154話 千聖〔1〕
バレーの試合も終わり、勉強の方に集中してきた頃、なぜか俺は千聖に呼ばれた。
なんでも、仕事を手伝ってほしいらしい。
格安で依頼を聞いてくれた恩もあるし、俺は手伝うことにした。
「千聖、来たぞ」
俺は商店街の一角にある万事屋を訪ねる。ドアを開くとぶかぶかのパーカーを着た少女が出迎える。
「おぉー来たな。とりあえず駄菓子でも食うか? 商店街のおばちゃんから貰ったんだ」
「いらないよ。で、手伝ってほしい仕事ってなんだ? 」
俺は早速本題に入る。千聖はソファに深く腰掛け、「それはだな、」と話し始める。
「クソ男の捜索、捕獲、及び脅迫だ。元々この男はかなり最低な奴らしくてな、酒を使って無理矢理行為をしたりどさくさに紛れて金を奪ったり……まぁ、ゴミだな。依頼主は被害者の代表として今回の依頼をくれたんだが、結構怒っててな、できるだけ男に報復してくれって頼まれてるんだ。
うちはヤバいこと以外は大体やるし、断れないんだが」
「で、仕事はわかったけど、なんで俺がそんな奴の捜索の協力をしなきゃならないんだよ? 面倒くさそうな相手だし、男手が必要ってのはわかるんだけど」
「それはだな、男を探す上でパチ屋に行かなきゃならないからだ。俺じゃ年齢的に無理だし、和人に行ってもらおうと思ってな」
「いや待て待て、俺だって入れる歳じゃないぞ! 」
「あっそっか……まぁ変装すればいけるだろ」
俺呼んだ意味あんまりないだろ。今問題起こすのは不味いんだが。
「心配するな、ちょっと特殊なことをすれば和人だってバレない。他言無用だがな」
千聖はそう言うと、指を鳴らす。次の瞬間、俺の周りに薄い膜が張られる。
「えっと……これは? 」
「結界みたいなものだ、これがある間は周りからは20代くらいの男性に見える。これならバレないだろ」
「ありがたいけどさ……これがあるなら最初から一人でやれたよな? 」
「そうだが細かいことは気にするな。和人には私の仕事内容を見せたかったしちょうどいいんだ」
あとさらっと言ってたけど、結界ってティタニアと同じようなものなのか? だとしたら千聖って一体……
「よしじゃあ目的の男を探しに行くぞ」
「はぁ……大丈夫かな……」
不安な気持ちと共に捜索は開始された。
さて、俺はとあるパチンコ店にいた。大音量の音とタバコの匂いが充満した店内は地獄だった。
五月蝿いし匂いがきついな……
今回捜索中の男は坂東英二、二浪中の大学生らしい。
パチンコと女遊びが大好きで、大学が終わるとよくここに顔を出すのだとか。
俺は台を物色する振りをしながら坂東を探す。
さっき千聖から貰った写真を手がかりに探す。
あっいた……
目的の男は案外早く見つかった。俺は急いで千聖にメッセージを飛ばす。
すると、男はなにか大事な用事を思い出したかのように台から離れ、急いで店を後にする。
俺は男のあとを追いかける。多分これも千聖がやったんだろうな……前々から思ってたけどほんとに不思議なやつだな千聖って。
俺も能力があるから人のこと言えないんだけど。
男はなにかに誘われるように人気のない裏路地に進んでいく。
そしてそこを抜けると廃墟となった工場があり、そこに入っていく。ここってティタニアが悪魔を祓った場所じゃ……
俺は廃工場の中へ恐る恐る入る。
「おっ和人も来たな」
すると中には千聖と椅子に固定された坂東がいた。
一体千聖はなにをするつもりなんだ……




