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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編①
23/171

23話 告白

~数分前


「ねぇ千華、冬ちゃん心配ならそっと見に行かない?」


二人の背中を見送りながら、なんとなくそわそわしてしまっていた私に葉月が提案する。


「でも……いいのかな?二人の大事な話なのにそれを見に行くなんて。」


「ちょっと覗くだけだからだいじょぶだよ。それに、私も気になるし。」


そう言って笑う葉月に私は甘えた。


「じゃあ行ってみようか。」


私たちはバレないように彼らのあとをつける。こうしてると悪いことしてるみたいね……実際にそうだけど。


彼らが着いた先は人気のない場所だった。背の低い草が生えていて、平坦な場所。話すにはちょうどいい場所だと思えた。


私たちは彼らから少し離れた草に身を隠し、様子をうかがう。最初は他愛のない話をしてどちらも楽しそうだった。チクリと胸が痛む。


「私は和人の事が大好き。ずっと一緒に居たいって思う。和人は私の隣に居てくれる?」


やがて、冬が本題にきりこんでいく。私までドキドキしてしまう。


「ありがとう、すごく嬉しいよ。」


笑顔の和人を見て、胸に刺されるような痛みを感じる。和人が受け入れれば冬が幸せになるのだから何も問題ないはずなのに……胸の痛みが一向におさまらない。


「大丈夫?ここ離れる?」


苦い顔をして胸をおさえる私を見て、葉月は心配してくれる。


だが、今の私には正常な判断ができなかった。葉月の声は徐々に聞こえなくなっていき、どうしてという思いが頭の中を駆け巡る。


(どうしてあいつが冬と楽しそうに話してるだけでここまで苦しくなるの……?どうしてあいつが誰かのものになるって思っただけでこんなに辛いの……?)


呼吸が荒くなり、上がり始めた花火の音は重低音に聞こえる。


「俺は、」


彼が冬の気持ちに答えるために口を開いたところで、私は思わず彼らから逃げるようにして駆け出してしまった。走りにくい格好をしているのにも関わらず、一秒でも早くこの場を離れたいという思いで。途中で葉月の声が聞こえた気がするが、足は止まらない。




「俺は、」


そこまで言ったところで突然近くからガサッと音がする。音の方へ目を向けると葉月が明後日の方向を向いて立ちつくしていた。


「葉月、なにやってんだ?」


「あっ、えっと……ごめん和人。私、千華を傷つけちゃったかもしれない。」


今の葉月は本気で落ち込んでる顔と声色だった。なにかあったみたいだ。


「私、千華がそわそわしてたから一緒に和人たちのあとをつけて様子をうかがってたんだ。そしたら、和人たちの様子を見ていた千華の顔色が急に悪くなって……逃げるように走っていっちゃったんだ。」


「そんなことが……」


「ごめん、私のせいだ……千華をこの場に連れてくるべきじゃなかった……千華に辛い思いさせちゃった。」


悔やむような葉月の言葉、その重みはしっかりと伝わった。


「葉月のせいじゃないよ。すぐに答えを出さなかった俺のせいだ。だから葉月が気にする必要はない。」


落ち込んだ葉月に真摯に語りかける。彼女は少し落ち着いたのか少し元気が戻っていた。


「でもどうするの?千華かなり辛そうな顔で走っていったからすぐに探さないと。」


「あぁ、分かってる。すぐに探そう。」


千華を探しに行こうとしたとき、浴衣の袖を冬に引っ張られる。


「千華を探す前に答えを聞かせて……」


その表情は答えを聞くまで離さないといったものだった。


俺は葉月に目配せすると彼女を先に行かせる。まずはここでやるべき事をやらないとな。


「俺は冬と付き合うことはできない、ごめん。」


冬の目を見てしっかり伝える。


「……理由、聞いてもいい?」


「あぁ……理由は千華と一緒に居たいって思ったからかな。冬と一緒に居るのも楽しいけど、千華と一緒に居ると楽しいだけじゃないんだ……お互いの弱いところを見せ合った上でお互いを支える関係になれるって気づいたんだ。

だから、俺は冬とは付き合えない。」


「そっか……やっぱり辛いな……」


冬の顔はだんだん泣きそうなほどになり、我慢しきれなかったのか涙が溢れて頬をつたう。その光景を見ていてとても辛かった。


「ありがとう……ちゃんと言葉で伝えてくれて。私……それだけで嬉し……」


冬は涙をぬぐいながら必死で笑顔を取り繕う。


「……じゃあ、俺は千華を探しに行くから。」


俺は足早にその場を立ち去る。これ以上ここにいたら俺まで辛くて泣きそうになる。今ここで泣いていいのは俺じゃない……冬だ。


(冬を泣かせたんだから、もうあとには戻れない!しっかり自分の責任を果たさないと!)


心の中で自分を叱責して早足で千華を探しに向かう。


屋台が並ぶ賑やかな世界に戻ってくると葉月がこちらに駆け寄ってくる。


「和人、千華まだ見つからない。一通り探して見たんだけど……帰っちゃったのかな……」


不安げに眉をひそめ、うつむく葉月。


「大丈夫、まだ帰ってないはずだ。俺も探すの手伝うから葉月はもう一回ここら辺を探してみて。」


「うん、わかった。」


葉月はしっかりうなずいたあと、また探しに行くために走り始める。


(多分千華は人気のない場所にいるはずだ。ここら辺だと神社の裏側がそうだ。)


走って神社の裏側を目指しながら思う。


(千華に今日ちゃんと伝えなきゃ……また今度じゃ駄目だ!)


