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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編①
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19話 草むしり

お盆休みの前日、俺たちは学校に来ていた。


なぜかというと、敷地内の草むしりや清掃をするためだ。この時期になると毎年生徒会が率先して行っている行事だ。他にも風紀委員会や運動部が参加しているが、今年は俺たちPSY部も参加することになった。


今日は気持ちいいぐらいの晴れ模様で、ギラギラの太陽が憎くなる。PSY部の担当場所は裏庭の草が生えている場所だった。


「あっつー……」


担当場所につくと早速ぼやく。来て早々帰りたくなりつつある。


「暑いのはみんな一緒なんだから、ぼやかないの。」


「とは言ってもな……」


周りを見渡すと他のみんなも暑そうにしていた。日射病対策で帽子をかぶっているものの、夏の外はどうしてこうも暑いのか……


「暑すぎて溶けそうなんですけど……先輩かわりにやっておいてくれません?私は日陰にいるので。」


「お前だけ逃げようとするなよ。」


「うへぇ~先輩の意地悪~」


「それに比べて花火は元気そうだね。」


「もちろんっすよ葉月先輩!私は部活の助っ人で結構学校に来てましたから、とっても元気です。」


「睦月も元気そうだな。」


「そうですね、体調も崩さず元気に過ごしてますね。」


暑くて死にそうになっている秋穂に夏でも部活の助っ人で運動してるせいかとても元気な花火、いつも通りの睦月と1年生は特に変わりなさそうでホッとする。


「それにしても千華先輩、大丈夫でしたか風邪?」


「うん、1日安静にしてたらすっかりよくなったよ。心配かけちゃってごめんね。」


「それはよかったです。私と花火で大丈夫かな?ってずっと話してたんですよ。」


「そうそう、千華先輩の風邪が悪くなるようだったら、私が栄養のあるものを世界中からとってこようとしたぐらいっす。」


「そっ……そうなんだ……」


花火の言葉に思わず苦笑いをする千華。そんなことにならなくてよかったと俺も安堵の息をはく。花火がそんなことをしたら絶対変なことになりそうなんだよな……地形破壊とか。


「冬も元気そうでなによりだよ。」


「うん、和人も体調崩してなさそうで安心した。」


冬は柔らかな笑顔で話してくる。この笑顔を見るのもあの時以来だな。


(ちょっと!冬にあんまりべたべたしないでよね?迷惑だから。)


気持ちが和らいでいると千華がテレパシーで話しかけてくる。


お見舞いに行って以来千華とはかなりの頻度で連絡をとり合うようになった。話す内容は世間話から愚痴まで様々だ。


あの時以来、千華との関係はいい方向にすすんでいた。お互いのキズを話し合った事もあり、千華にとって俺は唯一頼れる存在になったらしかった。


だが、少し困った事にもなった。


「どうしたの?私の顔に何かついてる?」

好感度100


見てわかる通り、千華の好感度が100になった事だ。まぁこれに関しては嬉しいんだけど、これどっちかをふったときに刺されたりしないよね……。


「………」


千華の顔をまじまじと見る俺の事を冬がじっと見つめていた。


「うんじゃ、そろそろ始めようか。」


考えている俺をよそに葉月は号令をかける。軍手をつけて鎌を持ち、雑草を抜いていく。


「和人……ここの草抜いてもらっていい?私じゃ抜けなくて。」


「もちろんいいよ。よいしょっと……」


冬から頼まれて草の根元を掴む。一呼吸おいてから腕と腰を使って引くと、草はしっかり根っこごと抜けた。


「ありがとう和人。」


「どういたしまして。」


冬に微笑まれてお礼を言われると胸がドキドキする。


「あっちの方を一緒にやろ?」


「うん、分かったよ。それじゃあ行こっか。」


冬と一緒に協力して草むしりをやっていく。お互いに雑談を織りまぜながら楽しくやる。なんていうかこういうのも悪くないな。


やがて、休憩時間になる。日陰に移動し、水分や塩分をとる。昼に近づいているので外の気温はどんどん上がっている。


「いやーなかなか辛いね。」


葉月が汗をタオルで拭きながら言う。流石の葉月も疲れているようだった。


「そりゃそうだろ、真夏に草むしりって暑いし大変だし……早く終わらせたいな。」


「だね~……そうだ!!」


葉月のアホ毛がぴょこんと跳ねる。何か思いついたようで顔に元気が戻っていた。


「いいこと思い付いたんだけど___」


葉月は俺に思い付いた事を耳打ちしてきた。


そして次の瞬間、その手があったかと驚き、葉月に「ナイス!」と伝えた。





私は冬と一緒に日陰の端で和人たちを眺めていた。この暑さで冬が体調崩したりしてないか心配だな……


「冬、大丈夫?体調悪くなったりしてない?」


「心配ありがとう千華、私は大丈夫だよ。」


冬は私に向かって優しく微笑む。相変わらず可愛いな冬は。……私よりずっと可愛い。


「千華の方こそちゃんと水分とってね。また風邪ひいちゃったら嫌だから。」


「うん、ありがと♪」


冬の気遣いが心にしみる。ほんと優しい子だな~冬は。


「冬はこの夏休みなにやってたの?」


「えっとね……勉強とか読書とか……和人とデートとかかな。」


冬が照れたように言う。あいつやっぱり冬と遊んだのね……冬はあいつに変なことされてないかしら。


「とっても楽しかったよ。和人といるとすごく楽しくて安心できて……どんどん和人のことを好きになる私がいた。」


「そうなんだ……」


その言葉を受けたときちくりと胸が痛くなった。なんで痛くなったんだろ……冬が和人にとられそうになってるからかな?


