138話 勧誘
「__という感じで、俺たちは君と同じ能力者だから安心してくれ」
俺は男子生徒に事情を説明する。部活のこと、俺たちのことをちゃんと話す。
「なるほど……? つまりは僕と一緒の人たちが集まってる部活に勧誘されてるってことでいいですか? 」
「うん、そういうこと」
どうやらしっかりと理解してくれたようだ。ひと安心だな。
「それにしても、どうしてあんな真似したんだよ睦月? 」
「いや〜すみません、能力を探る過程で少し遊ぼうかと」
「初対面の人間にそういうことすんな」
これで警戒心持たれてたらどうするつもりだったんだろう。結構ヒヤヒヤものだったな。
「えっと、それで部活の件なんですけど……入りますよ」
「えっ、いいの? 」
俺は思わず聞き返してしまう。少し考えさせてほしいとかを予想してた。
「えぇ、ちょうど入りたい部活もないですし」
「でもバレー上手いんだよな? やらなくていいのか? 」
「バレーのこと知ってたんですね……」
バレーの話をした途端、その生徒は暗い表情になる。
「でもいいんです、中学でもういいやってなったんで」
「そっか……」
そこからはもうなにも聞けなかった。
なにがあったのかは聞ける状態じゃない。多分本人にとって重いものだろうから。まだ聞けるほどの関係じゃない。
だから今は知っていかないと……
「そういえば名前を聞いてなかったな。教えてくれるか? 」
「鷹峰昇です、これからよろしくお願いします」
鷹峰は礼儀正しくお辞儀をする。俺は「よろしく」と返した。
「で、鷹峰の能力ってどんなのなんだ? 」
「えっと……簡単に言うと時間停止能力です」
うわ、なんだかまたすごい能力が出てきたな。
鷹峰の言葉を聞いて睦月の目が輝く。こらこら、喧嘩したいオーラしまえ。
「て言っても基本的に使わない方が得の能力です。解除した後、僕の体が止めた時間分止まりますから」
睦月は一気に興味を無くしてしまう。期待しすぎだろ……
「その時って意識あるのか? 」
「ありますね、それはもうバッチリと。だから長く止めるとその分苦痛なんですよ。周りは動いているのに僕だけ動けないですから」
あんまり実用性の無さそうな能力だな。ほんの数秒なら問題なさそうだけど。
「ありがとう、鷹峰のことは最低限わかったよ。それじゃあ、明日にでも部活動の入部届けを出して、うちの部室に来てくれ。特別棟2階にあるから」
「わかりました」
必要なことを話終えると鷹峰と別れる。ついでに目的を達成したので睦月ともここで別れる。
「あっそうだ先輩、今度ゲーセンに付き合いませんか? 」
「なんか変なことするんじゃないだろうな? 」
「まさか」
睦月は去り際にそんなことを言い残し、去っていく。
まぁ、睦月と出かけてみるのもいいかもな。あいつもなにか抱えてそうではあったし。
「っといけない、早く戻らないと」
俺は蒼を待たせていたことを思い出し、すぐに戻る。
「なにをしていたの、新入生はもうとっくに帰ったけど」
戻ると少し不機嫌そうな蒼が待っていた。
「ごめん、少し時間かかった」
「あなたにも事情があるのはわかるけど、こっちのことをしっかりとやってほしかったわ」
「返す言葉もない」
先に頼まれたことだし、こっちを優先にしてもよかったな。でも俺が行かなかったら睦月が恐喝じみたことを続けてたし……一応正解ではあるのか。
「働かなかった分、後できっちりと返してもらうわ」
「あぁ、雑務でもなんでも来い」
「……? 、なに言ってるの? そんなものを振るわけないじゃない」
一体なにを振るつもりなんだ……弓道部の勧誘に関することだろうか?
「あなたには私と買い物に付き合って貰うわ」
「いやどうしてそうなった……? 」
蒼がいきなり壊れた。
「いえ……実は泊さんと今度、お互いのおすすめの場所を案内し合うことになっていて第三者の意見が聞きたいのよ」
「そういうことだったのか……」
泊さんの蒼に対する尊敬度は桁違いだからな。グイグイ行って蒼が妥協したのだろう。
「それじゃあ来週行くから空けといて。さて、さっさと生徒会室に行くわよ。クラスマッチのことで打ち合わせがしたいから」
「そうだな、冬と泊さん待たせるのも悪いし行くか」
入学式、ビラ配りが終わる。俺たちは生徒会室に行って、これからの行事の打ち合わせを行う。
蒼が先に歩き出した時、スマホが鳴る。
見ると、千聖からメールが来ていた。
『頼まれていた件、少し進展があったから暇な時にうちに来てくれ。』
仕事が早いな。これで苅田がどこにいるのかわかればいいんだけど……
「どうしたの? 早く来なさい」
「ごめん、すぐ行く」
とにかく、これが終わってからすぐに向かおう。そう心に決めて生徒会室に向かった。




