表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編①
2/171

2話 俺と能力者達その2

 小鳥の可愛い囀ずりが聞こえる気持ちのいい朝、朝食や身支度なんかを終えた俺はいつものように自転車に乗り、学校へ向かう。


 家から学校までは自転車で三十分程度かかる。電車を使えば十分ぐらいだ。


 ちなみに家から一番近い駅だと徒歩十分かかる。

 俺はできれば電車を使いたくない。

 なぜなら自転車の方が健康的だからね、っていうのは建前でほんとはあんまりお金使いたくないからだ。別に貧乏な訳じゃないんだよ………ただ節約したいんだよ。



 暫くすると、学校に着いた。

 俺は少し息が乱れながらも自転車を駐輪場に停める。

 現在時刻は七時五十分、少し……というか結構早めだ。この時間に来る理由らしい理由といえば、まだ登校する人が全然いないからだ。人混みは苦手なんだ。


 昇降口まで歩くと見知った奴にあった。


「あっ、先輩おはようございます。」


「おはよう、早いな秋穂。」


 俺は淡い金髪の後輩に挨拶した。

 てかなんでこんなに早く来たんだこいつ。


「ふふん、先輩は今なんで私がこんなに早く学校に来たのか気になっていますね!」


「そんなの多分お前が宿題やり忘れて慌てて登校してきたからだろ?」


「ぐっ………なんでわかったんですか?」


「なんとなくだ。あとお前、自転車で来ただろ?」


「えぇそうですけど……なんでわかったんですか?」


「この時間に着く電車はないからな。着いたとしてもあと三分ぐらいかかるし。」


「先輩……なんかキモいです。」


「てめぇケンカ売ってんのか?」


 なんか秋穂にはナメられてる気がするんだよな。


「確かに私は自転車で来ましたよ。ですが疲れてません。なぜなら………サイコキネシス使いましたから。」


「ずるいぞてめぇ!!」


 こいつの能力ほんと便利だな。自転車浮かせて、そこに自分が乗って操作すればいいだけだもんな。


「あとは宿題を終わらせるだけです!ということなので先輩にはかまってられません。サラダバー。」


 そう言うと秋穂は急いで自分の教室へと向かった。俺も向かうかな。


 俺は自分のクラスである二年B組に向かう。B組に着くと教室に入り、自分の席に着く。読書でもしようかな。



 暫くするとクラスメートが教室に続々と入ってきてホームルームが始まる。いつもの日常が始まっていく。


 その後は一時間目から三時間目までとくに変わったこともなく進んでいく。


 だが、休み時間になると事件が起こった。俺は廊下を歩いていたのだが、急に気合いの入った柔道部みたいな奴に絡まれた。


 なんか葉月をかけて俺と勝負しろとのこと。めんどいがとりあえず受けると相手は殴りかかってきた。相手はガタイがよく、強そうな見た目をしていた。それに比べて俺は平凡な感じ。どう考えても俺に勝ち目はないと思っているだろう。実際勝てるって顔してるし。


