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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編⑤
115/171

115話 お悩み相談~裏~

空気はひんやりとしているが、お昼をまわったこともあってか人の流れが多くなってきた頃、俺はあるカフェにいた。


店内はそこそこ盛況で、席の8割は埋まっている。暖房効いてるし、こういった場所でゆっくりしたい気持ちはわかる。


俺の目的は全く違うんだけど。


「和人注文どうする? 」


俺がぼんやりとしていると葉月に引き戻される。今回の葉月はお客としてではなく、このカフェの店員で来ている。


そう、ここは葉月のバイト先なのだ。


「うんじゃあコーヒー」


「はいよ」


若干軽いなと思いながらも聞き流す。今回の目的は葉月の様子を見に来た……のではなく、

「晴哉さんはどうします? 」


「そうだな……じゃあレモンティーで」


「私チーズケーキとカフェオレ! 」


先輩たちに呼ばれたから来たのだ。メンバーは俺、晴哉さん、千歳さんでお送りします。


「了解、ちょっと待っててね〜」


葉月は注文を取り終わると早足で厨房の方へ戻って行った。


「あの、ひとまず来ましたけど、ここに来た理由をまだ深く聞いてないんですけど」


俺はひとまずお2人に説明を求める。


思えば今朝、いきなり千歳さんからlineがきたと思えば、ここに集まることになっていた。文面を見る限り、晴哉さん絡みなのがわかったけど。


「そのっ、実はな……今日ここに仁美が来るんだよ。和人の彼女さんに会いに」


「千華にですか? それとなんの関係が……? 」


よくわからない。あの2人が仲のいいことは知っているし、そこに違和感はないのだが。


「……いや、単純に気になるから来たんだよ。なんか相談にのることになったって言ってたからさ……その、うん、察してください」


おそらく心配になったのだろう。「自分は果たして上手くやれているのだろうか? 」、みたいな。気持ちはわかります。


「晴って心配症だよね〜、私はヒッキーに好かれているという確信があるよ! 」


「どっから出てくんのその自信」


「天から……かな? 」


「まさかの賜り物!? 」


晴哉さんと千歳さんの息ぴったりのやり取りに空気が和む。


あれ……待てよ……? 千華がいるってことは能力でバレるんじゃ?


そう思ったのも束の間、葉月が注文した品を持ってくる。


「はいお待たせ〜」


「ありがと葉月、バイト頑張って! 」


「ありがとう。もちろん頑張るねお姉ちゃん! 」


千歳さんからの応援に、いつもよりもテンション高めで応える葉月。葉月には話しておかないと。


「なぁ葉月……仁美さんたちの様子を確認するのはいいとして、千華が来るんだから能力でバレると思うんだけど」


俺は葉月に小さな声で話しかける。


「普通にやったらバレるけど、ちょっと工夫したらバレないよ大丈夫」


葉月は策ありといった様子だ。その言い方だと千華の能力の穴をつくってことだよな。具体的にどんなのがあったっけ……?


