153話 鷹峰
今度は相手のサーブから始まる。相手の強烈なサーブをこちらはしっかりと上げる。
「ナイスレシーブ! 」
俺は素早くボールの落下点に入るとまた速攻を上げる。
鷹峰は今度も助走は入るが飛べない。
が、鷹峰とは逆方向に上げたので他の人がスパイクを打つ。
だがそれを星稜の生徒に止められる。
鷹峰側のサイドには他に速攻に入ってくる奴いなかったし、読まれたな。
「ドンマイ」
俺は一人一人にサインを送る。今の状況は鷹峰が後衛に下がったからあれが使える。あとは、さっきので鷹峰の速攻は絶対ないって改めて思ってくれれば嬉しい。
あとは鷹峰次第……上手くいくといいな……
プレーが再開される。相手のサーブを上げてくれる。が、いつもよりも後ろの方に上がってしまった。
俺は落ちてくるボールを見ながら考える。
信頼って時として重くのしかかるんだよな……今回がいい例だ。鷹峰は仲間からの信頼に応えられなくてイップスに陥った。
俺がやってることはあいつのキズを広げるだけかもしれない。もしかしたら意味の無い行為かもしれない。
それでも、ここから前に進めることを信じて最高を託す。
ここで能力を使い、視線を鷹峰へ。
これはフェイクでもなんでもない、「次はお前に上げるよ」という予告。
能力が演算した最高の軌道に沿うようにボールを押し出す。
あぁ、先輩ってほんと怖いな……
ここまでのプレーからもわかるけど、僕に対してとても大きな信頼を寄せている。
助走に走っている最中に先輩と目が合う。
「お前なら決めてくれるよな? 」と問いかけているようなあの目、あぁ、身が竦む。
多分先輩はここで僕が決めなくても失望しない。それどころか励ましてくれるだろう。
でも、その光景は見たくないな……
まだ少ししか関わってないけど、あの人のことはなんとなくわかる。
僕に対して親身になって話を聞いてくれたり、やったことのないバレーの練習をして今この瞬間、僕に最高を託そうとしてくれたり……和人先輩は優しい人だ。
僕に対してここまでしてくれる人を大切にしたい。今だけはその信頼に応えたい。
自分を否定する声が段々と遠くに聞こえる。少しずつ集中によって掻き消えていく。
踏切の直前、足に力が入る。床を蹴るような音が辺りに響く。
次の瞬間、僕は飛べていて、ドンピシャなところにボールが来ていた。
僕はそれを思いっきり打つ。相手のレシーバーが触るが取りきれずに後ろの方に落ちる。
そこから笛の音が聞こえて自分が速攻を打ったという実感が遅れて湧いてくる。
「おぉー!! 」
「ナイスキー!! 」
バレー部の先輩方が次々と声をかけてくる。
「鷹峰、ありがとう」
先輩は嬉しそうな顔でハイタッチを要求してくる。
「こちらこそありがとうございます!! 」
僕は多分一番いい笑顔で応じたと思う……
俺は出番が終わり、ベンチへ下がった。
「お疲れさん、最後凄かったな」
「たまたま上手くいっただけですよ。なんにせよ、よかったです」
最後は少し工夫をした。仮に鷹峰が飛べても止められたら意味が無いので、少しだけ決めやすくした。
「まさか後衛と前衛に被るようなトスを上げるとはな」
「こうした方が相手が思いきった動きしてくれると思いましたし 」
最後の攻撃、あのトスを鷹峰が打たなかったら前衛のサイドの選手に行くようになっていたのだ。とはいえ、高さは鷹峰に合わせてるから全然合わないけど。
その前の攻撃で鷹峰はやっぱり速攻を打てないと感じ取った相手は、あの攻撃を見た時、サイドから打ってくると考えて一人ブロックにつかせていた。
そして他は逆サイド寄りに立っていたので、鷹峰の速攻にはびっくりと合わせて対応できなかったということだ。
「まっ、これで鷹峰も吹っ切れたし、しっかり勝てそうだな」
「完全にこっちペースですし、いけますね」
この後の展開は言わずもがな柏崎が勝ちきった。
練習試合も終わり、片付けに入る。
「和人先輩、今日はほんとにありがとうございました」
鷹峰は深々と頭を下げる。
「俺はきっかけを作っただけだよ。大半は鷹峰の力だし、お礼なんていいよ」
「いえ、でも先輩のきっかけがなかったら克服できていませんでした。ほんとにありがとうございます」
鷹峰は満面の笑みで感謝を伝えてくる。完全に吹っ切れたみたいだな。
「これならバレー部に入れそうだな」
「あっそうですね。PSY部にはあんまり顔出せなくなっちゃいますけど……」
「俺らのことはいいよ。暇な時に顔を出してくれればいいから」
「はいっ、これからもよろしくお願いします和人先輩!! 」
こうして鷹峰は前に進めるようになった。
俺も受験勉強頑張らないとな……こういうことやってるけど受験生だし。
よーし、俺も頑張るぞ……