 次の瞬間、相手の拳をいなしてカウンターを喰らわせる。いいところにはいったので相手は倒れて俺の勝ちになる。

 ギャラリーから動揺の声があがる。そんなに予想外なのこれ。


「なにがあったの!?」


 そう言って俺達の元に駆け寄ってくる女子生徒が一人、茶髪眼鏡の美少女でかなりの人気がある生徒だった。


「喧嘩が始まっちゃって。」


 その少女の問いかけに一人の男子生徒が答えた。


「とりあえず権堂くんを保健室へ連れてかないと。誰か手伝ってください。」


 その少女が助けを求めると男子生徒が続々と集まってくる。てか権堂ってすごいゴツい名前してんな。


「和人くん!やたらと喧嘩しちゃダメだよ!」


「いや弁解するのがめんどかったからつい。」


「ちゃんと話し合いで解決しなきゃ!」


 俺はこの少女に説教をくらっていた。俺達の周りでは女子生徒達がヒソヒソ話をしていた。


「雪原さんと柊くんってなんであんなに親しげなの?」


「それは同じ部活だからよ。」


「えぇーそうなの!?でも雪原さん、ほんとに優しいよね。」


 うーん会話が聞こえるんだよな。


「和人くんわかった?」


「うん、わかったよ。」


 俺がそう言うと女子から雪原さんと呼ばれた少女は去っていった。ようやく解放された。


 ………教室帰ろ。



 その後はいつも通りの学校生活を満喫した。平凡な生活っていいな~。


 そして、いつの間にか放課後になり、部活に行くのが憂鬱になりながらも重い腰を上げて部室に行く。


 その道中で小柄な銀髪少女、冬と会ったので一緒に向かうことになった。この機会にいろいろ質問でもしてみるかな。


「そういやさ、冬っていつも電車で来てんの?」


「…………(スマホを取り出し文字を打ち込む)」


 ピロン♪

『そうだよ。』


「そうなんだな……家ってどの辺にあんの?」


 ピロン♪

『ここから電車で三十分ぐらいの所にある。』


「へぇ~結構遠いんだね。」


 ピロン♪

『そんなことない。むしろ和人の方が大変そう。』


「んっ?そうか?」


 ピロン♪

『だって自転車だし。私だったら無理。』


 そういやこの娘運動が苦手なんだっけ。

 いやそれよりも問題なのが

(会話するときに声を発してくれないことだよな……。嫌われてんのかな俺。)

 会話できてることは嬉しいんだけどなんか凹むな~。


 ピロン♪

『どうしたの?なんか元気ない。』


 俺はスマホから視線を外し、思わず冬を見る。冬は俺のことをじっと見ていた。

 そんなに表情に出てたかな……?


「いや、ちょっと考え事をしてて。」


 ピロン♪

『悩み事?だったら相談にのる。』


 冬を見るといつもの無表情と違って、少しだけ頼って?みたいな表情をしていた。

 どうしたらいいんだこれ?素直に言っていいのかな?


「ほんとに言ってもいいの?」


「………(力強く頷く)」


「うんじゃあ言うよ。その……ただ冬の声が聞きたいなって思って。」


「!!?(顔が若干赤い)」


 冬は明らかに戸惑っており、無表情が崩れていた。冬のこんな顔初めて見たんだが。

 冬は一旦深呼吸をすると、スマホに何か打ち込んだ。


 ピロン♪

『駄目……』


「やっぱりそうだよな……ごめん。」


 ピロン♪

『和人に声を聞かせるのが嫌って訳じゃない。』


 ピロン♪

『ただ声を出すのが恥ずかしいだけ。だから誤解させて傷つけちゃったらごめん。』


「そうだったんだ。それならしょうがないね。」


 別に冬に嫌われてないみたいだ……よかった。


「まぁでもいつかは声聞かせてね。」


 ピロン♪

『できないかも。』


(まぁこのことは気長に待つとするかな。)


 俺はそんなことを思いながら部室へと向かった。


「あっ!ようやく来た。」


 部室についたときに投げかけられた第一声がそれだった。


「そんなに遅かったか?」


「一分遅い。もう皆グラウンド行っちゃったし。私達も行くよ。」


「あぁ、少し急ぎめで向かうか。」


「冬ちゃんも一緒に行こう。」


「……(コクコク)」


 俺たちはグラウンドに向かい、他の部員と合流する。


「あっ!先輩ようやく来たんですか。」


「悪い、ちょっと遅れた。」


 秋穂以外の三人はまだ紹介していないメンバーだ。順に紹介していこう。


「先輩遅いっすよ!」


 この元気ハツラツな少女は香坂花火。スポーツが得意でとても運動神経がいい。だがバカだ。


 ちなみに詳細はこんな感じ

 香坂花火 好感度85

 筋力EX 敏捷EX 運B 性格B 知力E

 コミュ力A 判断力D 容姿B 能力 身体強化


 花火の能力の身体強化は説明不要な能力だ。単純に身体能力を強化するだけというシンプルなのもだが、実際凶悪な能力でもある。強化した全力のパンチはビルを吹き飛ばし、強化された体はたとえ車に轢かれようとも無傷(むしろ車が壊れる)。欠点らしい欠点は能力込みの全力が出せないとかいうふざけた仕様。狡すぎる能力だ。異世界に転生しても苦労しなさそうな奴だ。