「だから私は和人と付き合うために頑張るつもり。」


「冬ならできるよ、頑張れ。(なんでこんなことしか言えないんだろ私……なんか泣けてきた。)」


心の中でへこみながらも平静を保つ。


「はーい休憩終わりだよ~またまた頑張ろう!」


葉月が元気よくみんなに呼び掛ける。また頑張らないといけないわね。


「よし、行こっか冬。」


「うん、」


また大変な草むしりをするために立ち上がる。


すると、

「……負けるつもりはないから。」

後ろから冬にそんなことを言われる。私はどういう意味か分からなかった。


「えっと……それはどういう……?」


「ううん、なんでもない♪それよりも早く行こっ。」


うまいことはぐらかされたせいで結局なんのことか聞けなかった。何に負けるつもりないんだろう……気になる。





「今から時短技を使ってこの暑い草むしりを早く終わらせよう!」


葉月はみんなに向かってそう言った。さっき葉月のアイデアを聞いたけど、かなりありだと思った。


「この時短技には条件があるの。それは事情を知らない人に見られていないこと。」


この説明をしたとき、俺と葉月を除く全員が何かを察した。そう……そのまさかだ。


「よーし人はいないね……おいしょー!」


葉月は辺りを見回して俺たち以外の人がいないことを確認すると、生い茂る草を見据えて歪曲を発動する。


すると、その草たちはダンスを踊っているみたいに次々抜けていく。


簡単に説明すると、葉月の能力の歪曲を使って草を回転させる要領で曲げる、そうすると草はぽんぽん抜けていくということだ。これを使えばかなり楽に草を抜ける。


「おーすごいですね葉月先輩。あっ、ということは私もできますね。」


秋穂は何かに納得したように言うと、サイコキネシスで周りの草を一斉に抜いていく。こいつのポテンシャルどうなってんの?


「最初からこうすれば楽だったんですね。いや~今まで気づきませんでした。」


「ほんとだよな、ここは裏庭で基本人気のない場所だから能力を使うのに最適だよな。」


「和人たちは抜いた草をゴミ袋に入れる手伝いと見張りしといてね。ここからは秋穂が主役だし。」


葉月は振り向くことなく(振り向いたら俺ら曲げるから)俺たちに話しかける。


そこからは本当に秋穂が主役だった。草を一斉に抜き、それらをゴミ袋にきれいに入れていく。


俺たちの仕事といえば見張りと秋穂の補助だった。すごい楽させてもらって申し訳なくなってくる。まぁでも、秋穂は生き生きしてるしいいのかな。



「ふぅ、これで終わったね。」


草むしりも終わり、現在草の入ったゴミ袋を持ってゴミの収集場所に向かっている。


この時はさすがに能力を使うわけにも行かないので俺と睦月でしっかり袋を持つ。持てない分は花火と葉月に任せている。


「やっぱり歪曲ってすごいんですね。」


睦月が爽やかな笑顔で話しかけてくる。


「便利さもそうですけど、一歩間違えたら人が死んでしまう程のリスクがある強力な力、面白いですよね。」


「睦月はそういう見方をするのな……俺は怖いけどな。一回死にかけてるし。」


「そうなんっすか!?よく生きてましたね先輩。」


「まぁどうにかね。あの時はほんとに終わったかと思ったよ。」


「うぅ~ほんとあの時はごめん和人。あれは事故だったといえ反省してる……」


珍しくしょんぼりする葉月。アホ毛も心なしか元気がなさそうだ。


「いいよ、気にしてないし。あれはほんとに事故だったんだからしゃあない。」


「あんがと~和人。よし!とっととゴミを運んで終わらせようか。」


「よーしそれなら競争っす先輩!どっちが速くゴミを運べるか。」


「なんで俺なんだよ!?俺はやらないからな!?」


「和人、負けたらみんなにジュース奢りね。」


「よーいドン!!」


「話聞けよ!!」


俺は夏の日差しが照りつけるなか、先に行った後輩を追いかけるために全力疾走した。




明日からお盆休みに入る。今日のこの日は夏休みだというのに騒がしい学校だった。少年少女たちの声は校内に木霊する。その声はとても楽しそうな音色であり、周囲を優しい空間に変えていく。


そして、夏の暑さにも負けずに少年少女たちの笑顔の花は咲く。

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