137話 新入生
入学式当日、俺たち在校生は学校が休みなので家でゆっくり……とはいかず、目当ての新入生の勧誘を行う為に学校に来ていた。
「柊くん、今日はよろしく」
まぁ俺の場合は生徒会もあるんだけど。
蒼はいつもの冷静な口調で準備を進める。今回は俺が司会をやることになっていて、少し緊張してしまう。
「会長、部活動の勧誘の場所を伝えてひとまとまりにさせておきました!! 」
泊さんが元気よく報告してくる。
「えぇ、ありがとう」
それに対して、蒼は表情を崩さずに対応する。
「和人、あんまり緊張しないでいいからね? 私もサポート入るし」
「ありがとう冬。もしもの時は頼りにしてる」
俺は、冬と話して緊張を和らげる。
「あっそういえば柊くん、後で弓道部の勧誘にも参加してね。あなた兼部してるんだし」
「そういえばそうだな。わかった、協力するよ」
今日は大変な1日になりそうだ。勧誘にも参加しないとだし。
「じゃっ、始まるまで待機ね。しっかりやりきりましょう」
そこから、俺は冬と一緒に最後の確認を行っていった。
そして、それから程なくして入学式が始まった。
多少の緊張はあるが、特に問題もなく司会をやれていた。
式が進んでいくにつれて落ち着くことができ、堂々とした進行ができたと思う。
そして、会長の言葉として、蒼が新入生の前で話し始める。
その声はいつものように凛としていて落ち着いていた。ほんとに蒼はブレないな……
蒼が話終わると会場からたくさんの拍手が沸き起こる。まぁ蒼だし当然だよな。
そして、新入生が教室に戻り始めると俺たちも行動を始める。
「とりあえず片付けは後で行うから、俺と蒼は勧誘の方に行くな」
「夢宮さんと泊さんはその間生徒会室で資料の整理を行っておいて。できるならクラスマッチの案出しを始めておいて」
「わかった、やっておくね」
「任せてください会長!! 」
泊さんの元気のいい返事を聞いてから体育館を後にする。
弓道部の勧誘と目的の生徒への接触、特に後ろのやつは早めにやっておかないと不味い。
早くしないとバレー部に入られてしまうからだ。運動部に入ると基本的に忙しくて兼部なんて無理だ。できたとしてもただの幽霊部員になる可能性が高い。
本人がそれで問題ないのならいいんだけど、能力者は基本爆弾を抱えているからいつなにが起こるかわからない。いきなり暴走とかされたらこちらも手の打ちようがないし。
だからこそ、うちの部に入ってもらって、能力の詳細から対策を立てたい。
俺が頭の中でそんなことを考えていると、いつの間にか勧誘場所の正門付近に着く。そこには多くの部活動の生徒たちがチラシを持って準備していた。
「じゃあ柊くん、あなたはこのビラを配って。あんまり五月蝿いのに渡さないで」
「選り好みしてる場合じゃないだろ……」
まずは興味を持って貰わないと、入る入らない以前の問題だ。というかそんな選別無理だろ。
「あっ先輩、お疲れ様です」
俺が蒼にツッコミを入れていると、後ろから聞き慣れた男子の声が聞こえる。
睦月だ。PSY部の面々は皆、バイト、昼まで寝てる、友達と遊ぶ……と色々な理由で暇? ではなかった。睦月は唯一暇だったので来てもらったわけだ。
いや寝てる奴絶対めんどくさいだけだろ。
「俺は目当ての奴に声かけますね。どんなものか見定めます」
「普通に勧誘してくれ! くれぐれも変なことするなよ!? 」
俺は予め、睦月に釘を刺しておく。こいつ放っておくと変なことし始める恐れがあるからな。……喧嘩とか。
「わかってますよ。まぁ、でも活きのいいのがいたらやっちゃいますけど」
「そういうのやめろ……」
入学当初に3年生の先輩ボコった奴だから、本当にやるだろうな……該当する奴いないでくれ……
俺が睦月に一抹の不安を覚えていると、昇降口の方が騒がしくなる。
「来たみたいね。それじゃあ勧誘始めていいわよ! ビラでもなんでも配って興味持たせなさい」
蒼の指示で全員動き出す。
さて、俺は少し離れたところでゆっくり配るか。前の方はラグビー部とサッカー部、野球部が行って怖いことになってるし。
勧誘をする側の生徒は、ライバルの部と争いながらも新入生の帰り道を無くさないように気を配っている。横で声を出して配ってる感じだ。
「弓道部お願いします。初心者からでも歓迎ですよ」
俺もとりあえずビラを配る。弓道はかっこいいイメージがあるのか、割と取ってくれるな。
勧誘の最中、ふと横目で見ると、睦月が新入生の一人を連れてどこかへ行くのが見えた。
その新入生は栗色の髪に、高身長(恐らく180後半はある)、所々筋肉が付いている男子生徒だった。
あれって俺らの勧誘目的の生徒だよな……心配だし見に行って見るか。
俺は弓道部のビラ配りを一旦ストップし、睦月たちの後を追う。
少し行ったところに人気のない場所があり、そこで2人は話していた。
「早く能力の詳細を言えよ、こっちは大体わかってるんだから」
「えっ、いやあの……」
訂正、恐喝していた。
「そういう聞き方やめろ!! 」
慌てて2人の間に入る。新入生はガタイの割に弱気なのか、ちょっと震えてた。
「まずは自己紹介、と状況の説明が先だろ」
ということで、俺は最低限必要なことを話し始めた……




