表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編①
12/171

12話 東雲の不良校~後編~

  覚悟を決めると扉に手をかけ開ける。


  するとその中は広々とした空間で、普通の教室よりも大きい部屋だった。元々は何の部屋だったのだろうか?


  また、中には奥にソファがあるだけで他には何もなかった。ソファにはリーダーと思わしき男が座っている。その男は特徴的な髪型で、言ってしまえばトサカヘッドだった。


「おや?珍しい客人だな。まさかお前が来るとは……伊月。」


「久しぶりだな透、お前がここのボスか?」


  どうやら久木之瀬先輩とトサカさんは知り合いのようだ。


「まぁそうだな。俺は最近前のボスを倒しここの頂点に君臨した。長かったんだぜ~この悲願を達成するのは……せっかく来たんだから少しは祝福してくれよ。」


「悪いがそんなことはあとだ。最近ここの生徒がうちの生徒に対してカツアゲ行為を行っている。透、お前がリーダーなら話は早い、今すぐやめさせろ。」


  へらへらとしている透と呼ばれた相手に対して、久木之瀬先輩は厳しい顔を崩さない。


「あーそうなの?知らんかったわw」


  「しらを切るな。そちらの生徒を一人現行犯で取り押さえさせてもらった。そいつの口から首謀者の名前を聞かせてもらった。……お前の名前をな。」


「ちっ、ヘマしやがって……。まぁいいや、今こうしてお前がここにいるわけだしな、伊月。」


  透さんは人の悪い笑みを浮かべて久木之瀬先輩を見る。


「お前の目的は俺か?」


「もち。柏崎の生徒をカツアゲして、風紀委員長であるお前をここに誘い込むのが俺の目的だったんだよ。まっ、なんにせよ結果オーライだったな。」


「外道が……」


「まぁそんな怒んなよ伊月、これを機にカツアゲはやめてやるよ。ただし……」


  透さんが何かしらの合図を送った瞬間、後ろの扉が開き、大量の不良学生が押し寄せてきた。


「潰させてもらうぜ。」


「……ちっ、最初からこれが狙いか。」


「最初から話し合う必要がないのはちょっとな……」


「ひゃはは、にしても無謀だなお前ら。三人だけで来るとは。」


「風紀委員=喧嘩が強いわけではないからな。」


「で、どうします?この数。」


  俺は半身に構えながら二人に聞く。


「俺と先輩で雑魚をやりましょうか。敵の頭は久木之瀬先輩に任せましょう。」


「了解。」


  前方から襲ってくる不良二人を見据える。殴りかかってくる一人をいなし、二人目の大振りの殴りにあわせてカウンターを打ち込む。その後に、斜め後ろからくる一人目の殴りをしゃがんでかわすとすぐさま左の回し蹴りを相手の側頭部に叩き込む。


「お見事です。」


  睦月は俺に向かってニコッと笑う。そのそばには不良たちが五、六人倒れていた。睦月は自由に楽しそうに戦っている。彼は容赦なく戦っているようで、ばったばったと敵をなぎ倒している。


「そう言うお前だってすごいけどな。」


  そんなことを言いながら向かってくる一人を難なく倒し、武器である鉄パイプを奪い取る。そしてすぐさま明後日の方向に水平に投げる。ブーメランのように投げられた鉄パイプは今まさに俺に攻撃しようとしてきた敵に当たる。


