130話 サプライズ〔3〕
翌日、俺は朝早くに生徒会室に来ていた。蒼に呼ばれたのだが、実際のところ何をするのかわからない。
「あら、柊くん。早いのね」
俺の後に蒼が来た。手には原稿用紙を持っている。
「もしかしてそれ送辞か? 」
「えぇ、完成したから通して読んでみようと思って。あなたにはその感想をもらいたいの」
あーだから呼ばれたのか。それぐらいならお安い御用だ。
「あぁ、大丈夫だよ」
「ありがとう。じゃあ……いくわよ」
蒼がしっかりと息を吸って送辞を読み始める。彼女の声は透き通っていてとても聞きやすかった。
内容もしっかりとしていて、流石蒼という感じだった。
「__こんな感じなんだけど、感想は? 」
「とてもいいと思う。蒼っぽいよ」
「そう……じゃあこれを提出するわ」
蒼は満足気に原稿用紙をファイルに入れる。
時計を見る。まだまだ早い時間で、教室には誰もいないだろうことがわかった。
「あっそうだ、柊くん……」
蒼は何かを思い出した様にこちらを振りかえる。
「……いえ、やっぱりなんでもないわ」
だが、迷う様に視線をさまよわせ、結局何か言いかけて止まった。
「その言い方は気になるな。相談ぐらいならのるぞ」
強引に聞くことはできないので、このぐらいで留めておく。話したくなったら話してくれればいいし。
「……別に大したことじゃないわ。ただ……あなたならどうするか気になっただけよ」
「何のことだ? 」
「姉との関係のことよ」
あぁそれか。口ではあんなことを言いながらもちゃんと悩んでたんだな。
「昨日はあぁ言ったけど、姉は私のこと確実に嫌ってないわ。積極的に歩み寄ろうとしてる」
「でも蒼は突き放してる? 」
「そうね……意地張ってたらいつの間にかわからなくなってしまったわ。歩み寄り方について」
ちゃんと姉のこと考えていたんだな。力になってあげたい……ただシンプルにそう思った。
「そっか、じゃあ今度話す機会があったらちゃんと自分の気持ちを伝えてみたらいいんじゃないか? 卒業式終わったあとだったら話せるんじゃないか? 」
「そうかもしれないわね……」
蒼は話すことはもうないと言わんばかりに、ひと足先に生徒会室から出ていく。これはしっかりとサプライズを成功させないとだな。
蒼と話したおかげで、計画に対してのモチベーションが上がっていった。
「耀音さんを今度の卒業式に呼ぶ……か。いいだろう、連絡を取ってみよう」
その日の放課後、部室に湊さんを呼び、蒼に対してのサプライズの話をする。
湊さんは快諾してくれた。あとは耀音さんがその日空いていれば問題ないな。
「やりましたね! これで蒼ちゃんをびっくりさせることができそうです!! 」
ティタニアは満面の笑みで喜んでいる。
「そういえば話変わるんですけど、湊さんって耀音さんと普段から連絡取り合ってるんですか? 」
「緋色、お前には罰が足りなかったようだな……!! 」
葉月がそんなことを聞くから湊さんが怒ってしまった。どんだけ気になるんだこのこと。
葉月は湊さんから距離をとり、「じょっ、冗談ですよ〜」とその怒りを鎮めようとする。
「ふん、俺が卒業する前にもう一度くらい説教の場を設けておくべきだな」
「えっ!? それはやめてくださいよ! 」
葉月は凄く焦りはじめた。前に説教くらってるから怖さはわかるんだろうな。
「……まぁ、それはともかく、この件の具体的なことはお前らに任せるぞ。蒼音のことを知っているのは和人、お前だろうしな」
「はい、任せてください」
話が終わると湊さんは帰っていく。これで条件はほぼ揃ったわけだし、こっちも気合い入れないとな。
「ねぇねぇ和人」
湊さんが帰った後、葉月が声をかけてくる。
「なんだよ? 」
「これであっちの方もいけそうだね」
「いや、何のことだよ? 」
訳がわからず首を傾げる。葉月はニヤニヤしながら、
「湊さんと耀音さんの仲を近づけてあわよくば恋人同士にならせちゃおう大作戦」
そんなことを言い出した。もしかして湊さんに対してのサプライズってそれ?
「湊さんへのサプライズってそのことかよ」
「うん、もち! あとは久木野瀬先輩に寄せ書きと花束あげる予定」
湊さんもそういうのでいいんじゃないのか? そんなことしたらまた説教くらうぞ。
「いや〜いいですよねそういうの! 私は好きですよ! 」
あっ駄目だ……ティタニアまで同意しはじめた。見ると他にも秋穂と花火も賛成っぽいし止めるの難しそう。
「まぁいいんじゃない? 口では厳しいこと言ってたけど、内心じゃ耀音さんに気があるのバレバレだし。ちょうどいいサプライズよ」
「俺は面白そうなんで賛成ですよ」
「睦月はブレないなほんと……」
千華の賛成には驚いたが、心読めるししてほしそうだと感じたからの賛成なのだろう。
「よしっ、過半数! じゃあ決まりね!! 今後は3つの計画を同時並行で進めていくから対象にバレないように注意してね」
「「おぉ! 」」
やると決まったわけだし腹くくるしかないか。
今日の部室内はいつも以上に高めのテンションで満たされていた。




