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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編①
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17話 お見舞い

今日は珍しく暇な日だ。バイトはなく、特に何も用事はない。こんな日はゆっくり本を読んだりして過ごそう。


「和人~学校行こー!!」


が、そんな時間もいきなり崩された。今から本読もうと思ったのに。


「いや、なんで学校なんだよ?」


突然の学校への誘いに困惑する。


「文化祭の準備の手伝いしに行くの!今日看板とか作るらしいから。」


「そういうことか……」


てことはこれ部活動の一環か。うちの部活は面白そうな事にはすぐ首を突っ込むし。


「みんなにも今連絡とってるんだ。」


そういや、さっきから通知音がしてたのってそういうことか。


部活のグループを見てみると葉月が緊急招集をかけていた。


葉月『今日学校に集まれる?文化祭の手伝いしようと思ってるんだけど。』


花火『私は行けるっす。』


秋穂『私も行けますよ。特に予定ないですし。』


1年女子の集まりのよさはすごいな。


睦月『面白そうなので行きます。』


冬『私も大丈夫だよ。』


「おっ、これで千華以外は行けるのか。和人ははよ準備しなよ。」


「へいへい。」


タンスから制服を取り出し、着替えようとする。その時、スマホから通知音がなる。


千華『ごめんなさい、風邪ひいちゃったから今日は集まれない。』


千華からの風邪をひいたというメッセージだった。


「夏風邪か~災難だね。」


葉月はこちらを見る。そしてなぜかニヤリと笑い次のように言う。


「和人、今日は学校行かないで千華のとこ行ってきな。」


正直に言って爆弾落としてきやがった。こいつなに考えてんだ?


「いや、ちょっ、なんで!?」


「だって今月の末には決めないとなんでしょ?いい機会じゃん。沢山話してきな。」


「風邪ひいてるんだから沢山話しちゃだめだろ……」


葉月の突飛な提案に、俺は頭を抱えたくなった。まぁ、軽くお見舞いには行こうかな。






夏ももうすぐお盆に差し掛かりそうな日に私は風邪をひいた。


(頭痛い……怠い……動きたくない……)


さっき葉月から文化祭の準備の手伝いの誘いがきたが、こんな状態で行けるわけないので断った。


(今日は親が居なくて助かった……もし居たら長引く可能性の方が高そうだし。)


こんなときぐらいは1人でゆっくり休みたい。


(お昼とかどうしよ……)


そんなことを考えても頭が痛いだけなので、とりあえず寝ることにする。




__ポーン、ピーンポーン


寝ていたところをインターホンが邪魔をする。誰だろうこんなときに。


テレパシーで誰だか検討をつけたいところだが、あいにく今の状態ではテレパシーの範囲は2、3メートルになっているのでひろえない。


(しょうがない、でるか。)


怠い体をどうにか動かし、ふらつきながら玄関まで進む。


そして、玄関を開けると和人がいた。私はすぐさまドアを閉め、背中を合わせる。


(なんでいるわけ!?)


私は頭の痛みなんて忘れて思う。顔が熱くなってきた。


(えっ、これ私が風邪でおかしくなった!?外にいる和人は妄想だったりする!?)


