136話 始業式
「なるほどな……つまりは急にいなくなった生徒を探してほしいってことか」
俺は千聖に調べてほしいことを話した。葉月の一件でいきなり転校してしまった苅田のことだ。
俺たちが警備員の人と話してから、すぐに消えてしまったことに違和感を持ってしまった。
それに加えて、誰も転校先を知らないというのも怪しい点だ。
「なんだかきな臭そうな感じだが、こっちで調べてみるぞ。まぁ、あんたらは学生だしお金に余裕なさそうだから1000円で受けてやる」
「いや安いな」
「その代わり、成果が出たらもう1000円貰うけどな」
それでも2000千円なら安いな。
「でもいいのか? そんなに安いとそっちの生活が……」
「あぁ、大丈夫だ。本業でかなり稼いでいるからな。俺は将来有望らしい」
本業が気になるな。どういう職場なんだ……
「うんじゃあその条件でお願いするよ。なにかわかったら教えてくれ」
「了解だ。そういえば、あんたの名前はなんだ? 」
「柊和人、好きに呼んでくれていいよ」
「そうか、じゃあ和人だな……よろしく」
そう言って手を差し出してくる。俺はその手をしっかりと握る。
そうして、契約を結び、帰路に着く。
「少し不安だけど、なにかわかればいいわね」
「怪しいけどさ、信用できる奴だと思うよ。悪意とかは感じなかったし」
「頭の中も平和だったし、そこについては同感ね」
千華があの時口出ししないことが、信用してもいい証だったんだよな。
こうして、新学期前日は新たな出会いをして終わっていった。
次の日、学年が上がったこともあり、クラス替えが行われた。
「和人くん、今年もよろしくお願いします! 」
ティタニアとは同じクラスで、また大変そうだと思ったのだが、葉月とは違うクラスになってしまった。
葉月は冬と同じクラスなのだが、少し残念そうにしていた。
「今年は一緒ね、よろしく」
千華に関しては同じクラスなので結構嬉しい。彼女自身も嬉しそうにしている。
だが、そんな千華の顔も一瞬で凍りついた。
「あら、柊くんと一緒なのね。精々、副会長としての自覚を持って行動してね」
なぜなら、蒼も同じクラスだからだ。千華の顔が真剣なものになり、なにかを考え始めた。
あっ、三宅とも一緒だ。よかった、席は近いのかな……
教室へ行き、座席表を確認すると、俺の席は真ん中の列の一番後ろだった。
隣は……蒼か。
千華に心配かけないように気をつけよう。
「私は千華ちゃんの隣です! 後ろは蒼ちゃんですし、最高ですね!! 」
「ティタニア、あんまり騒がしくしないでね」
「あら、ティタニアさん。すぐ前なのは仕方ないけど、節度を持って生活してね」
「えっなんか2人が酷い……」
少しばかり落ち込むティタニアを見てかわいそうになる。どんまいとしか言えない。
賑やかになるクラスも、先生が来ると一気に静かになる。
今年も担任の五十嵐先生のHRを行い、始業式の為に体育館へ移動する。
「__今日から新学年がスタートします。皆さん、くれぐれも前3年生が残してくれたものを無駄にしないように過ごしてください」
凛とした声が体育館に響く。今は始業式の最中だ。
蒼は卒業式以来、更に生徒会に熱を入れて活動している。
また、耀音さんと少しずつ話せるようになってきているらしく、姉妹関係は良好のようだ。
ちなみに、ホワイトデーに蒼と一悶着あったのだが、ここで話しても長くなるのでまたの機会にしたい。
蒼の話が終わると、始業式は終わり俺たちは教室に戻る。
「蒼ちゃん、かっこよかったですよ!! 」
「ありがとう……でも前を向いてくれるかしら? 」
ティタニアは蒼の方に椅子と体を向け、満面の笑みで話している。そして、今から先生の話が始まろうとしていた。
「おい、前向け」
五十嵐先生が呆れた様子で注意する。ティタニアは照れ笑いを浮かべて前を向く。
「こほん、それじゃあ少し話すぞ__」
五十嵐先生の方からこれからのカリキュラム、受験にあたっての心得が話される。
これを聞くと、自分が受験生だということを再認識させられる。
志望校に合格できるように頑張らなくちゃな……
そして、いつもの日常を過ごして学校が終わる。
俺たちは部室に移動すると、明日から新入生が入ってくるということで、部活動の勧誘の準備をしていた。
「部活動紹介には出ないから、私たちだけで目的の生徒にアプローチをかけなきゃなんだよね? 」
「あぁ、天夜さんから貰った資料だと、今回は2人だな。アンヘルともう一人の男子生徒」
俺たちは予め天夜さんから、今年の能力持ちの入学者の資料を貰っていた。
アンヘルは知ってたけど、もう一人能力者がいるとは……天夜さんたちもよく見つけてくるな。
「じゃあ拉致るか」
「怖いことすんな。問題になるぞ」
「じゃあ睦月と決闘させる」
「いいですねそれ。ちょうど退屈してたところなんですよ」
「そういうのは却下だ!! あとお前も乗り気になるな!! 」
葉月の突拍子もない意見にツッコまざるおえない。
「その男子生徒、本当に入ってくれるかな? 」
冬が資料を見ながら疑問を口に出す。
「どういうことっすか? 」
「どうやらこの人、中学ではバレー部でかなり結果出してる選手みたいだよ。県大会準優勝だって」
「それだとバレー部に入りそうだな。まぁ、それならそれでいいと思うけど」
別にこの部活は強制じゃないし、能力者だから入るべきとかではない。兼部はできるけど。
「いや、絶対入れさせる。新入生がアンヘルだけは寂しいし! 」
「まぁ……とりあえずはアプローチするしかないか」
明日は入学式、新入生が入ってくるので、部活の勧誘が激しくなり出す頃だ。
果たして目当ての生徒は入ってくれるのだろうか……




