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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編①
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15話 冬とのデート

じりじりと気温が上がり始める10時頃、今日は動物園に来ていた。理由はもちろん冬と遊ぶためだ。


今は予定よりも早めに到着してしまったので、入場口近くの日陰で涼んでいた。涼みながらも、冬はそろそろ来るかな~と人の波をぼんやり見る。


すると、人の波から外れた道の端から小走りでこちらに向かってくる小柄な女子を見つけた。冬だ。銀髪を揺らしながらこちらに来る。


「おはよう、冬。」


いつも通り冬に挨拶をする。


冬の服装は白を基調とした清楚な印象を与えるものだった。


「……おはよう……和人。」


冬が急に口を開き、鈴の音のような優しい声を響かせる。頬をほんのり赤く染めた彼女の行動に、嬉しくなるが驚きの方が大きかった。


「どうしたんだ?声を聞かせてくれるのは嬉しいんだけど、かなり急だからびっくりした。」


「あっ、ごめん……驚かせちゃったよね。実は……私も少しずつ変われるように努力を始めようと思って。」


手をぎゅっと握り真剣に伝えてくる冬。


「和人は少し前から変わり始めたでしょ?それを見て私も変わりたいって思って……だから、まずは和人と話すことからやってみようと思って。」


「そうだったんだ……というか皆からそう言われるけど俺何か変わったかな?」


「目がいきいきしてる。あと視野が広くなった印象がある。」


「そうなんだ……」


変わり始めたとはよく言われたけど、具体的な所は全然分からなかったからな。


「さっ、早速行こ?」


「そうだな、行こっか。」


二人で動物園へ入場する。


「やっぱり夏休みだし人たくさんいるな。」


「そうだね……はぐれたら嫌だから手、繋いでていい?」


「あぁ、いいよ。」


俺としては断る理由もないので承諾する。


冬の柔らかい手が俺の手を握ってくる。俺も優しく握る。


「えっと……まずはあっちから行こうか。」


冬は案内板を見て象がいる方を指差す。


「いいね、行こう。」


象の檻に行くと、元気な象が2頭いた。どちらも大人の象であった。


「象って迫力あるよな。大きさといいずっしりとした重い体でゆっくり歩いてくる姿といい。」


「確かに、象は怒って暴れたら手がつけられないし迫力はとてもある。」


無表情を崩さずに冬は言う。


「でも象って可愛いと思う。嬉しいときの表情とか好きで、動物園に来たときは象のエリアによくいるし。」


「俺はレッサーパンダとな好きだな。ちょこちょこ動くのとかエビフライみたいな尻尾とか可愛くて好きだ。」


「分かる……尻尾ふわふわしてるの好き。」


冬は微笑んで言う。そんな彼女はすごく可愛いと思ってしまう。


「次の所行こうか……」


冬の言葉とともに歩きだす。冬のペースにあわせてゆっくり。たとえ無言だとしても、この時間は優しくて楽しいと思えた。


俺達は、ゆっくりといろんな動物たちを見て回る。顔が怠そうな感じのキリンに暑さに負けじとドラミングをするゴリラ、日陰でじゃれあっている猿、寝ている姿でさえも貫禄のあるライオン、毛並みを整えながらも時折こちらを見てくる虎に、愛らしい見た目をしたパンダを見て回った。


冬は終始楽しそうで、見ているだけで癒された。


時間はお昼を過ぎもう少しで1時になるところだった。


「午後はどこ見ようか?」


お昼を食べながら冬に問いかける。


「そうだね……小動物のコーナーがみたいな。」


冬はこちらに微笑みながら提案してくる。


「ご飯食べ終わったらそこに行こうか。俺も行きたいし。」


穏やかに冬に微笑み返して言う。


ご飯も食べ終わり、小動物が飼育されている所へ向かう。そこにはカメレオンやカピバラ、ミーヤキャット等がいて、可愛い動物から不思議な動物まで幅広くいた。


「あっ、カピバラが元気に遊んでるよ。ほらあそこ。」


「……ほんとだ、可愛い……」


俺と冬の間には優しい空気が漂っている。冬と一緒にいると自然と癒されている感じがする。


「あっちにうさぎとふれあえるコーナーがあるみたい……和人、行ってみよう。」


笑顔で俺の手をひく冬。彼女のこんな顔を見たのは今日が初めてだな。俺も自然と笑顔になっていた。


「わぁ~みんなもこもこしてて可愛い……」


「どのうさぎとふれあおうか迷うね。」


うさぎはみんな可愛く、ひとなっこかった。


俺達は適当なうさぎを一匹ずつ抱いて、日陰の座れそうな場所に連れていく。うさぎを撫でると、気持ち良さそうに体をぐったりさせていた。


「こういうのは楽しくて好きだな……」


「動物とふれあえる場所ってついつい長居しちゃうよな~」


「あっ、私のうさぎ眠たそうにうとうとしてる。」


「確かに。疲れてるのかな?」


「……和人、今日はありがとう。」


不意に、冬が儚い表情でそう言う。


「和人とこうしてデートするのを前から楽しみにしてたんだ……」


「そうか……俺の方こそありがとな。冬と一緒にここに来れたのはすごく楽しかった。」


「そう……なんだ。よかった……」


安堵する冬の顔を見て、少しドキドキしている自分がいる。


「それでね、大事な話があるの……」


やわらかい風が俺と冬の間を流れる。木々の囁く声や子供たちの喧騒は遠くのものに感じる。あぁ……きたな……


「好きです……和人の事が。私と、付き合って下さい。」


一呼吸おいて、冬が意を決したように告白してくる。その頬は真っ赤に染まり、瞳には不安の色があった。


冬が俺に好意を持ってくれてであろうことは前もって分かっていたので、告白をうけて、驚きよりも嬉しさの方が何倍も大きかった。優しくて可愛くて、こんな俺に好意を持ってくれた彼女からの告白は嬉しくないわけなかった。