人混みをかき分け走り進む。無駄のない動きで人の波をよけ、騒がしい世界から遠ざかる。


千華、お願いだからそこにいてくれ。そんな思いで神社へと向かう。






お祭りは好きだ。だが、私は今日ここに来るべきではなかったかもしれない。人気のない神社の裏側まで走ってきて思う。


「なんで……今気づいちゃったの……和人の事が好きだってことを。」


今日ここに来なければこんなに辛くなることも、後悔することもなかったのに。


「こんなに辛いのならもっと早く気づけばよかった……!それか、一生気づかなければよかった……!」


涙が溢れて止まらない。今気づいたところで遅すぎる。冬はもう彼に告白してしまった。今さら私がでてきたところで何も変わらない。


私は痛くて辛くて、辛くて、辛くて泣く。今は空に上がる花火の音も聞こえない。ここは静かなはずなのに。


一人でこみ上げた涙を止めずにただ今の感情に身を委ねる。


すると、誰かが私の隣に立つ。


「隣で花火見ていいか?」


聞きなれた優しい声が隣でする。もしやと思い顔をあげる。


隣にはやはりというべきか、彼がいた。なんでいるのか私には全くわからない。


「なんでいるのよ……」


「千華が心配だから。それ以上の理由はいらないだろ?」


「変な奴……」


口ではそう言うが、彼が隣にいると心が安らぎ、自然と涙が止まる。とはいえ泣いたあとだから目は赤くなっている。彼に変なとこ見せちゃったな。


「ここからは花火がよく見えるな。すごい綺麗だ。」


「そうね……」


彼と一緒に空に上がる花火を見る。こういうのいいなぁ……


「って!あんた冬からの告白どうしたのよ!」


この状況に浸ってる場合じゃなかった。告白の事聞かなきゃ。


「あぁ、それか……断ったよ。」


頬をかいて気まずそうに和人は話す。


「断ったって……なんで!?冬はとっても魅力的じゃない!」


「……私よりも」、その言葉は心の中だけにとどめた。


「なんで……あんたはそんなこと……」


「それはさ__」


彼がなにかを言おうと口を開いたその時、空に特大の花がさく。大花火だ。


それを見たとき葉月の言葉がリフレインする。大花火を二人っきりで見た男女は結ばれるというジンクス。今は彼と二人っきり、嫌でも意識してしまう。




俺が千華に自分の好意を伝えようとしたとき、空に大花火が上がる。その瞬間ジンクスの事を思い出し、心拍数があがる。


「千華、俺は君の事が好きだから冬からの告白を断ったんだよ。俺は千華が大好きだ。素直じゃないところも、優しいところも、たまに甘えてくるところも全部。

だから、俺は千華と付き合いたい。……千華の気持ちを教えてくれないか?」


千華と真摯に向き合って話す。すると彼女はみるみる泣きそうな表情になる。


「そんなの……好きに決まってるじゃない!私は和人の事が好きで好きで好きで……たまらなく好きなの!!私だってあんたと付き合いたいわよ!!」


泣きながらそう訴えかける千華は感情が高ぶりすぎて号泣に近い形になっていた。


「それじゃあ、これからよろしくな千華。」


「うん……もちろんよ……」


そこまで言って号泣する千華。頭を撫でてなだめるがなかなか涙が止まらない。


「そうだぁ……写真とらなきゃ……(泣)」


千華は泣きながらスマホを取り出し、写真を撮ろうとする。


「なぁ千華、泣き止んでから写真とった方がよくないか?」


「うっさい!すぐ撮るの。」


目に涙をためて千華はこちらに寄ってくる。これは撮らないと駄目みたいだ。二人で写真を撮ると満足したのかスマホをしまう。


「そろそろ戻ろうか。葉月たちが心配してるし。」


「んっ……わかってる。」


そう言う千華はようやく泣き止んだようで、いつもの顔に戻りつつあった。


「でも……手繋いで。」


「わかったよ、繋ごうか。」


笑顔で千華の手をとり、葉月のもとへ帰る。


その道中、話にはながさく。


「そういえば、葉月が千華のこと気にしてたぞ。悪いことしたって。」


「あー……やっぱり心配かけちゃったか。葉月の声は聞こえてたんだけど体がいうこと聞かなくて。」


「まぁ、あれは事故みたいなもんだから気にしない方がいいよ。」


「それは葉月に言ってあげなさいよ。」


「そうだな。」


「それにしてもあんたほんと馬鹿ね。冬じゃなくて私を選ぶなんて。」


「馬鹿で結構だよ。それで千華の傍にいれるのならね。」


「むぅ……」


黙りこむ千華。その顔は少し赤く、照れていることがわかった。


「じゃあ、ずっと傍にいてよね?まぁ、こんな可愛いげのない女だけど選んだのはあんただし。」


「千華は充分可愛いと思うけどな。」


「うっさい!」


千華は顔を真っ赤にしてこちらを睨む。


このあと葉月のところへ戻ると、葉月は泣きながら千華に抱きつき「ごめんね~!」と言って千華を困惑させた。


冬は泣いたあとが見られたがいつもの感じに戻っていてホッとする。


1年組は高いテンションのままこちらに合流する。


ここからみんなで帰る。駅に行き、電車に乗る。すごく……貴重な思い出ができた祭りだった。




祭りの終わり、俺は彼女とともに歩く決意を示した。この先なにが起こるかなんて分からないが、彼女を離さずに一緒に生きていきたいと思う。どんな困難も幸せも彼女と一緒に経験したい。


ふと夜空を見ると、空は晴れ晴れとした星空が広がっていた。

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