122話 行動〔1〕
次の日、 苅田の動向を千華と冬が探り始めた。俺は葉月の傍を離れないようにしている。
相変わらず葉月は元気がない。それに加えて、今朝にはまた新しい新聞が貼られていた。
内容としては確証のある情報がなく、よく見れば嘘であろうことがわかる。
だが、1面の中に寒気を感じる内容があった。この学校では俺と葉月しか知らないであろう事実が隠れていたのだ。
一体この情報をどこで……そう考えている暇もなく動く。葉月の手を握ってすぐにその場から離れる。
あのことを考えるのは後でもできる、今は葉月のことを考えないと。
俺たちは教室まで来ると、葉月の隣の席であるティタニアに一旦バトンタッチをし、新聞を剥がしに行く。
いつまでも貼られていると迷惑だし、葉月自身もいい気分ではないだろう。
新聞を剥がしに昇降口に行くと、1人の生徒と鉢合わせる。
「苅田……」
女子で高身長、身長は170を超えるだろうか。
バスケ部に入っていることもあり、日焼けした肌や筋肉のついた手足が特徴だ。
苅田は壁に貼られた新聞をじっと見ていた。
「柊じゃん、犯罪者のお守りも大変だね」
苅田はこちらに気づくと、毒のある言葉を吐いてその場を離れる。
やっぱりあいつが怪しく見えるな……葉月に対しての言動にはいつも棘を含んでいたから。
とはいえ、証拠がなければただの言いがかりだ。あっちには部活もあることだし。
そういえば、苅田は朝は部活があるから、仮に犯人だとしたら新聞は貼れないな。てことは放課後の、それも夜か……?
そう考えていると、予鈴がなる。早く新聞を処分して戻らないと。
教室への帰りは急ぎ目で進んだ。
戻ってくると、いつも通りの授業が始まる。
とはいえ、葉月の様子が気になってしまい視線がそっちに吸い寄せられてしまう。
葉月は後ろ姿だけを見ると大丈夫そうだ。だが、それで授業に集中できるかと言われると、集中できていなかった。
葉月の感情がいつ爆発してしまうかわからないので、精神的なケアをこまめにしないといけない。のだが、授業中は俺が近くにいてやれないので言葉をかけてあげることができない。
だから隣のティタニアに任せているのだが、不安だ。ティタニアの言動ではなく、葉月自身に届いているかの問題で。
しっかり届いているといいんだけど……
放課後、俺は理事長室へと足を運んだ。天夜さんと話すためだ。
天夜さんはちょうど仕事の休憩中だったようで、すぐに話ができた。
「__なるほど、今回の事件の犯人探しを手伝ってほしいってことか」
俺は天夜さんの力を借りて犯人探し、もとい証拠探しをしようと思っていた。
だが、
「すまない、その件に関して僕はなにもできない」
帰ってきたのはその言葉だった。
「えっと、理由を聞いても? 」
「色々あってね……すまない」
天夜さんに協力してもらえば早く解決すると思っていただけに、ショックが大きい。
この件は俺らで頑張るしかないな。
「あーでも、僕が前に出なければ一度だけ可能かな」
「……? 」
天夜さんから気になる言葉が飛び出したが、意味はわからないし、聞けそうにもないので頭の隅に置いておいた。
「それじゃあこの件は俺らだけでなんとかしますね」
「ほんとにすまないね」
「いえいえ、安易に協力を求めた俺に非がありますし気にしないでください。それに、ちゃんと信頼できる仲間はいますから」
PSY部のメンバーが頼りになることは十分にわかっていた。
「それじゃっ、失礼しました」
俺は天夜さんに一礼して理事長室を出る。あとは帰るだけだな。葉月は千華と一緒にいるとはいえ、爆発したら怖いから早く帰ろう。
その帰り際、ふとスマホを見ると、『34 3D 2C 16 17』というよくわからないものがメールで送られていた。
差出人はわからない。なんだこれ……
俺は不安感を抱きながら帰り道を進んで行った。




