159話 蒼音の考えごと
精神的に疲れた取材も終わり、再び平日がやってきた。
朧月は取材を元に記事を書き上げ、号外としてとして配っていた。
多少の不安はあったが、号外を見てみるとそんなに変なことは書かれていなかった。俺がパチンコ店に入ったことは書かれていなかったので、そこは安心した。
でも……『新たな女性の気配』はやめろ。これ以上ややこしくするなあいつ。
「やぁ和人、先日はありがぁぁぁ!? ちょっと痛いんだけどやめてくれないかい!? 」
俺は近寄ってくる朧月に軽い関節技を決める。
「好きに書いた罰だ、これぐらいはやられて当然だろ」
「君の場合は的確に決めてくるから過剰な罰だと思うんだけど」
過剰ではないだろ。前の特別号の分も含めてるし。
俺は朧月の体を、痛みが長い時間残らない程度に痛めつけてから離れる。
色々あっても友達だし、やり過ぎるつもりはない。朧月もそれをわかってるはず。
「ふぅ……じゃあ僕は新たなスクープを探しに行ってくるよ。さらばだ! 」
解放された朧月は元気よく走り出していった。やっぱ懲りないな……
その後、いつも通りの学校生活……とはいかなかった。隣の様子がおかしい。
「……」
蒼はなにかを深く考え込んでいるようで、白紙のルーズリーフをシャーペンで軽く叩いていた。
今授業中で、本来なら真剣にノートとったりしてるはずなんだけどな……
「蒼、なにかあった? 」
蒼の様子が気になってしまったので、大丈夫かと尋ねる。
「……いえ、少し姉に変なことを言われただけよ」
はっと我に返った蒼は、そう言うと急いでノートをとる。
「えっと、なにかあったら相談してくれていいからな」
「……えぇ、そうさせてもらうわ」
耀音さんのことだから、喧嘩とかではないんだろうけど……ちょっと気になるな。
結局、蒼のことが気になって授業に集中しきれなかった。
昼休み、いつものように部室で弁当を食べる。なぜか左隣にはアンヘルがいた。
「先輩、私の作った卵焼き食べてください。はい、あーん」
アンヘルから卵焼きを目の前に持ってこられる。これはそのまま食べろってことなのか?
「あーん……うん、美味しいよ」
「よかったですもっと食べますか? 」
「いや、これ以上は大丈夫だよ」
右隣に座っている千華が自分の弁当の具材を差し出してきてるし。2回目以降は怒られる。
「あーん……」
「はい、私にお返しちょうだい」
千華は食べさせてほしそうに口を開ける。俺は自分の弁当から具材を1つ取り出すと、千華の口に入れる。
「んっ、美味しい」
「千華さんばっかり狡いです、私にもお返しください」
「だーめ、これは彼女の特権だから」
千華は俺に密着して、アンヘルに微笑む。アンヘルは悔しそうな表情で卵焼きを勢いよく食べる。
「千華最近イキイキしてるね。幸せそうでよかった」
「アンヘル……お姉ちゃんがいるからね! 大丈夫だよ!! 」
ティタニアの励ましは妹に特に効かなかった。アンヘルは俺と肩をくっつけてくる。
「ちょっ、近すぎない! 」
「近くないです。私からしたらまだまだ遠いくらいですよ」
千華とアンヘルの戦いがまた始まってしまう。とにかく話題を逸らさないと。
「そういえばさ、蒼ってなにが理由で考え込んでるかわかるか? 」
俺はとりあえず先程の蒼の様子について千華に尋ねた。
「うーん……私も探ってはみたんだけど、ごちゃごちゃしてて上手く拾えなかったわ」
千華は少し考えてからそう話す。千華でもわからないとなると、いよいよ俺じゃわからないな。
これは蒼から相談されるのを待った方がいいのだろうか……それともすぐに聞くべきか。
「私は待っておいていいと思うわよ。簡単に話せる内容ならもうとっくに和人に話してるわよ」
「好感度的に考えるとね……認めたくないけど」と、千華は苦い顔をしながら助言をしてくれる。
「そっか、ありがとう」
「蒼ちゃんがピンチなら私が聞いてきます! 蒼ちゃんは私の友達ですから!! 」
「うーん、それは止めた方がいいと思う。蒼、迷惑そうな顔すると思うから」
「そんな!? 」
やる気満々のティタニアに冬の言葉が刺さる。俺はやり過ぎなければいいと思うけど……ティタニアはやり過ぎるな。
お昼休みはなんとも平和に終わっていった。蒼の相談を受ける準備をしておこう。
そして、その日の放課後、俺は蒼に呼び出された。
今日は2人しかいない生徒会室、蒼は先に来て夕日を眺めていた。
「来てくれてありがとう、2人だけで話がしたくて呼んだの。なにから……話したものかしらね」
そう話す蒼はいつもより緊張しているように見えた……




