111話 選挙結果
演説の時間が終わり、各自投票をしていく。
葉月たちの影響は凄まじく、多くの表が動いているようだった。
でもこれで絶対勝てるってわけでもないよな。全然負ける可能性あるわけだから安心できない。
その後、6時間目が始まったがどうにも集中できなかった。蒼音は……そわそわしてなさそうだな。
俺が当選するわけじゃないのにここまでそわそわするのは不思議だ。開票結果はまだまだ先なんだから落ち着かなきゃな……
そして、6時間目が終わり、ホームルームを経て放課後になる。俺は急いで生徒会室へと向かう。
生徒会室に入るとまだ蒼音は来ていなかった。結果はここで聞くと約束していたから急いで来てしまった。
ちゃんと勝負になってるって、ほんとにあれが上手くいったんだな……俺は昨日の出来事に思いを馳せる。
__昨日
「あなたにしか頼めないことよ……緋色さん、雪原さん、ティタニアさんに協力をしてくれるように言ってほしいの。私たちの演説が終わった時に『応援してる』、その一言がほしいの」
「なるほど……影響力のある葉月たちを使ってできるだけ票をこっちに動かすんだな? でもそれって反則なんじゃないか? 」
「ズルかは知らないけど違反ではないわ。だってただ個人意志を発しただけだもの。よくあるでしょ、友達同士での雑談で誰に投票するってやつ」
言われてみればそうだな。別にあの時なんかは誰かに頼まれてってわけではないし、葉月たちが元々そのつもりなら問題ないのか。
「それにたかが学生選挙よ、そこまで厳格にやる意味ないわ」
「一言余計だろ」
そこまで言うなよ。
「影響力の強い緋色さんたち、そんな人が意志を示せばついていく人は少なからずいるわ」
誰に投票するのかをしっかりと決めていれば流れないが、恐らくとりあえず誰でもいいから投票って人は数パーセントはいる。その生徒たちを利用しない手はないってことだろう。
「あとは私たち次第ね。演説をしっかりとしないと勝てないわ。だからこそ帰ったら言う内容の確認をしておきなさい」
「そこはちゃんとわかってるよ」
蒼音からプレッシャーをかけられる。ちゃんとやらなかったら怒られるじゃすまないだろう。言われなくてもやるけど。
__うん、作戦は上手くいったな。あとは結果がついてくるかどうか。
「柊くんもう来てたのね」
蒼音が入ってくる。その表情は結果を気にして曇っているわけではなく、いつも通りの凛としたものだ。
「おつかれ、なんつーか作戦は上手くいったな」
「強いカード使ってるし当然よ。大富豪で2と1を独占してるようなものだし、勝てる確証があるわ」
言い切った……相変わらず凄い自信だな。
「確かに多田くんは言い出しっぺで最初に動いたけど、だからといって全員が多田くんを支持するわけではないわ。とりあえずで出す人いるしね。
そういう人は影響力の強い人の言葉で簡単に引き寄せられるわ。そこに自分の意思が関わってないから」
「そういえば、蒼音が話したことって謝罪だけだったけど、なにか意味あるのか? 」
「もちろんよ。私のイメージ的に丁寧で真剣な謝罪をするなんて思われてないと感じたの。だからその逆のことをして印象づけさせてもらったわ」
確かに蒼音があの時間を全て謝罪で使った時は驚いたな。絶対謝罪は少しして、それから次の方針を話すかと思ったからな。
「__これより本日行われた生徒会長再選挙の結果を発表します。当選したのは……」
ほんの少しの間がとても長く感じる。蒼音は目をつぶり、腕を組んでいる。
「2年D組、鈴木蒼音さんです! かなりの接戦でしたが、おめでとうございます! 」
蒼音の名前が呼ばれる。当選したと、大逆転勝利を収めたとわかって身体の力が抜ける。
「どうしてあなたが私よりほっとしてるのよ。ここから新しい役員決めて遅れた分を取り戻さなきゃ行けないんだから、忙しくなるわよ」
「ちょっと待て、その言い方だと俺にまだまだ協力させるって感じに聞こえるんだけど。あってる? 」
「当然でしょ、あなたにはまだまだ協力してもらうわ」
役員探しとか手伝う感じか。大変そうだ。
柏崎学園の生徒会再選挙、そこでは会長のみを決め、残りは会長自身で指名するか他の役員は変わらず起用するかを選ぶことができる。
蒼音は多田なんかの役員たちと上手く連携取れなかったわけだし、指名していくのは当然だな。
でも蒼音と合う人材なんてそうそういない気がする。
「柊くん、あなたにはまず……副会長になってもらうわ」
「……へっ? 、冗談で言ってる? 」
「耳が悪いなら耳鼻科に行くことをおすすめするわ」
どうやら本当のようだ。
「いや待て待て待て、なんで俺なんだよ!? もっと他にいるだろ!? 」
「私から見た時一番合ってるのが柊くんだからよ。それ以外の理由がないわ」
「ちなみにこれ、会長命令ね」、と最後に付け足され、俺の逃げ場がないことに気づいた。
「……わかったよ、俺が受けないでまた再選挙になったらやだし」
「よし、これであと1人ね」
あと1人……あと2人なのでは? 足りないのは書記と会計なわけだし。
「あぁ、あなたには言い忘れてたけど、夢宮さんとはもう話をつけてあるの。私が再選挙で当選したら会計になってもらうことになってたのよ」
「知らないとこで冬とそんな話してたんだな。冬もよく承諾したな」
「彼女とは1年の時から信頼関係を築いてきたから、すんなりいったわ」
前々から準備はしっかりしてるんだな。前から会長になる気あったのかな?
「あと1人……悩みどころね」
蒼音はノートを取り出してパラパラとページをめくる。
「なんのノートだそれ? 」
「人物ノート、私の主観でそれぞれの評価をしているわ。ちなみに柊くん、あなたの評価は10点中2点よ」
「それ私怨入ってないか!? 」
嫌いが先行しすぎて酷い評価になってる。今も嫌われてるだろうけど、そのことを改めて知らされるとちょっとショックだな。
「入ってない……と言ったら嘘になるでしょうね。ねぇ、柊くん……」
蒼音がなにかを言いかけて、口ごもる。言いたいことがあるのだろうが、どう言ったらいいのか迷ってるように見える。
「えっと……蒼音、どうかしたか? 」
「失礼します!! 」
今あった空気は突然の来訪者によって一気に壊された。
俺はびっくりして声のする方へ向くと、前に生徒会室で出会った女子生徒が立っていた。




