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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生の終わり
131/171

131話 サプライズ〔4〕

朝だ……カーテンから指す光が私の瞼を通り抜けていく。


私は目を開けるとムクリと身体を起こす。


見えるはいつもの部屋。喉の調子は問題なく、体調も万全だ。


今日の卒業式はしっかりとやりきってみせる……


私はその決意を胸に、制服に着替え始めた。


(結局なにも言えなかった……)


布の擦れる音を聞きながら、姉のことを考えていた。


いつからだろうか? 姉に負けたくない一心でいるうちに、姉に対して冷たくなったのは。


いつの間にか姉との関係はギクシャクしていて、歩み寄り方がわからなくなってしまった。


そろそろ修復しておかないといけないのに……


(ひとまず今日の卒業式での送辞を完璧に読まないと。姉との関係なんていつでも変えられるのだから)


私は準備が終わると玄関から外に出る。


「蒼音、今日卒業式があるんだっけ? いってらっしゃい」


その際、姉に声をかけられる。私はなにも言わずに出ていってしまった。


どれだけ強がっていても、私からの歩み寄りは不可能に近かった……




その後、特に対象にバレることもなく卒業式の朝を迎えた。今日で蒼は前に進めるといいな……


「いよいよ今日ね。お世話になった3年生ももう卒業ね」


千華は少し名残惜しそうに話す。


確かに千華の気持ちはわかる。お世話になった伊月先輩や湊さんが卒業してしまうのは寂しくなる。


でも、それでも人生の門出はしっかりとお祝いしてあげたい。


故に、俺ができることはサプライズをして笑って送り出すことだ。


「今日和人って早めに学校行くんだっけ? 」


「あぁ、生徒会で少しリハーサルやるんだって。蒼とも少し話しておくよ」


緊張ぐらいは和らげてあげたいし。


「和人、蒼音さんには気をつけなさいよ。いつ好意向けてくるかわからないんだから」


千華の注意を苦笑して受ける。やっぱり心配しすぎなんだよな……


「それじゃっ、いってくるよ」


俺は駅に向かって駆け出した。時間に余裕はあるのだが、少し体を動かしておきたい気分なのだ。


サプライズのことで、式中にそわそわしてしまいそうで心配だからだ。


俺は軽く走りながら駅への道を進み、駅に着くと電車に乗って柏崎駅へと向かう。


車両内を見渡すが蒼の姿はない。別車両かな? まぁ、とりあえず座ろう。


「あっ、柊先輩……」


座った俺の隣にいたのは泊さんだった。


「泊さん、おはよう。偶然だね」


「おはようございます」


蒼が近くにいないからか少し緊張気味のようだ。なにか話して緊張をほぐせればいいんだけど。


「そういえば泊さんって蒼のこと凄く尊敬してるみたいだけど、どういうところが好きなの? 」


「それはもちろんあの冷静な雰囲気ですよ! なにが来ても問題なさそうなあの感じ、とてもかっこよくて憧れるんです!! 」


蒼の話題を振ったら即座に目を輝かせて語るな。


「それと優しいところも好きです! __」


泊さんの生き生きした様子は、学校に着くまで続いた。



学校に着き、ひと足先に体育館でリハーサルを行う。


「在校生代表って言われたら出てきてな」


「もちろんそこはわかっているわ。軽くやってみましょう」


今体育館にいるのは生徒会メンバーの4人だ。他には誰もおらず、そこにあるのは全校生徒と保護者等の使う椅子だった。


蒼は落ち着いた所作で送辞のリハーサルをこなす。これなら本番も大丈夫だろう。


「これなら大丈夫ですね会長! 凄くかっこよかったです!! 」


「えぇ、その言葉は素直に受け取っておくわ」


蒼は泊さんからの言葉を軽く流すと、手を叩いて「撤収」の合図を出す。


軽く確認したかっただけだろうから、このぐらいで終わるのはちょうどいいだろう。


「柊くん、」


帰り際、蒼は俺に話しかけてくる。


「少しだけ勇気をちょうだい」


そう言って手を差し出してくる。


俺は差し出された手を優しく握る。そこから数秒して、蒼がその手を振りほどく。


「……ありがとう、感謝するわ」


足早に戻っていく蒼の顔は見れなかったが、その声色からして満足気なのはわかった。


しっかり蒼音を見せられるといいな。



朝早くからのリハーサルが終わると、各々教室に戻り、卒業式までの時間を過ごす。


俺は時間が余ってしまったこともあり、ぼーっとしてしまった。


「和人おはよっ! 計画の成功が楽しみだね! 」


いつの間にか葉月たちが登校する時間になっていたようだ。


こいつはまだ湊さんに対してのサプライズのことを考えている。そんな上手くいくのかわからないんだけどな。


「和人くん、今日のごはんはお肉にしませんか? おめでたいですし! 」


「ティタニアは何言ってんだ? 」


突然のごはんのリクエストに首を傾げる。めでたいとお肉の関係はないぞ。


「私お肉だったらステーキがいいな。かぶりつきたい」


「私は断然バーベキューです! 網で焼くとお肉の美味しさがより一層引き立ちますから!! 」


2人はいつの間にかお肉トークをし始めていた。好きな食べ方や焼き方なんかを目をキラキラさせながら話している。


今日の献立アジなんだけどな……まぁ、いいか。後で余裕があったらバーベキューしてみるか。


俺は楽しそうに話す2人の声に耳を傾けながら、いつかのバーベキューの予定を人知れず立てておくのであった。

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