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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
緋い記憶
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121話 葉月のために

私には罪がある。幼い頃に犯してしまった重い重い罪が。


あの時からだった……私が自分の容姿を、能力を嫌いになったのは。鏡を見る度にあの時を思い出し、胸が締め付けられ力が入らなくなる。


それでも、幼なじみの彼に励まされ、お姉ちゃんとお兄ちゃんにあって変われた。そう思っていたのに……


結局はただ押し殺していただけだった。思い出さないように何重にも蓋をして、自分が克服したと勘違いしていただけだった。


思い出すは緋色の記憶、簡単には拭えないほどの血の罪__




次の日、葉月は昨日のよりは元気になった。とは言っても普段の彼女からすると元気のない部類に入るのだが。


俺は不安定な葉月と1日一緒にいた。時折クラスメイトが心配する声をかけてきたが、そのどれにも葉月は元気のない声で答えた。


クラスメイトも昨日のあの新聞が原因なのは知っている。が、その中であの情報を信じている人はどのくらいいるのだろう? 葉月がこの様子だから数人いてもおかしくない。


早く解決しないと……



放課後、俺たちは部室に集まってこれからのことについて話し合う。葉月は精神状態を考えて、冬にテレポートで家に送ってもらった。


「__てことでだ、葉月がこんな状態じゃ駄目なのは全員わかっていると思うから、力を貸してくれ」


「貸してくれっじゃないですよ。見つけるぞっが正しい言葉ですよ先輩。葉月先輩の為っていうか、ここの部員の為なら動くのは当たり前じゃないですか」


俺の言葉に秋穂は頼もしいぐらいの返事をくれる。花火や冬など他のメンバーも、当然だと言わんばかりに首を縦に振る。


「それで先輩、犯人の心当たりとかはありますか? あの新聞は筆跡からバレないようにパソコンで作られていましたし、手がかりがないとすぐ見つけるのは難しいですよ」


睦月の言葉に俺は頷く。


「ある……というかその人しかいないって思ってる」


「それならすぐ解決しそうですね! 」


ティタニアの嬉しそうな言葉の後に「でも、」と続ける。


「でも、証拠がない。相手に認めさせるほどのものがないんじゃ駄目だ」


「確かにそれだとずっととぼけられますね。認めさせなきゃ勝ちじゃない」


「あぁ、それに葉月がこの状態じゃ悪質な冗談で流すこともできない。だからこそ、証拠が必要なんだ」


葉月が依然あの状態だと、無理やりの解決ができない。あいつを元気づけるのはもう少し後でいい。


「それでだ、みんなにはある生徒の情報を集めてもらいたい。2年D組の苅田麻友(かりた まゆ)って生徒なんだけど」


「それが犯人候補なの? 」


千華の言葉に静かに頷く。


「ちょっと中学時代に色々あってな。一番怪しい人物だ。できれば尾行とかしてもらいたいんだけど……」


俺はそこまで言って口ごもる。千華たちは普通に目立つし、秋穂たちも尾行とか向かない気がする。


「……一番マシなの睦月だから頼める? 」


「えぇー私やりたかったです!! 」


ティタニアが腕をブンブンと縦に振りながらこちらにアピールしてくる。


「ティタニアは一番駄目だろ。こういうの苦手そうだし、なにより方向音痴だろ! 」


「助手がいれば大丈夫ですよ! 私は仕事で尾行とかやる時あるんですから」


「たまにですけど」とその後に続いた言葉のせいで台無しだ。銀戦教会って物騒な組織に所属しているし、尾行のスキルもあるのか……?


「ティタニア先輩に任せればいいんじゃないですか? 俺は久木野瀬先輩と一緒に調べるので」


「えっ、睦月お前、伊月先輩に声掛けてたの? 」


「えぇ、なにかと力が必要かと思ったんで」


睦月の行動力に感謝しつつ、これからのことについて話をする。なるべく早く解決しないとな……


「__とりあえずはこんなところか。こんなことは証拠突きつけてとっとと止めさせるぞ」


話が終わると皆それぞれに動く。帰る者もいれば残って駄べる者もいる。


「和人、帰らないの? 」


「あーうん、少し話をしたい人がいるから」


今日のうちに話だけでもしておきたい人がいた。


「そう、だったら私はここで待ってるわ。終わったら連絡して。すぐに行くから」


「ありがとう、行ってくるね」


千華と話し、部室を後にする。そこから歩いて向かった先は、生徒会室だった。


「蒼、いるか? 」


「いるけど、どうしたの柊くん」


生徒会室には蒼と泊さんがいた。


「いやちょっとな。俺これから少しの間葉月につきっきりになるから生徒会に出れないんだけど、人足りるかなって」


「足りないけど」


蒼は不機嫌そうにこちらを見る。


「まだ活動始めてそこまで時間経ってないし、卒業式での役回りや新入生への部活動紹介を考えなきゃなんだけど」


「ほんとごめん、忙しい時に」


「別にいいわ、緋色さんのことなら認めないわけにはいかないし」


蒼はテーブルに積まれているプリントから数枚とってこちらに渡す。


「あなたの大事な幼なじみでしょ? しっかり助けてあげなさい。私の時みたいに」


「……ありがとな、このお礼は絶対する」


「そう、それは楽しみね」


「あの〜会長、となると仕事の分担はどうなるんでしょうか? 」


疑問に思ったのか泊さんが蒼に質問する。蒼は「あぁそれなら……」とこちらを見る。


「柊くんが簡単な作業はほぼやってくれるわ。一人でもできる仕事を容赦なく割り振るから覚悟しておいて」


「わかった……2人に負担かけちゃうのも駄目だしな」


俺が抜けると単純に残りの負担が増えるし、蒼がしっかりと仕事を振ってくれるのはありがたかった。


申し訳ない気持ちが強かったし。


「あと夢宮さんも多少抜けることを考えると調整が必要ね。考えておくわ」


冬も今回の事件解決に動くことを読まれていた。まぁ予想はされるよな……


「じゃあ早く緋色さんを元のように元気にしなさい。そして1日でも早く生徒会に復帰しなさい」


「わかってるよ蒼……ありがとな」


俺は蒼に小さくお礼を言うと生徒会室をあとにする。


葉月を早く元気にしてあげないとな……


その想いは一歩踏み出す度に少しずつ大きくなっていった。

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