じゃあいつになったら教えてくれるの?」
「姉さんがもっと教養身につけたらいいよ。」
「うん、それなら頑張る。あっ、私お風呂入ってきます。」
アンヘルの言葉によってティタニアに笑顔が戻る。そして、すぐさま風呂に行った。
「あんなこと言ってよかったのか?」
「まぁ、いつかは教えないといけませんし……」
「というかアンヘルは知ってたのか?」
「はい、知ってますよ。初めて知ったときはすごく驚きました。今まで聞いてきた事と違うなって。」
「確かに。多少なりともびっくりはするわよね。」
「今の姉さんに教えたら絶対倒れると思うんです。だから教えられなくて。」
「うん、それはわかる。ティタニアのことだから顔真っ赤にして倒れそう。」
こどもの作り方を知って倒れるティタニアは容易に想像できてしまった。
「とりあえずこの話は終わりにして、みんなでボードゲームでもしない?親睦会ってことで。」
「いいかもね。やりましょうか。」
「肝心の奴今風呂だけどいいか。あがってきたらテンション高めで交ざるだろうし。」
「えと、よろしくお願いします。」
こうして俺たちは親睦会ということでボードゲームをすることになった。葉月がお菓子と飲み物を持ってきてくれ、賑やかな場がさらに盛り上がる。風呂からあがったティタニアは、予想通りテンション高めで交ざってきた。
この日の夜の自室はとても楽しく、きらびやかな空間になっていた。




