134話 サプライズ〔7〕
俺たちは2つ目のサプライズの為に茂みに身を隠していた。
現在湊さんを待っている最中だ。葉月の邪な考えで、耀音さんと湊さんの関係を急接近させようとしている。
後で怒られるだろうなと感じながらも、多数決で押し切られた形だ。あと、湊さんが耀音さんの話をした時、なんだか恋しそうな表情をしていたのも印象的だった。
「ねぇ、そういえば雪原さんはどうしたの? 」
同じく茂みに隠れていた蒼から疑問を投げかけられる。
「千華なら今頃、冬と一緒に伊月先輩に色紙を私に行ってる筈だよ」
伊月先輩のサプライズも検討していたので、こちらの方と同時並行で行うことになったのだ。
千華と冬ならしっかりしているからきちんと渡しているだろう。俺もこれが終わったら伊月先輩と話したいな。
「あっ来たよ」
葉月の言葉通り、向こうから湊さんが歩いてくる。
そして、耀音さんに気づくとすぐさま走ってくる。
「耀音さん、どうしてここに!? 」
「湊くん久しぶり」
耀音さんはニコッと笑って対応する。
「ちょっと妹の晴れ姿を見たあと、湊くんと話そうと思ってね。一応後輩たちからのサプライズ」
「あいつらが……」
「よし行け行け、距離縮めちゃえ」
葉月は目を輝かせながら2人のやり取りを見ている。元気だなこいつ。
「それはそうとお疲れ様。最後まで会長でかっこよかった」
「ありがとうございます、ですが……耀音さんに比べればまだまだです。自分はあなたのように輝けなかった」
「……妹もだけど、湊くんも私になろうとしすぎ。私とあなたとじゃ持ってるものが違うんだから、輝き方は別にあるでしょ?
私はそんなつもりで『任せる』なんて言った覚えないけど? 」
「……そうでしたね、考えすぎました」
耀音さんの言葉を聞いて、蒼も自分が情けないと言った表情をしている。
今の時点でしっかりと気づけたんだから、俺はいいと思うけどな。
「湊くん、あなたはこれから探していきなさい。自分がどうやったら輝けるのかを。あの子は、もう見つけてるから大丈夫だろうけどね」
耀音さんは少しだけこちらに視線を向ける。
「そういえば湊くんって進学だっけ? 」
「はい、そうです。耀音さんと一緒のところです」
「……そっか、それならたまに食事とか行けるね」
耀音さんは笑顔で湊さんに話しかける。湊さんは目線を逸らして相槌を打つ。
「あのっ耀音さん……自分は、あなたのことがっ!? 」
湊さんが意を決してなにかを言おうとしたところ、耀音さんの人差し指で止められる。
指の腹で口を塞がれ、湊さんは困惑している。
「それはまだ聞きたくないかな。湊くん、後輩たちにネタの提供しちゃうところだったよ? 」
「なっ!? まさか、」
「やば、耀音さんにバラされた! 逃げるよティタニア! 」
「はっはい、撤退しましょう!! 」
盗み見がバレたことで、葉月とティタニアは一目散に逃げていった。
「逃げ足速いのね」
蒼は葉月たちの様子に関心を持っていた。そうやってる場合じゃないと思う。
「柊、これはどういうことだ……」
「えっとですね……話すと長くなりそうなんですけど……」
俺はこれまでの経緯を説明した。
「……緋色のやつそんなことを……少し罰が足らなかったようだな」
「まぁまぁ湊くん、葉月ちゃんのお陰で妹も自覚したみたいだし、許してあげて」
「? 、耀音さんがそう言うなら仕方ないですね」
「……」
嬉しそうな耀音さんとは裏腹に、蒼は少し不機嫌そうだ。
「あっいた。そっちはちゃんとサプライズできた!? 」
ちょうどいいタイミングで千華と冬、それに伊月先輩が走ってくる。
「うん、変な感じになっちゃったけどなんとか」
「そっか、よかった」
千華はほっと息をつくと、俺に体を寄せてくる。
蒼に対しての牽制ってことでいいんだよな?
(なんだか思った以上に進展していたから、ちゃんとマーキングしておかないと)
俺はナワバリかなにかなのか……
「これから大変そうだね、蒼」
「五月蝿い」
蒼は、苦笑気味の耀音さんを睨みつける。なんだかさっきから不機嫌だな、なにかあったのかな?
「……」
「……」
「えっ、なんで2人からジト目で見られてるの!? 」
千華と蒼の両方からジト目で見られるの辛いな。「なんでこいつわからないんだ」と言われてる気がする。
「柊、お前には助けられたな。蒼のこと、これからもしっかりと頼む」
「あっはい、もちろんです。あと伊月先輩、卒業おめでとうございます。あとどちらかと言うと、助けられたのは俺らの方ですよ」
伊月先輩にお祝いの言葉を伝える。
なんというか、その場が和やかになりかけたその時、
「あっ話し終わった!! 」
「げっ……先に帰れって言ったのに」
耀音さんが少し嫌そうな顔をする。
声の方に視線をやると、そこには千歳さんがいた。
この反応からして2人は知り合いだったのか……知らなかった。
「嫌だよ、せっかく委員長と久しぶりに会えたんだから……ホテルに行くまでは粘る♡」
「冗談でもやめなさいそういうの」
「姉が戸惑っているところは初めて見るわ」
蒼が冷静に分析していると、千歳さんが蒼にギラついた目を向ける。あっ、これまずい。
「へぇー君が委員長の妹なんだ……クール系の子猫ちゃんみたいだけど、夜の方はどうなのかな? 」
「ちょっと……あの、なにをして……」
「大丈夫、お姉さんが優しく手ほどきしてあげるから。ホテルで可愛く鳴かせてあげる♪」
「ちょっと千歳、うちの妹に変なことするな!! 」
耀音さんが蒼を抱きしめて千歳さんから守る。まだ状況が飲み込めないのか、蒼は珍しく戸惑っている。
いや、泊さんが来てからその熱に押されてあんな顔割としてたな。訂正訂正……
「えーそれなら委員長が相手してくれるの? なんなら姉妹丼でもいいよ? ウェルカム」
「そういうのはヒッキーにやりなさいよ!! 」
「ほんとにあの人が来ると一気に賑やかになるな」
「でも結構大変よね……」
俺と千華はわかると頷きながら話をする。今日楓さんは一緒じゃないのか。これ止める人いないんじゃ……
「だって、今日ヒッキー『締切が、』とか言いながら辛そうに仕事してるんだもん。流石にそんな人にちょっかいかけられんよ」
「そこの配慮ができるんだったらこっちにもしてよ!! 」
「ごもっともです」
耀音さんの指摘に「えっ、やだ」と素直に返す千歳さん。うん、平常運転。
「あれ、お姉ちゃんだ! 」
「皆さんも集まってますね! 」
逃げたと思われていた2人が戻って来た。これで全員集合か。
ここから長くなりそうだなと思いながら、視線を上に向けると、綺麗な桜が舞っていた。
こんな騒がしい卒業式もありなのかな……