「お疲れ様です先輩。」


 お次はこのなかなかのイケメンな奴だ。名前は成宮睦月。詳細はこんな感じ


 成宮睦月 好感度80

 筋力A 敏捷B 運B 性格C 知力A

 コミュ力B 判断力B 容姿A

 能力 発火能力パイロキネシス 透視 石化

 サイコメトリー 物体引き寄せ(アポート)

 重力操作


 睦月は能力をたくさん持っているチートな奴だ。全部を説明すると長くなるので出てきたときにでも説明しよう。まぁでも結構欠点も多く、苦労しているようだ。


 さて、三人目だが……三人目は


「和人くんお疲れ。」


 茶髪で眼鏡、そして美少女という組み合わせの少女だ。はい雪原です、休み時間に会いましたね。この娘は雪原千華、心優しい性格で男女問わずに人気のある奴だ。詳細はこんな感じ


 雪原千華 好感度30

 筋力D 敏捷C 運C 性格E 知力S

 コミュ力A 判断力A 容姿A 能力 テレパシー


 色々ツッコミたいと思うけどまずは能力の説明から。テレパシーは半径二百メートルの相手の思考がわかる能力だ。また、効果範囲にいる人と脳内で会話ができたりなんだりと、他にもいろいろある。欠点は悲惨で、テレパシーは最小で一メートルまでしか縮められず、かなり気を張らなければならない。また、気が休まらなかったりとかがあるようだ。


 はい、それじゃツッコもうか。心優しいのに性格が最低ってどうしたって話だけど、それは単にこいつが


(早く和人死なないかな。てか皆五月蝿すぎたんだけど。)


 表面上は優しいけど、中身は腹黒だからだ。


(俺の脳内で話すことじゃないだろ。)


(別にいいじゃない。それよりも和人、冬に変なことしないでくれる?ほんとに不愉快。)


(いやしてないんだけど。)


(してるんだけど。なに冬に気安く話しかけてるの?一回死んだ方がいいわよ。)


(それはひどくないか。)


(普通のこと言ってんのよ。)


 俺に対しては容赦ないな。にしても好感度30って。


「よーし、それじゃあ早速始めようか。」


 葉月がそう言いながらペットボトルロケットを準備する。


「まずは和人からね。」


(和人が一番見所ないですしね。)


(急にきたな。)


 とりあえずやるか。俺はロケットに空気を入れて飛ばす。……うん、普通だな。


(面白くないですね。死んだらどうですか?)


(毒を吐かないでくれるかな。)


「あれが平均的な記録ね。そんで次は花火ちゃん。」


「よーし頑張ってこえるっす。」


 花火がかなりやる気満々でロケットを掴む。なんか嫌な予感がしてきた。


 花火は俺達から少し離れると、助走をとり、槍投げのように空に向かって投げた。ロケットはものすごい勢いで飛んでいった。あれ原形とどめてないだろ。


「すごいですね花火さん。」


(いや飛ばしすぎでしょう。)


(お前も驚いてんだな。)


