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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編①
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16話 バイト終わりに

「先生、できました。採点お願いします。」


冬とのデートから1週間、俺はバイトでなかなか忙しい日々を過ごしていた。


今は友恵ちゃんの小テストの採点を行っている。


「……うん、8割がたとれてるな。結構伸びてきてるよ。」


「よかった~前回6割程度しかとれてなかったので頑張って復習した甲斐がありました。」


「それじゃあ小テストも終わったし、ここからは変わった勉強方法を使ってやろうか。」


「変わった勉強……ですか?」


友恵ちゃんは首を傾げる。


「今の時代はデジタルなものも使えるからな、それも使おうってことだ。」


「って事は……」


「あぁ、秋穂の部屋に行こうか。」


ということなので秋穂の部屋に移動する。


「秋穂ーゲーム借りに来たぞ。」


「はーい、いいですよ。何やるんですか?」


「これ。」


そう言って俺が手に取ったのは戦国武将をモチーフにした無双ゲームだ。このゲームは人気シリーズなので続編が何本も出ている。


「こういうの使った方が覚えやすいかなと思ってね。」


「なるほど……ゲームで覚えるのもいいかもです。」


早速ゲームを起動して遊んでみる。


「おおーすごいな、家紋とかもしっかり出てるし、どの武将も魅力的で覚えやすそう。」


「ゲームだったら私もすんなり入ってきそうです。」


「私、無双系のゲームやったことなかったんですけど……結構面白いですね。」


友恵ちゃんは目をキラキラさせてゲームをしていた。秋穂はそんな様子を微笑んでみていた。


あれから二時間、休憩を挟みながらもゲームを使って勉強をしていた俺達は、もうすぐ5時になりそうなので今日のところは解散することにした。


「先生、今日はありがとうございました。……また、よろしくお願いします。」


「うん、また明日ね。」


友恵ちゃんと秋穂と別れると、家に帰るために電車に乗る。そういや今日は『転生エルフ』の新刊の発売日だっけ……。


「ちょっと見に行って見るか。」


西園駅から徒歩5分の所に本屋さんがあるのでそこに行く。葉月に聞いた話だが、ここは結構漫画やラノベの品揃えがいいらしい。


(えっと……ラノベコーナーはあっちか。)


ラノベコーナーに着くと、新刊の本棚から『転生エルフ』を探して手に取る。千華に何回も借りるのも悪いし買うか。


そう思ってレジに本を持っていく。すると、

「……なんでいるわけ?」

嫌そうな顔をした千華と遭遇する。しかも、店員の格好をした千華とだ。


「……家から近いから。」


家が近いことを説明する。千華の事が気になっているせいか、ちょっと間があいてしまった。


「千華こそ、ここでバイトしてたんだな。」


「まぁね。」


ヤバい、3文字で切られた。もうちょい話したい。


だが、千華は淡々と作業をこなしている。


「『転生エルフ』が1点で702円です。」


「それじゃあ1002円でお願いします。」


「はいはい、お釣りは300円ね。」


そう言って千華はお釣りとレシートを手渡ししてくる。


「ブックカバーはするの?」


「それはしなくて大丈夫、家にちゃんとしたのあるし。」


「それじゃあ用も済んだんだからとっとと帰って。」


千華はシッシッとジェスチャーしてくる。確かにここにずっといるのも迷惑だよな。でも……


「なぁ最後にひとつ聞いていい?バイト終わる時間って何時?」


「はぁ?なんであんたにそんなこと言わないといけないのか分からないけど……6時には終わるわ。」


「そっか、頑張ってな。」


俺は千華にそう言った後、店をでる。


そして、店から充分離れた所で、

(ヤバい!好意を自覚した後だと、顔を会わすのだけでもドキドキする!つか千華の手、柔らか!!)