「えっ、なんで閉めたの千華。ちょっと

!?開けてくれないと入れないんだけど。」


ドア越しに聞こえてくる彼の声、私は一旦深呼吸をして再度ドアを開ける。彼はビニール袋を提げて玄関前に立っていた。


私は試しに彼と自分の頬をつねってみる。痛みと彼の痛いことを訴える声が、私の妄想でも夢でもないことを証明する。


「いきなり何するんだよ!?」


「いや、ついに私の頭がだめになったのかなと思って。」


「おいおい……」


「で?お見舞いにでも来たの?」


「あーうん、お見舞いに来たんだ。とりあえず中入りな。」


彼と一緒に家に入り、私の部屋まで連れてってもらう。


「体調どう?熱上がるような事しちゃダメだよ。」


「そんなこと分かってるわよ。」


彼は私の体調を気遣ってくれる。それがなんとも今は嬉しいようなむずむずするような。


「というか、親は?出掛けてるの?」


「両親揃って出掛けてるわ。帰ってくるのは多分深夜かしら。」


「まじか……心細くないか?」


「別に……普通よ。」


「とりあえず、今日は俺が家のことやるから千華は寝てて。ほら、無理すると熱上がっちゃうし。」


「別にあんたに世話されなくても大丈夫よ。」


そこまで言って、私のお腹は盛大に鳴る。


すると彼は笑って、

「すぐにお昼作るね。」

と言ってくる。


「いいわよ、自分で作るし。」


「風邪ひいてるんだから寝てな。美味しいおかゆ作ってあげるから。」


にっこりと笑う彼はとても眩しかった。


「あっそうだ、ポカリと冷えピタとヨーグルトとプリン買っといたから使ってくれ。」


「そんなに買わなくていいのに……」


「遠慮しなくていいんだよ。それじゃ、俺はおかゆ作ってくるね。」


そう言って彼は1階に降りていってしまう。別に遠慮とかしてないのに……


(まぁ、お言葉に甘えてゆっくり寝てよう。どうせあいつのことだからやめてって言ったってやめないだろうし。)


下の階からはカチャカチャと食器の音が聞こえる。あいつの作る料理、そういえば食べたことなかったな……




数十分がたった頃、彼がおかゆを持って部屋に入ってくる。


「作ってきたよ、千華、食べられそう?」


彼の作ったおかゆはとても美味しそうで、風邪なのに食欲が湧いて止まらない。


「なんとか食べられそうだけど。」


彼に今すぐ食べたいという思いを知られるのは恥ずかしいので、クールに対応する。


「そっか……はい、千華あーん。」


その瞬間、硬直する。彼自身も「あっあれ?」と戸惑っている。


「いや、あーんって何よ。自分で食べられるし。」


「えっ、あぁごめん!いらなかったよな。」


ジト目な私に対して、慌てて謝る彼。


「まぁ、でもその気遣いには感謝するわ。だから仕方なく食べてあげる……し か た な く!!」


彼からあーんをされておかゆを食べる。


(……めちゃくちゃ美味しい。)


風邪で味覚があんまり機能してない筈なのに、美味しく、すんなり食べられる。


「どうだ?美味しいか?」


「ふん、不味いわね。」


美味しいのについつい真逆の発言をしてしまった。なにやってるのよ私……


「そっか、作り方間違えたかな……それとも分量か……?」


真剣に悩んでいる彼を見て、胸がチクりと痛くなった。


「……まぁ、でも食べられないこともないからおまけで普通にしてあげる。全部食べてあげるから貸しなさい。」


「あっうん、どうぞ。」


彼からおかゆの入った器をもらうと、黙々と食べ始める。


「まったく、なんで、こんなものしか作れないのかしらね……」


やばい、美味しくてとまらない。葉月はいつもこんなの食べてるんだと思うと羨ましくなった。


「そんなこと言う割には美味しそうに食べてるな。」


「別に……そんなことないし……」


「はいはい、そういうことにしとくか。」


こいつ……後でみぞおちに1発いれてやる。


おかゆを食べ終わると薬をのみ、 再び寝ようと横になる。


「ここにポカリ置いとくから、こまめに水分とってくれ。後はゆっくり休んでな。」


「分かってるわよ……それより早くあっち行って、寝られないでしょ。」


「そうだな、おやすみ。」


彼は部屋から出ていく。あいつが側にいるって思うと自然と安心するのはなんでだろ……?


