162話 初芽〔3〕
蒼からの告白があったその日の夜、俺は千華たちに今日あった出来事を伝えた。
「「……」」
千華とアンヘルは終始無言で苦い顔をしていた。
「__てことなんだけど……2人とも大丈夫では……ないよな、ごめん」
「いえ、和人が謝ることじゃないのだけれど……」
「そうですね、でも……」
2人はお互いに顔を見合わせてから下を向き、
「「……ライバルが増えたなぁと」」
そう言ってため息をつく。
「あっああ蒼ちゃんが和人くんのことを好きになっちゃったんですか!? 大変です、どうしましょう!! 」
「おめでとう和人、これで四角関係だね」
対するティタニアは予想通りの反応を示していた。葉月は茶化してきた。あいつ当事者じゃないからって楽しんでるな。
「蒼音さんか……かなりの要注意人物が出てきたわね」
「私は蒼音さんと関わったことないんですけど、そこまでの人物なんですか? 」
アンヘルは率直な疑問を千華にぶつける。
「えぇ、注意しておくに越したことない人物だわ。和人と席隣だし、生徒会で変なことするかもしれないし」
「確かに、それは気をつけておいた方がいいですね」
「流石に生徒会ではなにもしないだろ」
千華はかなり警戒しているようだ。蒼のことだから積極的なアプローチはしてこないと思うんだけど……
「その油断が命取りよ和人。警戒しておいて損はないわ」
千華は真剣な表情で話す。
「だって少し微笑んで『卒業まで引きづる』って言ったんでしょ? それはもうアプローチかけるって合図じゃない! 」
「まぁ諦めたようには見えなかったな……」
確かにあの感じだとアプローチはかけてきそうだ。でも積極的にはこないと思う。そんな情熱的な性格じゃないし。
「これは明日からしっかり牽制していかないといけないわね……」
「あわわ……蒼ちゃんになんて言ってあげたらいいんでしょう」
真剣な顔で対策を考える千華とは対照的に、ティタニアは蒼のことであたふたしていた……
「えぇ、アプローチするの!? 」
その日の夜、私は姉に今日のことを話す。
姉は最初は静かに聞いていたが、私がまだ諦めきれてない心うちを話すと途端に五月蝿くなる。
「そうね……一応はそのつもりよ」
あれから少し時間が経ったおかげで心の整理がついた。
私は彼のことが諦められない。だから、完全敗北までいくつもりだ。
「そっか……蒼がそのつもりなら私は止めないよ」
私の表情を見てなにかを悟ったのか、優しい笑顔を向けてくる。
「じゃあやれるだけやらないといけないね」
「そうね。だから姉さんに男性が喜びそうなことを聞きたいのだけどいいかしら? 」
「えっ、私か……」
姉は困ったといった表情で固まる。あれ、そういえば姉って恋愛経験あったかしら……
「実は私恋愛経験ないんだよね。だからそういうのはちょっとわからないな……」
「あら、湊先輩とは仲良さげに見えたけど。あれから付き合ってないのね」
卒業式でのことを思い出す。あの後付き合ってもおかしくないと思ったのだけど。
「湊くんはただの後輩、そんな付き合うとかの関係じゃないよ。それより、そうなってくるとあいつか……」
姉は露骨に嫌そうな顔をする。当てはあるようね。
「でもあいつはなー……うちの妹誑かしたしちょっと嫌なんだよな……」
「あぁ、中学の時の同級生の人ね。あの元気な人」
卒業式で見た元気な人を思い出す。あの時はいきなり口説きにかかられたのでびっくりした。
「そういえば、あの人柊くんと接点あるみたいよ」
「そういやそうだった。てことは最適か……嫌だけど連絡とってみよ」
姉はスマホをいじり始める。程なくしてピコンという着信音とともに返信がきた。
「大丈夫だって。後日会う場所を設けてくれるみたいだよ。その代わり私がデートで連れ回されることになるけど……」
姉はため息を吐く。なんだか悪いわね……
「まぁとりあえず、千歳はどっちもいけるタイプだから気をつけて。気を抜くとすぐセクハラされるから」
「えぇ、そこは気をつけるわ」
その後、私は姉から会う日にちと時間、場所を教えてもらい、解散した。
そこから私は寝床に入り、目を閉じる。
考えるのは彼のことと雪原さんのこと。これが自分勝手な願いなのは重々承知している。
でも……できるだけのことはしたい。もしかしたら、という淡い希望にかけてみたくなる。
その為にも宣戦布告はしっかりとしないとね……
その日の私の夢、そこには優しく微笑む彼が出てきた……




