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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編⑤
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117話 バレンタイン~後編~

蒼音さんが乗せたそれは、平べったいもので、簡単に言うと板チョコだった。


やっぱりか! 和人、変な反応しないでよ……?


「貰っていいのか? 」


「まぁ……あなたには色々と借りをつくってしまったし、偶然持っていたからあげるわ」


蒼音さんにしては珍しく頬を赤く染めている。完全に脈アリのそれだ。


「ありがとな、お返しになるけどよかったらどうぞ。チョコクッキー作りすぎちゃったからお裾分け」


「いらないわ」


「えっ……? 」


蒼音さんは彼からのお返しを拒否した。私は疑問符が増え続け、思わず声が出てしまった。


「あなたからのお返しはホワイトデーでいただくわ」


「あぁ、そういう感じね」


「さらにこっちから指定させてもらうわ」


えっ……なにやら不穏な空気。これは無理やりにでも止めに行くべきかしら。


「私からの指定はそうね……ふ、」


「あっ和人くん見つけました! 」


私がなにか行動を起こす……までもなく、ティタニアがいきなりぶった斬った。


「どうしたんだ? 」


「ふふん、チョコを作ってきたのであげようと思って来ました! どうぞ! 」


彼はティタニアからチョコを受け取る。今のあの子、完全に空気読めない子になってる。蒼音さんの目が怖い。


「ありがとう、ティタニアも作ってたんだな」


「そりゃそうですよ。だって和人くんにはお世話になってますし、弟ですし」


「はぁ? 」


「その話はまじでするな、ややこしくなる」


蒼音さんの威圧感に彼が震える。まだティタニアは気づいてないようだ。早く離れなさい、死ぬわよ。


「食べたら感想くださいね! あとあと、ホワイトデーに美味しいお返しをくれると……あっ、」


ようやく気づいたティタニア。蒼音さんから漏れだす殺気のようなものに顔を青くする。


「私はひと足先に教室に帰ってますね! すみませんでしたー!! 」


ティタニアは逃げるようにしてその場から去っていく。


「……はぁ、ティタニアさんは本当にブレないわね」


「あーうん、だな。悪気はないから許してやってくれ」


「ならその分はあなたに払ってもらうわ。柊くん、ホワイトデーの16時から17時の時間空けときなさい」


なっ、もう予約を!?


「あっうん、わかった」


そんなに軽々しく了承しちゃ駄目よ和人! なにされるかわからないんだから!


「それじゃもう用はないわ。精々チョコでも味わっておきなさい」


蒼音さんはスタスタとこちらの方面に歩いてくる。あっこれって……


「……」


「……」


鉢合わせするやつだ。今バッチリ目があって気まずい。


「雪原さん、いつからいたの? 」


「えっと……最初から」


「そう……それじゃあ、そういうことだから。ホワイトデー、1時間借りるわね」


蒼音さんは顔色ひとつ変えず、去っていった。完全に挑発されていると考えていいのよね!? 彼は絶対渡さないから。


私はハッとする。そんなことを考えている場合ではなかった。早く和人にチョコ渡さなきゃ。


私は急いで和人の背中を追う。すぐに気づいたことが幸いして、彼との距離はそこまで離れていなかった。


「ねぇ、ちょっといい? 」


私は彼の学ランの背中部分を摘むと、話があると訴える。


「大丈夫だよ、ちょっと場所変えようか」


彼は微笑むと私の手を引っ張って移動する。着いたのは特別棟近くの人気のない場所だ。


「なんか、察しいいのね」


「千華の顔を見たらそんな気がしたからさ」


彼は私の気持ちをわかっていたようだ。……嬉しい。


「その……これあげる。今日バレンタインだから」


私はチョコを取り出して彼に渡す。仁美さんに教えてもらいながら、納得のいくまで作り続けたチョコ。喜んでくれるかな……?


「ありがとう、凄く嬉しいよ」


彼はとても嬉しそうに笑って受け取る。私はその顔をまともに見ることができなかった。今顔が熱くてまともに顔を見せられないから。


「それっ、結構自信あるから期待していいわよ」


「そうなんだ……今食べてもいい? 」


「いいけど……もうすぐ5時間目始まっちゃうわよ」


「少しだけだから大丈夫」


彼は包装を丁寧にはがし、チョコを1つ取り出す。そしてそれを口に入れると味わって食べる。


「うん、一番美味しい」


彼からの褒め言葉、たった一言だけなのに、私には泣きそうなほど嬉しかった。


「ねぇ……5時間目サボらない……? 」


「急にどうしたの? 流石にそれは駄目だって」


「……でしょうね。ただ言ってみただけ」


勢いで出てきてしまった言葉を上手く濁す。


「……和人、ちょっといい? 」


「どうした__」


私は彼の唇に自分の唇を重ねる。時間としては1秒ほどだが、それ以上のインパクトがあった。


「えっ、ちょっ、急にどうしたの!? 」


「愛情表現だけど? 私は和人のことこれでもかってくらい愛してるんだから、他の女に揺れないでよね」


私は仁美さんから教えてもらった通り、自分の気持ちをしっかりと伝えた。すっごい恥ずかしい……


「きゃっ、」


「揺れるわけないだろ……俺は千華のこと誰よりも愛しているんだから」


彼に突然抱きしめられる。彼の指は私の耳を刺激して変な気分になってしまう。力抜ける……


私たちの世界を予鈴が壊す。我に返った私は、彼を振り払って教室に走って帰る。


そういえば和人ってあういうの平気でできるんだった。ホールドキスとかがいい例ね。


でも……あぁ言ってくれたことは嬉しかったな……



私は幸せな気持ちと真っ赤な顔で教室へ戻った。もちろんこの後、顔が真っ赤なことについてクラスメイトから追求されたことは想像にかたくない。

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