(やばっ……急に眠気がきた。)


今私はこの眠気には抗えないので、身を任せて意識を闇へ落とす。







千華の家の家事をてきぱきとこなす。掃除に洗濯、夕食の準備。千華の夕食はうどんにでもしようかな。


それにしても、口ではああ言ってたけど美味しそうに食べてくれてよかったな。


(千華の親ってこんなときに何やってんだろ?千華が言うには帰るの深夜になるとか言ってたし。)


そう考えていると、玄関から音がする。誰か帰ってきたようだ。


玄関を覗いてみると、千華のお母さんらしき人が立っていた。


「あなた誰?」


「私は千華さんの友達の柊和人と申します。今日は千華さんのお見舞いに来ました。お邪魔してます。」


「あっそ。あの子に友達ね……もしかして体目当て?」


「えっ?あの、何を言って……?」


「だって、あの子は容姿はいいけど気持ち悪いから。」


千華のお母さんの言ってることが理解できなかった。自分の子供の事をそんな風に言うものか?


「私はお金取ったらすぐ出るから、あなたも早く帰った方がいいわよ。病原体が2階にいるんだし。あの子は放っておくのが一番いいのよ……人間じゃないんだし。」


戸惑う俺をよそに、千華のお母さんは千華を軽蔑した言葉を放つ。


「……なんでそんなこと言うんですか?」


「はぁ?」


「なんで千華の事をそこまで悪く言うんですか?」


頭で自制の言葉が流れまくっているが、体は言うことをきかない。非難の目で千華のお母さんを見る。


「あなた、もしかしてあの子にたぶらかされたの?でもあの子の真実を知ったらあなたもあの子の事が嫌いになるわよ。なんたって気持ち悪いから。」


さも当然のような返答をしてくる。その言葉は冷たく、針のような鋭さがあった。


「それじゃ、あなたも早く帰りなさいね。」


そう言って出ていく。あれが千華の母親なんて信じたくない。


一通り家事も終わったので千華の様子を見に行く。千華が風邪で苦しんでいる状況で帰れるか!


部屋に入ると、千華はすやすや寝ていた。その寝顔はいつものしかめっ面からはかけ離れたとても可愛いものだった。


彼女はとても可愛くて優しい子だ。他の人からのみた印象はどうか知らないが、俺からみた印象は素直じゃなく人を突っぱねるような事を言うが、実は誰よりも人と関わることに対して慎重であり、根はとても優しいといったものだった。


俺はあのときの彼女の暗い表情を見てから、彼女の事を守りたいと思うようになった。そして、できることなら一緒にいてどんなことでも力になりたい。


冬と千華はどちらも魅力的だ。冬は俺といるときには笑顔を多く見せてくれて、いつも優しい言葉をかけてくれる。千華は素直じゃないところがあるが反応が可愛く、たまにみせる危うさは守りたいと強く思わせてくる。


どちらを選ぶかと言われてもまだ答えはでない。まだ2人と充分に接したり、話したりしていないから。


まだ焦る時間でもないのだが、自分のこの決まりそうで決まらない気持ちを知っているのだからとてももどかしくなる。


俺はどっちと付き合いたいんだろうな……


千華の寝顔を見ながらもの思いにふけっていると、彼女が目を開ける。その視線の焦点はあってなく、明らかに寝ぼけているであろう事が分かった。


寝ぼけた視線が右へ左へ流れて数秒、俺と視線があう。


「和人……離れないで……」


寝ぼけた千華の放った甘い声に手で顔を覆う。今絶対顔真っ赤になってる。


「もちろんだよ。俺は絶対離れないから安心してね。」


千華の急なギャップに心をやられかけながらも、平静を保って彼女を安心させる言葉をかける。


それを聞いた千華は「えへへ~」と嬉しそうにしている。いつもは見せない子供っぽい可愛さにまたやられる。


(やばい、これきつい……主に心が。可愛さで死にそう。)


「ちょっといい?」


そう言って千華は手を伸ばしてくる。


握ってほしいのかな?と思い握ると、千華はこれまた安心しきった表情をして眠りについた。


それを見て俺は微笑ましくなる。また起きるまでこうしてよう。多分起きたら怒られるだろうけど。


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