今まで我慢して思わないように必死に堪えていたことを思う。千華の前で思うとテレパシーでひろわれるからな……注意しないと。


「それにしても……気になってバイトの終わる時間聞いたけどどうしよう?あと5分位だけど、待ってたら気持ち悪いとか思われそう……」


それ結構ショックだな……でも、話す機会が増えれば気持ちの整理がつきやすくなりそうだしな。


「まぁでも気持ち悪いって思われるの想像したら死にたくなったし……帰ろう。」


決意を決めて家に向かうための一歩を踏み出した。









「お疲れ様でしたー」


今日も大変なバイトが終わる。流石にほぼ毎日朝9時から夜6時までの9時間労働は辛い。外は少しずつ暗くなり始めていた。


(でも、これも自立資金を稼ぐためだし、頑張らないと。)


それに家に居たって楽しくないしね……


(にしても、まさか和人と会うとは……)


夏休み前に会って以来、一度も会っていなかった彼と今日また会えた。忙しいバイトの日々に忙殺されて、顔とか変じゃなかっただろうか?髪型とか乱れてなかっただろうか?


(何考えてるわけ?ついに忙しさで私の脳もアホになったのかしら。)


そう思いつつも、和人の事を考えると少しばかり胸が高鳴るのはどうしてだろう……?


(あーやめやめ。こんな事考えてる場合じゃないし。)


首を横に振り、一度考えをリセットする。今考えるべきは冬と遊ぶ日の事と晩ご飯をどうするか。


晩ご飯はコンビニで何か買っていくことにする。親がいるときに家の台所に居たくないし。


駅に向かうために近道をする。この道は人気がないが、大通りを通るよりも早い。


「ねぇねぇ君可愛いね、よかったら今から俺らと遊ばない?」


急にチャラそうな4人組の男に話しかけられる。どうやらナンパらしい。


(はぁ……なんでこんな奴らに声をかけられなきゃいけないわけ?)


最悪だった。ただでさえバイトで疲れてるのに、相手にもしたくない見ず知らずのバカ4人につかまるとは。


それに、テレパシーで伝わってくるこいつらの本音は最悪だった。(ホテルに連れ込んでヤりたい)だの(久々の上玉)だのと、気持ち悪いことこの上ない。


「すみません、私、これから用事があるので失礼します。」


こういう相手はとっとと断って人のいる方に逃げればいいので、すぐに大通りの方へ向かおうとする。


「いいじゃん、用事なんて。それよりも俺たちと遊ぼ?」


だが、チャラ男のうちの1人が私の手首を掴んでくる。他の三人は退路を絶つために私を囲う。


流石にこうなってしまってはもうダメだ。私は所詮普通の女子なので、力では男の人には勝てない。


叫んで助けがくるのにかけるしかないか。そう思って叫ぼうとしたその時、


「あのーそういうのやめた方がいいですよ?」


私がよく知る声が響いた。黒髪赤眼の見知った彼だ。


「あぁ?なんだてめぇ?」


「ヒーロー気取りか?邪魔すんじゃねーよ!」


男たちは、彼をボコボコにして大人しくさせるためか、構える。


「別にヒーロー気取りではないですけど……その子俺の大事な友達なので、手を出さないでくれますか?」


彼はそう言った後、もう言葉は不要とばかりに半身で構える。


「生意気な……やっちまえ!!」


「「うおー!」」


3人まとめて彼に襲いかかる。彼は平然とした様子で構えている。男たちは彼に殴りかかるが、当たらない。それどころか、いなされて体制を崩したところを反撃される。


(すごい……)


彼が格闘術を習っていた事は知っていたが、実際に目の当たりにするとすごさをより痛感する。精錬されていて、鋭い。そんな感想をもった。


やがて3人は倒れて、残りはリーダー格の男だけになる。


「化け物が!……だが、こいつでどうだ?」


リーダーの男はナイフを取り出す。それを見ても彼の表情は変わらず、相手を油断なく見据えていた。


「死ねぇ!」


相手の男はナイフを振りかざす。当たった……?と思ったが、彼はすんでのところで相手の男の手首を掴んでいた。


「あっそうだ、最後にひとつ言っておきますね……彼女に二度と話しかけるな!」


彼は、珍しくどすの聞いた声で警告する。同時に手首を掴んでいた手を思いっきり握ったのか、相手の男は痛みで顔をゆがめて持っていたナイフを落とす。


そして、彼の放ったハイキックが相手の男の側頭部に当たり、弾き飛ばされる。


「だいじょぶだったか?災難だったな。」


彼はこちらに笑みをうかべて来る。


「大丈夫よ。それよりなんでいるわけ?」


今日2回目の質問をする。


「俺も帰ろうと思ったけど、やっぱり千華のことが気になってな。この時間帯だし、事件に巻き込まれるかもと思ったから待ってた。」


「あんたね……」


私は少し呆れていた。


「普通私の事心配で待つ?私だったら待たないわ……こんな可愛いげのない女。」


むすっとした表情で言う。こいつの思考回路どうなってんの?