 千華は表と裏でどちらも驚いた感想を述べていた。


 そして、どんどん進んでいく。千華と葉月は普通に飛ばしていた。冬はというと


「………(空気入れてる)」


 頑張って空気を入れている。そして、ロケットが飛ぶ瞬間にロケットが消えた。


「これは……冬瞬間移動を使いましたね。」


「もしかして大気圏外までとばしたの?」


「…………(コクッ)」


 いやいや、宇宙までとばすなよ。ほんとにすごい能力だな。


「次は俺ですね。」


 睦月は爽やかスマイルで言う。うーん格好いいな。


「睦月って結構モテるみたいですよ先輩。」


「それなら私も聞いたことあるっす。」


「ちょっと羨ましいな。」


「先輩のことだから絶叫すると思いました。」


「俺そんなことしないから。」


 平凡な人生を望む俺にとって、大人数からモテるというのは縁がなくていいのだ。


「それじゃ、行きますよ。」


 そう言うと睦月はロケットに触り、空気を入れていく。やがてロケットが飛ぶと俺が飛ばしたロケットよりもめっちゃ高く飛んだ。


「うわっ、すごいね睦月。」


「これ絶対重力操作してロケットにかかる重力を限りなくゼロにしたな。」


「その通りですよ和人先輩。」


 睦月は笑みを崩さずに言った。


 重力操作、これは半径五メートルの重力を操作できる能力で、対象に触っても発動できるものだ。欠点はとくにない。


「よーし最後は私ですね。睦月には負けませんよ!」


 最後は秋穂が意気込んでロケットを飛ばす。ロケットを飛ばして、勢いがなくなった所でサイコキネシスにより、空の彼方に飛ばされる。ほんと狡い能力だな。


「それじゃ、今日は終わりにしようか。」


 葉月がそう言うと皆片付けにはいり、その後に部室に戻る。


「いや~今日は楽しかったですね。」


「確かに楽しかったけど普通とは程遠かったよ。」


「でも俺はこういう生活が好きですね。」


 睦月はそう言うと俺に問いかけてきた。


「和人先輩はこんな生活は嫌いですか?」


 睦月にそう問われ、一瞬固まる。


 平凡じゃない、自分もそうだし、周りも能力者が多数の生活…………そんなのはいつもの日常で………。でも俺の理想は平凡な人生で……。でもだからといって今の生活がつまらない訳じゃなくて………。


「正直言ってわからない。別に今の生活が嫌って訳じゃないし、かといって平凡な生活をしたくないのかと問われるとしたいってのが答えだし。……悪い、中途半端な答えしか出せない。」


「そうですか、まぁ気にしないでください。じゃあもうひとつ質問をしますね。和人先輩はどうして普通の平凡な生活をしたいと思ったんですか?」


 睦月は朗らかに笑って質問した。


「そんなのは単純だ……憧れちまったんだよ、平凡な生活に。」

 俺は昔のことに思いをはせながら話す。


「俺は昔、中学二年生まで普通じゃない生活を送っていたんだ。主に俺と家庭の事情のせいだけど。でも俺が小6の時の夏、ある人に会ったんだ。その人は結構平凡な人なんだけどとても優しくて面白い人でさ……その人の友達も居たんだけどとてもいい人たちで、いろんな事を教えてもらった。俺があの人と過ごした時間は数日だったけど、今でも印象に残っているんだ。単純に言えば俺はあの人に憧れたんだ。あの楽しそうな感じに惹かれたんだ。だから……」


「そうなんですか……とってもいい人だったんですね。」


 睦月は穏やかな声色で言った。


「和人先輩にそこまで影響を与える人は興味ありますね。名前は何て言うんですか?」


「あぁ名前か?それなら、は」


「和人!駅まで一緒に帰るよ!冬ちゃんと千華ちゃんも一緒だから早く~。」


「あっおい!ちょっと待てよ!悪い睦月、その話はまた今度な。」


「えぇ、別に大丈夫ですよ。今日はお疲れ様でした。」


 俺は睦月と別れると自転車を取りに行き、急いで葉月達を追った。その後、駅まで雑談しながら帰り、そこで葉月達と別れた。


 早く帰ってご飯の用意しないとな。


 俺はぼんやりと暗くなる空の下、急いで家に帰った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