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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
3年生編①
164/171

164話 初芽〔5〕

藤崎さんが席を立ってから数分後、やや緊張した面持ちの雪原さんが居間に入ってくる。


「えっと……こんにちは……」


「えぇ……こんにちは……」


これからなにをするのかわかっているからか、快活には話せない。


「さて、それじゃあ宣戦布告といきますか」


藤崎さんはなぜか元気そうだ。外野から楽しそうね……


「いやあの……まだ私は心の準備ができてないというかなんというか……」


「千華ちゃん、大丈夫。そしたら寝室で3人でしてもらうから」


「なにさせる気ですか……」


藤崎さんはほんとに変なことしか考えないわね。雪原さんも引いている。


「まぁとりあえず話してみなよ。『どっちが勝っても恨みっこなし』って関係じゃないと後味悪いでしょ? 」


「それはそうですけど……」


「だから、変に取り繕わないで素で話しな。考えながらよりもそっちの方がきっといいよ」


藤崎さんの言葉がさっきまでと変わる。急に真面目になられるとこっちが混乱するわね……


「……わかりました。蒼音さん、じゃあ話しましょうか」


「えぇ、もちろんよ」


私と雪原さんはお互い向かい合って座る。私はゆっくりと息を吐くと口を開く。


「私は柊くんのことが好き。どうやら振られても諦めきれないみたい。

だから、アプローチを続けていくわ」


「えぇ、わかってる。こっちだって彼氏を簡単に渡す気ないから」


言いたいことがなんとか言えた。とりあえずこれでやることは終わったわね。


「おぉーいいね、まさに真剣勝負って感じ」


「楽しそうですね千歳さん」


「もち、だって私関係ないし! 」


「「……」」


藤崎さんってほんとになんなのかしら。真面目になったりふざけたり……振れ幅が大きすぎてわからない。


「話し終わったみたいだし、あとはお菓子でも食べながらまったりしよー」


藤崎さんは楽しそうな表情で寝転ぶ。私は帰った方がいいのかしら。


「あの、蒼音さん……」


私が帰ろうかと考えていると、雪原さんが話しかけてくる。


「どうしたの? 」


「いや……もう少し話すことがあるから……」


雪原さんはそう言って廊下の方を指さす。2人っきりで話そうってことね。


「いいわ、移動しましょうか」


私たちは静かな廊下へ移動する。ここに移動すると外の雨音が聞こえてくる。


「話したいことっていうのはね……私、みんなから言われてるほどいい子じゃないの。学校では猫を被ってるだけだし、素ではそんなにニコニコしないから。

だから……印象が違くなるかもだけど、そこはよろしくね」


彼女からのカミングアウトに少し驚く。それと同時に安心感が出てきてしまう。


「えぇ、よろしく」


彼女の驚いた顔を見て、自分の口角が自然と上がっていたことに気づく。


「……ごめんなさい、雪原さんが思ったより普通だったからつい」


「普通……」


「悪い意味じゃないわ。天使なんて言われている人だって人間味があるってわかって、少しほっとしただけだから」


「あーそういう感じね」


雪原さんはクスッと笑う。お互いの間に柔らかい空気が流れる……そんな感じがした。


「そういえば、雪原さんは柊くんとどこまでいったの? 参考に聞かせてほしいわ」


「彼とは体の関係までいったよ。今は定期的にしてる」


思った以上に進んでいるのね。こうなってくると私もどんどんいかないと手遅れになるわね。


「まぁ、彼になにしても無駄だと思うけどね。だって彼、とんでもなく一途だし」


「あらっ、少し黒い部分が出てきたわね。でもそれはどうかしら、何事もやってみないとわからないものよ」


さっきまでの柔らかい空気はどこへやら、一気にピリついていく。


ようやく私はスタートラインに立てた。あとは、後悔なく彼にアプローチするだけ。


たとえどんな結果になろうとも……



千華が蒼と廊下へ出ていって少しした頃、急に寒気が襲ってきた。


「モテる男は辛いね〜」


俺の細かい変化に気づいたのか、千歳さんはニヤニヤ顔で話しかけてくる。


「変なこと言うのやめてください……」


千歳さんにはこう言ったけど、休みが明けたらどうなるのかわからない。


危ないことが起こらなきゃいいんだけど……

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