正直言って冬のことは前から気になっていた。なので、返事はもちろんオッケーを出そうとしていた。


が、

「俺は……」

返事を出そうとした口が止まった。


なぜなら、脳内を千華の笑顔が一瞬よぎったからだ。なんで今よぎるのか、俺にも全く分からなかった。


よぎった後、胸に痛みがじわじわ響く。今、俺は幸福感を感じるとともに、突如襲ってきた胸の痛みを感じていた。


(なんだ……これ?なんで千華を思った瞬間、胸を刺すような痛みがわいてくる!?嬉しい気持ちでいっぱいの筈なのに……)


心配そうな顔をしている冬をぼんやりとしか見れないほど、俺は混乱していた。頭をできるだけ冷静に働かせる。


原因がなんなのか、最初は困惑するばかりで分からなかったが、時間が経つにつれ原因が実体をもち始める。


(あぁ……そういうことか……)


原因がわかったとき、俺は自分を人生の中で一番呪いたくなった。殺したくもなった。


「えっと……大丈夫?顔色悪いよ。」


俺はそこでようやく冬が心配してる様子をハッキリと見ることができた。冬を心配させるわけにもいかないので、一旦深呼吸をおく。


「大丈夫、どこも悪くないよ。」


「そうなの?よかった……」


ホッと安堵する冬。


「まずは告白ありがとう、すごい嬉しいよ。」


自分の今の気持ちを伝えるために、空元気で頑張る。


「でもごめん、今は冬の気持ちに応えることはできない。」


「そっか……。理由を聞いてもいい?」


「うん、だいじょぶ。理由はさ……今の俺の気持ちが冬に一直線に向いていないからなんだ。」


目を伏せて続ける。


「冬のことはもちろん好ましく思ってるよ。でも……好ましく思ってる人がもう一人いる……。だから、今すぐには冬の気持ちに応えられない。」


自分が情けなくなる。声はおそらく震えていただろう。表情は泣きそうだっただろうか……?


「そうなんだ。いつなら気持ちの整理がつきそう?」


冬はこんな俺を責めることなく、優しい声で聞いてくる。


「……来月のお祭りには絶対に整理をつける。だから、それまで待っててくれないか?」


「分かった、待ってるね。」


「ごめんな……」


「大丈夫だから……そんなに泣きそうな顔しないで。」


俺の頭を優しく撫でてくれる冬に対して俺は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「待ってはいるけど……もう一人に負けるつもりはないから。」


冬はめいいっぱいの笑顔を俺に向けてきた。今の俺にはその笑顔をまっすぐ受けとめる資格はなかった。








(何やってんだろうな俺は……)


その日の夜、沈んだ気持ちで自室の机に突っ伏す。あのあと、どうにも気持ちが入らず、かなりボーッとしていた。こんなんで気持ちの整理がつくのだろうか……


「おーい和人~なんかあったの?」


俺が悩んでいると、葉月がジュースとお菓子を持って入ってくる。


「急にどうしたんだよ?」


「いやぁ和人が帰ってきてからずっとどこか上の空だったから色々聞きにきた。」


そう言って葉月はお菓子を開ける。


「……そんな分かりやすかった?」


「めっちゃ分かりやすかった。だってあんた魚焦がしてたし。」


「いやそこで分かったの!?」


この幼なじみ変な所で分かるな。


「まぁとりあえず話してみな。この葉月さんが聞いてあげよう。」


葉月は薄い胸を張って言う。なんか葉月が頼もしくみえる。


「実はな__」


俺は今日あったことを包み隠さず話した。告白されたことも、それを今は気持ちの整理がつかないからと断ったことも、全部。


「なるほどね~つまりは和人が冬ちゃんと千華の二人の事が気になっているから、今すぐには冬ちゃんと付き合えないと。」


「まぁ……そういうことだな。」


「現実にそういうことってあるんだね。驚いたわ~」


「……自分でも情けないって思ってるよ。」


「もう気持ちが二分してる事については、しょうがないって思うしかないんじゃない?反省も大事だけど、今やるべきなのは千華か冬ちゃんのうちのどっちかをとるかを決めることだからね?ちゃんと選んであげなよ。」


「そうだな……自分にへこんでる時間なんてないよな。」


「そうそう、あと当たり前だけど、選ばれなかった子の分まで選んだ子の事を幸せにする事!そうしなかったら私が和人の四肢ねじ切るから。」


「いや怖えーよ。……でもほんとにそうだよな。ありがとな葉月、お陰で少し楽になった。」


「ありがたいと思うなら後で美味しいもの作ってね。私すき焼きがいい。」


「今はまだすき焼きは勘弁してくれ。まぁ、作るとしたら年末ぐらいになるけどな。」


「うーんそれならいいや。楽しみにしてよ~。」


アホ毛をぴょこぴょこ動かす葉月。こいつのアホ毛って命宿ってるのか疑わしくなるんだよな。


「まぁとにかく頑張りな和人!私も陰ながら応援してるよ!……お菓子なくなっちゃった。」


葉月に話を聞いてもらったお陰で、気持ちが少し前に向いた。そうだ……ちゃんと選ばなきゃ。焦らず落ち着いて。



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