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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
3年生編①
161/171

161話 初芽〔2〕

チッチッと時計の針が刻む音だけがする。彼は私の言葉をじっと待ってくれていた。


「……昨日姉に言われたことがあったの。内容は言えないけど、それを言われた時私は自覚し始めたのよ」


「うん」


「でも、まだ確信に変わらない。だから、少し協力してくれる? 」


私は彼の目をまっすぐ見つめて話す。彼もまた、正面から向き合ってくれた。


「うん、俺にできることなら協力するよ」


「そう……それじゃあ手を出してもらえるかしら」


そうして彼の差し出した手に触れる。指先が触れただけで心臓がドクンと鳴り、脈が早くなる。


今度は彼の手を両手で覆うように触ってみる。男性のゴツゴツした手の感触と彼の体温を感じる。


不思議な感覚になってくる。なんというか、ふわふわとして心地よいようなそんな感覚。


「……」


私はそのまま彼の手を自分の頭の上に持ってくる。私は彼に一度もされたことのない、頭を撫でられるという行為だ。ティタニアさんがされているのは見たことがある。


「〜っ!? 」


今回のはかなり強烈だった。ただ彼の手を頭の上に置いたのに、安心感と幸福感がいつもの5倍くらいに感じられる。


それに、心臓が暴れて止まらない。これは明らかに異常だ。


前々から感じていたのが一気に確信に変わる。自分を客観的に見てもこれは完全に彼に惚れていることがわかる。


「ありがとう……もういいわ」


私は彼の顔が見れなかった。一気に自覚した初恋に顔が熱くなってしまう。


……伝えるしかないわよね。


「それで、なにかわかったか? 」


「えぇ、負けを認めなきゃいけないくらいわかったわ」


これを伝えたら、明日からどんな顔して接したらいいのかわからなくなるわね……


「柊くん、好きよ。人としてじゃなく、一人の男性として」


この時の私の表情(かお)はどんなだったのだろう。彼の反応から、少なくともいい表情(かお)はしてないように思う。


「じゃ、それだけだから。私は先に帰るわね」


好意を伝えたことによる嬉しさより、それによる失恋の方が強かった。痛くて痛くてたまらない。早くこの場から離れたい。


「ちょっと待って! 」


足早に生徒会室を出ようとする私を、彼は腕を掴んで止める。


「なんで引き止めるのよ……」


まだ彼の顔を見れない。今上を向いたらぐしゃぐしゃの顔を見せてしまう。


「最後の方、蒼がとても辛そうにしてたからさ……」


彼は私の腕から手を離す。


「あれは……本気ってことでいいんだよな? 」


「酔狂でこんなこと言わないわよ……」


「あぁ……そうだな」


私は目線は下のまま、彼の方に向き直る。


「少し胸を貸してくれる……会長命令よ」


「……わかった」


彼の胸に顔を押し付ける。その瞬間、我慢していたものが溢れ出す。


なんでもっと早く気づけなかったのだろう……なんでこんなタイミングで……


「馬鹿……ばか……」


気づけば私は握りこぶしを彼の肩にぶつけていた。何回も何回も、ただひたすらに。


「気が済むまで付き合うから……こんな俺でごめん……でも、好きになってくれてありがとう……」


彼の言葉によりまた気持ちが溢れた。声を聞かれたくないから、押し殺して泣く。


その後涙が枯れるまでずっと彼の胸で泣いていた……



「……迷惑かけたわね、ありがとう」


かなりの時間が経ち、流石に涙も出なくなった。ようやく彼の顔が見れるようになり、安心……とはいかない。


明日から柊くんとどう接したらいいのかわからない。ぎこちなくなるのは当然ね。


「いいよ、全然。それで蒼が前に進めるなら」


彼はいつも通りに接してくれる。彼なりの優しさなのかしら……


「明日からはいつも通りにするわ。あと、」


あれだけ泣いたのに、


「あなたのことは確実に卒業まで引きずるから」


不思議なことに、こんなことを言うぐらい彼への好意はまだあった。


諦めきれないってことなのかしら。


「えっと……こういう時の言葉が出てこないや……」


彼は明らかに戸惑っていた。気持ちはわかる。


「とにかく、明日からもよろしく。私は先に帰るわね」


私はスッキリとした気持ちで部屋を出る。そういえば、雪原さんにも伝えておかないと不味いわね。折を見て伝えよう。



「まじか……」


俺は蒼が出ていった後、なんとも言えない気持ちになっていた。


「アンヘルが増えたって考えていいんだよな……千華になんて説明しよう」


俺は、新たに出てきた問題に頭を悩ませるのであった……

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