「俺には充分可愛く見えるよ。素直じゃないところとか。」


「あんた1回病院行った方がいいわよ?頭のね。……まぁ、ともかく……ありがと、和人。」


助けてもらった事に対してはちゃんとお礼を言っておきたかったので、顔が少し熱かったけどお礼を言う。


「どういたしまして。じゃ、帰ろっか。送ってくよ。」


「はぁ?なんで?」


「さっきの事がまた起こらないとは限らないし、心配だから。」


「あっそ……勝手にしたら。」


和人と一緒に電車に乗って家に帰る。家の近くまで来る頃には、辺りはもう真っ暗になっていた。帰り道は無言ではなく、彼と世間話をしていた。


「千華っていつもこの時間に家に帰るのか?」


「そうだけど……なに?その顔。」


「いや、大変だなって。頑張りすぎて体壊さないようにな。」


「あんたに心配なんかされたくない。」


「平常運転だなぁ。」


「てかそれよりも、あんた晩ご飯食べたの?」


「実はまだ食べてない。だから今かなりお腹空いてる。千華は?」


「私もまだ。」


和人もまだなんだ……


「コンビニに寄っていい?ご飯買いたいから。」


「もちろんいいよ。」


ということなので、コンビニに寄ってご飯を買う。私は安いやつでいいや。


「そのお弁当でいいの?」


「別にいいわよ。安いし。」


「そっか……」


和人はなんともいえない表情になる。彼の心の声は(もう少し野菜をとった方がいいんじゃ……)だった。こいつは私の親か!?


結局私はお弁当だけを買い、外に出る。和人は色々買ったようだ。今は肉まんを取り出して食べている。


「はい千華、お前の分。」


和人は肉まんを1つ渡してくる。2つ買ったのは私の分もあわせてって事らしい。


「……ありがと。」


もらった肉まんをひと口食べる。その味はなぜか、1人で食べた時よりも格段に美味しかった。美味しすぎて夢中で食べ進めてしまった。





「何回も送ってもらってありがと。あんたも気をつけて帰ってね。」


家の前に着くと、いつもの通りに別れの挨拶をする。


「はいよ。そうだ、これあげる。」


そう言って和人が差し出したのはさっきのコンビニの袋だった。何かと思い中を見ると、そこにはサラダが入っていた。


「これって……」


「俺からの奢りだよ。野菜をしっかりとらないと風邪ひくから。」


「余計なお世話なんだけど?……まぁ、貰ってあげないとサラダが可哀想だから、ありがたく貰ってあげる。」


正直嬉しかった。最近夜に野菜とれてなかったし。


「あ、あとちゃんと睡眠とってお腹とか冷やすなよ?」


「なんなのあんたは!?親か!?」


そんなやり取りをした後、家に入って嫌な時間を過ごす。彼と一緒にいる時間は今日も楽しいな……









千華と別れて家に帰ると、葉月に涙目でブーイングをうけた。どうやら俺のご飯が食べたかったらしい。明日はちょっと豪華にすると言ったら笑顔で許してくれた。


自室に戻ると、今日の出来事に思いをはせる。


(やっぱり千華と一緒にいると楽しいな。これは決めるのがさらに難しくなったやつだ。)


思い出すのは、千華の少し頬を赤らめながらの感謝している姿だ。可愛すぎてドキドキしてしまった。


実際どちらも好きな事には変わりないので、心をどちらに決めるのかまだまだ悩み中だ。


「まだまだ結論でそうもないし!明日の準備でもするか~。」


気持ちを一旦切り替えて、明日、友恵ちゃんに教える勉強を確認する。明日は理科か……動画は絶対使うとして、後はなに使ってやろうか……


そんなことを考えながら明日使う動画を漁り始めるのであった。



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