158話 休日取材
テストも終わり、ある休みの日、俺は柏崎駅にいた。
時刻は9時前で、朝の早い時間。とある人物を待っていた。
「遅くなってすまない和人」
待ち人は梅雨も開けそうな時期に未だに革ジャンを羽織っている男……朧月だった。
「お前それ暑くないの? 」
「暑い……がっ、これがないと取材のモチベーションが上がらないんだよ! 」
なんだそのこだわり……見てるこっちが暑い。
「今日はなんで呼んだんだよ……っていうのは愚問か」
「あぁ、今日はもちろん取材の手伝いをしてもらうぞ!! 」
やっぱりか、さっきそれっぽいこと言ってたし。
「で、なんの取材なんだよ? 」
「それはだな……和人、君の取材だ! 」
「えっ……」
朧月の言葉を聞いた瞬間帰りたくなった。なんで俺の取材なんだよ……
「あの特別号の反響が凄くてな、和人の休日の姿を知りたいという声が色んなところから上がったんだ」
「その色んなところってどこだよ」
「主に派閥所属の男性陣からだが? なにか弱みを見つけたいようだ」
ぐっと親指を立てる朧月。どうしよう、今すぐ殴りたい。
「なぁもう1ついいか? なんで集合場所が柏崎駅なんだよ? 」
「それはだな……単純に僕が寝坊しそうだったか痛い痛い痛い!! 」
俺は、しょうもない理由に思わず朧月の頭を掴んでいた。
さて、とりあえず柏崎駅に用もないのでとっとと西園駅に帰る。
電車に乗っている間朧月から色々と聞かれたが、いつも通りの曲解をされたのでやっぱり次の記事も変なこと書かれるだろう。
「今日は雪原さんとは会わないのかい? 僕のことは気にしないで思いっきりデートしてくれたまえ」
「絶対やだ」
今回は葉月たちには会わないで一人で過ごそう。また変なこと書かれるの嫌だし。
「で、ちなみに今からどこに行くんだい? 」
「よく行くカフェだよ。とりあえずはそこで本を読むつもり」
「なん……だと……」
朧月の顔がいきなり絶望したようなものに変わる。
「面白いネタを提供してくれないのか……」
「するわけないだろ」
特別号の一件で……というかそれ以前に朧月のことをわかっているのでそういうのは提供しない。
「くっ、悔しいが無理矢理だとヤラセと変わらなくなるし、今回はこのまま付き合おう」
「無理矢理なにしようとしたんだお前……」
今回こそはさすがに大丈夫だろと思った俺を乗せて電車は進んでいく……
いつも行くカフェに着いた俺は、店内に入り、テーブル席に座る。
ここは葉月のバイト先なのだが、今日は葉月のバイトが休みなので特に問題はない。
「和人はいつも本を持っているのか? 」
本を読もうとバッグから取り出した俺に朧月が問いかける。
「今日はたまたまだよ。あんまり本を持ち歩くことはないしな」
俺は本を読む前にコーヒーを注文する。朧月はメロンソーダを注文した。
「さて、なにか面白いことは起きないものか……」
「期待するのやめろ。そうそうなにも起きないぞ」
「おっ、和人だ。奇遇だな」
なにも起きない……その言葉を吐いた直後に聞き覚えのある声がした。
恐る恐る声のする方へ向くと、そこにはいつものだぼだぼなパーカーを着た千聖がいた。
「なんでこうなるんだろ……」
「??? 」
俺はとりあえず千聖に状況説明をする。千聖は最後まで黙って聞いて、話が終わると、
「よしわかった、俺が取材に答えてやる。和人には助けられたしな」
「どうしてそうなる!? 」
取材に協力する気満々になってしまった。変なこと書かれるって言った筈なんだけど……
「いや、面白そうなのもあるからな。取材されるのなんて初めてでわくわくする」
「よっしゃ来たぞ!! 」
そのわくわくはもう少しとっておけよ。あと朧月は騒ぐな。
「じゃあ聞くけど、千聖さんは和人とはどういう関係? 」
「友達ってやつだと思うぞ。お互い助け合ってるしな」
「なるほど、持ちつ持たれつのいい関係だと」
変に曲解しないでくれよ……そのまま書けば問題ないんだから。
「では次に和人に一番助けられたことは? 」
「私の代わりにパチ屋に入ってもらったことだ。あれは助かった」
「なにっ!? そのことについて詳しく!! 」
「千聖、お前はこれ以上喋るな! 」
言い方考えてくれ。それは誤解をまねく。
「いや、ちょっと詳細は言えないんだが、私の代わりにパチ屋に入ってもらってあることをやってもらっただけだ」
「なにっ、まさかパチンコを!? 」
「打ってない、人探ししてただけだ! 」
このままだと変なこと書かれて派閥の人間から攻撃を受けまくるな。
「ふーむ……和人がパチ屋に入ったのは事実だけど、それは最終的に人助けになってるぞ」
「なにっ、それはいい話だ!! 」
と思ったら一気にいい話に向かっていった。朧月が流されるの珍しいな。
ふと千聖の方を見ると、彼女は俺に向かってピースサインを送ってくる。
なんかしてくれたみたいだな……あんなことができたんだし、こういうことができるのも納得してしまう。
「じゃあ次はこれを聞きたい__」
とはいえ、ここからまだまだ取材は続いていくのであった。終わった時、千聖は珍しく疲れた顔をしていた。