  にしても敵多くね。思わず心の中でため息をつく。敵を倒せば倒すほど足場が悪くなるな……主に敵の体で。


  しばらくの間戦いは続く………





  あれから何分たっただろうか……気づけばなだれ込んできた不良たちは一人を除いて全員倒れていた。


「はぁはぁ……これであらかた片付いたかな?」


「そうみたいですね。あとは一人だけです。」


  いつもの余裕そうな表情を崩さない睦月も、敵が多かったせいか少しばかり負傷していた。かくいう俺もあちこちが痛く、無傷というわけではないが。


「はぁ……?おかしいだろお前ら!あの数をたった二人で切り抜けたのか!?化け物が……!」


「化け物で結構ですよ。それよりも、」


「あぁ、それよりも、あとはお前だけだ透。」


  久木之瀬先輩は透さんへ鋭い視線を送る。


「サシでやろう、透。」


「くそっ、だったら俺一人でもお前を潰してやる!」


  透さんは鉄パイプを持って久木之瀬先輩の前に立つ。久木之瀬先輩も構える。二人の緊張感がじりじりと高まる。


  そして次の瞬間、どちらも一緒のタイミングで動いた。


「伊月ーー!!」


  そう叫ぶ相手の鉄パイプと久木之瀬先輩の拳が交差する。どちらも攻撃が当たっているが、久木之瀬先輩は肩に当たったのに対し、相手は顔面を完璧にとらえられ倒れる。


「……俺の勝ちだ。」


「クソっ……やっぱり勝てねぇのかよ。」


「これを機にこんなことはやめるんだな。」


  久木之瀬先輩は厳しい顔で言う。


「分かってるよ!!チクショウ……」


  透さんは苦々しい顔になって歯をくいしばる。


「……だが、俺に対しての決闘ならいつでも受けよう。」


  去り際にそう言う久木之瀬先輩に対して、

「聞いたからな……いつか絶対潰してやる…!」

 透さんは泣いてるのか、手で顔を覆いながら叫ぶ。


  俺はそんな二人を目の当たりにしながら部屋を後にした。




  空はもうオレンジ色になっている頃、電車に乗って家路につく。


  ふと窓から夕焼けを見ると、雲ひとつない空にまぶしい夕陽が浮かんでいた。


「そういえば久木之瀬先輩、さっきの人と知り合いだったんですか?」


  睦月は笑顔で質問する。それは俺も気になってた。


「……あぁ、中学からの知り合いだ。あいつ、透とは知り合った頃からなにかとあいつから勝負を挑まれることが多くてな……。あいつは俺との勝負に一度も勝っていない。高校は俺に勝つために自ら東花丸に行ったと聞いている。」


「そうなんですね。」


「まぁ何であれ透とはいいライバルだったと思う。だから、あいつが俺との勝負のために他の奴に手をだすというのなら俺が止める、それだけだ。」


「いい関係ですね。ライバルがいるのは羨ましいです。」


「俺からも質問いいですか?」


「……どうした?何が聞きたい。」


「単純に気になったんですけど、久木之瀬先輩ってどうして喧嘩が強いんですか?」


「俺も興味あります。」


「それか……俺も知らん。小さい頃から喧嘩をしていたらいつの間にか強くなっていた。」


「いや……完全にそれが原因じゃ?てか小さい頃から喧嘩って……すごいですね。」


「和人や睦月ほどではない。詳しくは知らないが、お前らは過去に色々あったようだしな。」


「まぁ……そうなんですかね?俺はともかく睦月も訳ありなのかよ?」


「そうですね。ちっぽけでつまんない過去ですけど。」


  睦月にもキズがあったのは驚いた。気ままに生きてキズなんて無いように思ってた。


「天夜さんが言うには、PSY部の大半はキズを持ってるらしい。ひどいのは二年組らしいが。」


「あー、そうかもですね。」


  確かに俺や葉月にはキズはあるし、千華にも深いキズがあるっぽいからな。冬にあるのかは分からないけど。


「一年には睦月の他にいんのかな?」


「いないですね。秋穂は親に甘やかされてますし、花火は親と仲良いしあの性格ですし。」


「……なんか納得できるわ。」


  あの二人なら大丈夫だとすぐに納得してしまう自分がいる。睦月以外の一年は平和そうだ。


「和人に睦月、今日は改めてありがとう。お前らがいなかったら少し面倒なことになっていた。」


  久木之瀬先輩の口から改めて感謝の言葉が述べられる。


「今日は楽しかったですし全然大丈夫ですよ。」


「俺が問題解決の役に立てたのは嬉しいんでこのぐらいお安いご用ですよ。」


「そうか……」


  久木之瀬先輩は微笑を浮かべる。


「というか久木之瀬先輩、結構感謝の言葉言い過ぎでは?」


「……すまない、少しくどかったか……気を付けよう。」


「俺はいいと思うんですけどね。感謝を伝えるのって大事ですし。」


「先輩方って結構義理堅い感じですか?俺はそんなに何度も伝えるのは変な気がして。」


「そこに関しては好みだろうな。まぁなんにせよ、感謝はしっかり伝えなきゃだけど。」


  そこからは雑談で盛り上がり、ゆったりとした楽しい時間を過ごす。


  やがて先に睦月が帰るために電車を降りて、俺と久木之瀬先輩の二人になる。


「……和人、そういえば天夜さんが終業式に理事長室に来てほしいと言っていた。来れるか?」


「行けますよ。特に予定はないですし。」


「……そうか。では行けると伝えておこう。」


  そう言うと、久木之瀬先輩はスマホをいじり始める。どうやら天夜さんの連絡先を持っているようだ。


「あっ久木之瀬先輩そろそろ降りる準備しないとですね。」


  電車は柏崎駅に到着しようとしていた。


「……おっと、もうそんな時間か。それじゃあ和人、また学校で。」


「はい、今日はお疲れ様でした。」


  俺は久木之瀬先輩と挨拶をかわすと、電車を降りていく彼を見送る。


  今日は大変だったな……


  改めて今日の出来事に思いをはせる。他校に乗り込んで、そこで不良と喧嘩して勝つ。普通の学生生活では絶対しないようなことをしたな。


  この経験って貴重なんだろうか……?そんなことを思いながら葉月に連絡するためにスマホを起動するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