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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
3年生編①
152/171

152話 信頼

あの時の感覚をまた思い出してしまった。


みんなの期待に応えられなくて、なにかが崩れて身体の力が抜ける……そんな感覚。


完全に僕のせいで形勢逆転してしまった……速攻が使えなくてもせめてフェイクとしてはやるべきだった。


でも……いざ助走に入ろうとするとあの時の感覚が強く足を引っ張る。


「お前はどうせ役に立てない」、そんな言葉を自分に失望した自分が口に出す。


「入りとしては悪くないんじゃないか? 」


僕が暗い顔をしていると、和人先輩が声をかけてくる。


「変な励ましはやめてください……僕は相手を調子づけるきっかけを作ってしまった」


「それはそうかもだけど、ちゃんとプレーできてるじゃん。何ヶ月もバレーから離れていたのにちゃんと戦力になってるよ鷹峰は」


「いえ……そんなことは……」


この結果を見て戦力になってるとは言えないだろう。僕が入ってなかったらストレートで勝ったかもしれない。


「はぁ……背負い込みすぎ」


先輩はこちらをじっと見つめる。僕の視線も先輩に吸い寄せられる。


「個人競技じゃないんだよ、だから自分のせいだなんて思うな。チーム全体のせいだよ」


「うわ、柊手厳しいな。バレー部じゃないのに」


「後輩に対してのフォロー不足は事実だし、そこは改善しないとだろ? 次のセットの後半、出るからな、よろしく」


「よかったな鷹峰、一番下手な奴が次出るぞ」


他の部員と先輩は1セット落としたというのに明るかった。いや、僕が考えすぎなのか……


次のセットどう戦うか考えないと……



3セット目が始まる直前、俺は鷹峰に声をかける。


「俺が出た時は俺を信じてほしい」


鷹峰は意味を汲み取れていないのか、首を傾げる。


「えっと、もちろんです」


「じゃっ、思いっきりやってこい」


後輩の背中を叩いて送り出す。後はプレーで押すしかないな。


3セット目が始まった。勢いに乗っている星稜に対して、柏崎は落ち着いて対応する。


「うちの奴らはちゃんと対応できるからな。びっくりタイムは終わりだ」


監督の言う通り、相手の直観的な行動にもしっかりと対応する。


そのお陰か、ややこちらのリードで試合が進む。


「柊、そろそろ行くぞ。22からでいいか? 」


「3点分の時間貰えるならありがたいです。本来なら2点分の時間で何とかしようとしてましたし」


俺はウォームアップをしながら試合を見る。できるだけ足を引っ張らないようにしないと。


そして、先にこちらが22点に乗った。それと同時に選手の交代が行われる。


「はい頼むぞ」


「了解」


俺はやや緊張しながらもコートに入っていく。


「とりあえずレシーブミスるなよ。トスは多少ズレても大丈夫だからな」


「善処するよ」


確かに相手のスパイクを拾えないのが不味い。て言っても今はセッターだし、そんな場面はそこまでないと思いたいけど。


「あっ、そうだ鷹峰」


「どうしました? 」


俺は鷹峰を呼び近くに来てもらう。


「えーっとだな、今の状況から早くて3点で試合終わるだろ? だから監督から3点だけ貰った。上手く行けば試合は終わるけど、多分終わらない。

俺はこの3点をお前の背中を押すのに使うからな」


「えっと、それって……」


「やればわかるよ。とりあえず信じてくれていい……俺だって信じてるからな」


話が終わると配置に着く。


今俺は後衛、てことは前衛3枚使えるのか。今の状況からすると関係ないけど……


俺は他のメンバーにハンドサインを送る。どの攻撃に入ってもらうのかを指示すると、鷹峰は驚いた顔をする。


その顔になるのは想定内。後は入ってくれるかだな。


こちらのサーブからプレーが始まる。


相手はしっかりとレシーブすると、速い攻撃に繋げてくる。そこはしっかりと俺以外が対応する。


「ナイスレシーブ! 」


俺は素早くボールの落下点に入ると、トスを上げる。


速攻に使う速さのトスを鷹峰へと送る。だが、鷹峰は飛べない。


ボールはそのまま床に落ちて、相手チームのポイントになる。


「すみません! 」


「大丈夫、惜しかったよ」


俺は鷹峰に駆け寄って声をかける。


そして、もう一回同じサインを目の前で出す。


「うわ……鬼畜……」


「本気ですか……? 」


「本気だよ、これしかやらない。今ので相手もぎょっとしただろうけど、これで鷹峰の速攻はないって判断しただろうな。でもむしろ打ちやすくなったから大丈夫」


「いや、でも僕には速攻は……」


「打てるって俺は信じてる。余計なことは考えなくていいよ」


俺から伝えられる言葉なんてこれくらいしかない。


賭けではあるけど、今はこれくらいしかできない。このイップスは荒療治じゃないと多分治らないだろう。


頼むから、応えてくれよ……

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