143話 特別号〔1〕
新聞部の取材を受けてから2日が過ぎた。
あれから朧月は今回の取材を元にした特別号を授業をサボりながら作成した。
今は職員室で先生方から指導されているが、目的のものが出来上がったせいか、本人は特にダメージがないようだ。
特別本は今日の昼休みから購買の横のスペースで売られるので、今日は特に荒れそうだ。いつものように怪我人がでるな。
「まったく……あの迷惑男は毎度毎度こちらの仕事を増やしてくれるわね」
朝の生徒会室では、蒼が機嫌悪そうに腕を組んで座っていた。
「あの会長、それでどうしましょう? このままだと去年みたいに荒れてしまいます」
泊さんは不安げに話す。確かにあの血走った目の男子たちは怖い。俺もできれば近づきたくない。
「えぇ、だから少し対策を講じたわ」
そう言って1枚のプリントを差し出す。
色々書いてあるが、その内容は要約するとこうだ……『前段階で整理券を配布し、さらにグループわけをして販売する』。
「ここに風紀委員を使うわ。毎年招集されてるし」
「確かにこれなら多少は減りそうだな。ここに売り場の変更と増加があると良さそうなんだけど」
購買の横でやるからいけないのであって、迷惑にならないところなら問題はないのだ。売り場も増やせば問題はなさそうだ。
「私もそれを考えたわ。でも、普通に無理だったわ」
蒼の額に手を当てている姿を見て察する。なんか色々と絡んでるのかな。
「迷惑男本人が言ってるのよ。『目立つ場所でないと僕の本は最高の光を放たない』って。で、それに加えて条件を呑まないとなにするかわからないって駄々をこねられたわ」
「うん……あいつが人の意見を素直に受け入れないことはわかってた」
朧月は自分のやりたいことを自由にやるやつだし、そこに他からの意見はほぼ意味をなさない。
それに、あいつ変な情報色々持ってるから暴走したら学校中大混乱になりそうだ。あいつ危険人物過ぎるだろ。
「でも去年までとやることがそこまで変わらないのが惜しいわね。はたして時間をずらしていけるかどうか」
整理券の配布は去年とかもやってたな。今回はそれに加えて時間をずらすけど、それがどこまで効果あるか全くわからん。
「まぁでもやってみるしかないですよ会長! 」
泊さんの言う通りではある。今はやれることをやるしかないよな。
「そうね……それじゃ、みんな気を引き締めてね。特に柊くん、鎮圧は任せたわ」
「ですよね知ってた」
まぁうん……頑張るか。
こうして朝の時間は過ぎていくのであった……
この日の学校はぴりっとした緊張感に包まれていた。
1時間目が終わったあとの休み時間から男子生徒は鬼気迫る形相でどこかへ向かっていった。一部の女子生徒も小走りでどこかへ向かっており、あの本の人気の高さを痛感した。
休み時間の度に廊下は騒がしくなり、喜びと怨嗟の声が乱舞する。順番かグループで良くないのを引いたんだろうな。
男子たちの期待とは裏腹に高まっていく俺の不安。
ティタニアは俺の顔を見てお腹が空いてると思ったのか、グミを差し出してくる。違うそうじゃない……
「うん、すごい大変だろうけど頑張って……」
千華は的確に励ましの言葉をくれた。ありがとう、その言葉で頑張れそうだ。
さて、そうこうしているうちに昼休みとなってしまった。
グループ分けによると、昼組と放課後組に分けられるようだ。分散はするからある程度抑えやすそうだ。
俺は早速売り場である購買へと向かう。他の生徒よりも早く出られたので、変な障害はないな。
そして、購買ももうすぐというところで鷹峰と出会う。
「あっ先輩、お疲れ様です」
「あれ、どうした? 」
「実はお弁当忘れちゃって。購買でなにか買おうかと」
鷹峰の言葉に戦慄する。まずい、このままでは鷹峰は……
「悪いことは言わない、今日の購買だけは止めておけ」
「えっ、あの……なんでですか? 」
「前に取材を受けた内容の入った本が今日発売なんだ。で、その日は毎年荒れている」
俺が説明を行っている最中にもとんでもない数の足音が聞こえる。もう来たか。
「鷹峰端に寄れ! 」
「えっ、」
俺がそう発したのと同時に男子たちの波が進行してくる。
「あっ鷹峰!! 」
俺は巻き込まれなかったのだが、鷹峰が巻き込まれてしまった。
やがて波が収まると、涙目の鷹峰が床に転がっていた。
「ちょっ、大丈夫か!? 」
「なんなんですかあれ!? 」
「特別号を買いに来た奴らだ。あいつら一斉に走ってくるから止めようがないんだ」
すごい危ないので、先生たちから前もって注意喚起がなされているのだが、毎年巻き込まれる生徒がいる。
ほんとに特別号の発行を禁止した方がいいのではないかと思ってくる。
「痛た……とりあえず購買行きましょう。流石にもう問題は起こりませんよね? 」
「……巻き込まれなければ起こらないぞ」
「……」
ここからが本番だから気を引き締めないとな……
俺は、ちょっと涙目の後輩一人を連れて、改めて購買へと足を運ぶのであった……