「千華の能力ってさ、本人が集中すると範囲が狭まるよね? 今回和人のことで相談するみたいだし、真剣な相談だからかなり狭まると思う」


「なるほどな……」


「それに、普段から凄い五月蝿いのが聞こえてるんだから聞きたい声以外は無視してるはず。それなら多少声が漏れても問題ないよ」


葉月の考えに思わず感嘆の声を漏らしてしまう。そこら辺はしっかり考えてたんだな。


「2人でこそこそどうしたの? 」


「いや、仁美さんたちの席はここから遠めでいいよねって話をしてたの」


さっきまでの話を悟られないように、それっぽい話題で誤魔化す。


晴哉さんたちは能力のことを知らない。信頼できる相手だが、どうにも言えないことだった。


もし話してそこから他にまで漏れたら……あるはずないが最悪の事態が頭をよぎる。


「だよね〜近いとバレるかもだし遠めでいいよね〜」


千歳さんはその話題に乗ってくれた。少しひと安心。心の中でホッと息をつく。


「あっ、千華さん来たよ」


晴哉さんの言葉が耳に届いた瞬間、ばっと顔を入口方面に持っていく。


そこには淡い化粧に落ち着いた大人の服装の美しい女性が立っていた。茶髪で髪は後ろでひとつ結んである。千華だ、今日は一段と綺麗だ。


「じゃあ行ってくるね」


「あぁ、行ってら」


千華の元へ葉月を送る。葉月は俺らの席から遠く、それでいて状況を確認可能な席へと案内される。


「やっぱ綺麗だよね千華ちゃん。自慢の彼女なんじゃないの和人? 」


千歳さんがこちらを見てにやにやしている。


「まぁそれはそうですね。ほんとにいい彼女をもらえたと思ってます」


千華は優しいところがあるし、ほんとにいい子だと思う。


千華の魅力を再認識していると、今度は仁美さんが入ってきた。


「あっひとみんだ。くっそ可愛いな」


「当然だろ、天使みたいな可愛さしてんだから」


「私今日2人の惚気(のろけ)聞かされてる。私もいちゃつきたいな……」


千歳さんの言葉は流しつつ、仁美さんと千華の席へ目を向ける。ひとまずは楽しそうに話しているようだ。


「とりあえずは楽しそうですね」


「だな、最初だからってのもあるんだろうけどよかった」


晴哉さんはほっとした様子で息を吐き、レモンティーを啜る。仁美さんは凄くいい人だし、心配しすぎな気もしてしまう。


「定期報告ね、今千華が和人の心を離れさせないためにはどうすればいいのかを相談してる」


「へぇ〜よかったじゃん」


千歳さんはニヤニヤしながらこちらを煽るように見てくる。そういえば厄介な人間がいたな。


「……そうですね、それだけ思ってくれているのは嬉しいです」


「ちなみに私からのアドバイスね。大切にしたい相手なら快楽堕ちさせればいいよ。レッツ子作り」


「やめましょうそういうの……洒落にならないので」


いきなり爆弾落とすのやめてください。どう反応すれば正解なのこれ。


「なんか仁美が照れてる……可愛い」


「それなら私たちでなんか奢る? あちらのお客様からですみたいなやつ」


「えっ、それバレない? 」


晴哉さんの問いに千歳さんは「だいっじょーぶ」とサムズアップする。


「葉月に上手いこと言ってもらえば問題なし」


「葉月に負荷をかけるなお前は……」


「あっ葉月ちょっと、」


ちょうど傍を通りかかった葉月に話しかける。千歳さんはフルーツゼリー2人前を千華たちのテーブルに注文した。


「了解だよお姉ちゃん! 」


「支払いはこの2人がやるから」


「だろうと思った……和人悪い、少しお金出してくれ」


「了解です」


俺たち2人は財布からフルーツゼリー用のお金を出しておく。これだけはきっちりと用意しておかないといけない。


「じゃ行ってくる〜」


葉月は軽いノリで千華たちの所へ行ってしまった。変なことしなきゃいいんだけど。


「なんかあいつ話してるな」


「ですね、失礼なこと言ってなきゃいいんですけど……」


葉月に限ってそれはないだろうが心配だ。仁美さん、笑顔だし大丈夫そうだな。


「ねぇねぇ晴、後でヒッキーとご飯行こ」


「あぁいいよ。なに食べんの? 」


「鉄火丼! 美味しそうなとこ見つけたから」


「へいへい」


2人ってほんとに仲いいよな。流石は幼なじみというか。


「お兄ちゃん、嬉しい報告! 仁美さんがお兄ちゃんのこと頼りにしてるって」


「それ聞いてたのかよ!? 」


「やっぱお熱いね〜、もう結婚しろよお前ら」


顔が赤くなる晴哉さんを千歳さんが茶化す。それに対抗して、晴哉さんは千歳さんの頭を軽くチョップする。


「あんま茶化すな」


「やーいお前ら2人焼肉とサンチョー」


「どういう例えなのそれ!? 」


この2人を見ているととても和む。面白くて優しい空気を纏っているから。


「和人もさ、千華の思いにはちゃんと応えてあげなよ? 」


俺の幼なじみからそんなことを言われる。それは重々承知していることだけど、今一度胸に刻みこもう。



休みの日の午後、この時間はあっという間に過ぎていくのであった。

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