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能力者は青春を謳歌出来ないと思った?  作者: 白金有希
2年生編④
100/171

100話 久木野瀬先輩と

蒼音にlineを送ってみてから数日が経った。あれから特になにも起こらなかったが、今日はなにか起こるだろうなと確信がある。


理由は単純、今日はPSY部総出で生徒会の手伝いをしているからだ。


俺と秋穂、睦月で生徒会室、それ以外のメンバーは第一体育館で作業を行っている。


明日3年生による合格者発表会があるからというのと、卒業式での備品の確認を前もってやっておこうというものだ。あとは生徒会室の整理もあるのだが。


「先輩こっち終わりましたー」


「それじゃあ先に特別棟近くの倉庫に行っといて。あそこに色々あるから、リスト見ながら確認お願い」


「はーい、行くよ睦月」


「どっかで時間潰そうかな……」


秋穂と睦月は出ていってしまった。睦月誰の前でそんな発言してんだ。お前が行ったあともずっとドア睨んでるぞ。


「えっと蒼音、俺も書類整理終わったんだけど……行ってもいいか? 」


「いえ、まだ仕事あるから残って」


蒼音は会長の椅子に座り、なにやら真剣に読んでいる。


「仕事って? 」


「生徒会室の掃除」


それは生徒会でやれよって思ったが、言ったら言葉の刺で刺されるのでやめた。箒持ってこよ……


俺は箒を持ってくると生徒会室の床を掃く。蒼音は無言なので箒と床の擦れる音と紙のめくれる音しか聞こえない。気まずい……


「……さっきからなに見てるんだ? 」


一応聞いてみる。そしたら嫌そうなため息のあと、

「2代前の生徒会の活動記録」


そう返ってきた。2代前っていうと耀音さんの時か。


「あなたが今考えていることはムカつくから止めなさい。会長命令よ」


「耀音さんの時の記録を見てるんだなって思っただけなんだけど……」


「それがムカつくのよ。姉は関係ないわ」


冷たく鋭利な視線がこちらを向く。もしかして耀音さんの話って地雷なのか。


そう考えている間にも、蒼音はパラパラとページをめくって読み進めていく。


なにも話さずに掃除に集中して方が良さそうだ。さっさと片付けちゃお……


蒼音の邪魔をしないように作業を進め、それでいて難癖をつけられないように綺麗にする。


「終わったぞ、じゃあ俺行くからな」


「早く出ていきなさい。もうそろそろ作業も終わっているでしょうし帰ってもらって構わないわ」


「俺一人では帰らないよ、あいつら居るんだし」


俺は生徒会室を出ていくと、秋穂と睦月が作業しているであろう特別棟へ向かう。


睦月のやつサボってなきゃいいんだけど……


「……柊か、奇遇だな」


その道中、久木野瀬先輩とばったり会う。


「久木野瀬先輩、お久しぶりです。風紀委員長お疲れ様でした」


「あぁ、ありがとう」


久木野瀬先輩は少しだけ微笑んだ。


「あっという間に終わってしまったな。もう1月も終わりか……」


「やっぱり3年間って早かったですか? 」


「風紀委員をしていたからというのもありそうだが、思い返す暇もないくらい早かった」


「そうなんですね」


普段見ない笑った顔はやっぱり新鮮だ。卒業まじかというのもあるのだろう、表情筋少し緩んでるな。


「進路ってどうなってるんですか? 」


「それなら天夜さんの紹介で、柏崎グループに入ることになった」


「凄いですね、完全に大手じゃないですか! 」


「だが喜んでもられない。入ってからしっかり成果を出さなければ認めてもらえないだろう……」


グッと手を握る久木野瀬先輩、この人なら大丈夫だろうって思っちゃうんだよな。天夜さんからの信頼だってあるし。


「……そういえば、蒼音はどうだ? なかなかに背負ってるものがあるやつだ、少し心配でな」


「……正直不安です。不安定で今にも崩れそうな感じがあります……」


「だろうな……」


蒼音は久木野瀬先輩に気遣われていた。でもあいつは人に頼らないし、崩れるまで1人で行こうとしてしまう。


「正直生徒会長に向いていないと思ってしまう。本当は風紀委員長をやらせたかったのだがな……湊に押された」


「……まぁ、最終的に判断したのは蒼音自身でしょうしいいと思いますけどね。俺はあいつが会長なのは賛成です」


「……すまない、柊の方が蒼音を見てきた年数が長かったな。不要な意見だったな」


「いやいりますよ!? 風紀委員で見た蒼音は、俺が見てきた彼女と違いますし、今の状態じゃ会長は無理だって思うのもわかりますから」


蒼音は今のままじゃいずれ壊れるだろう。だからといって俺の言葉を聞くやつじゃないのはわかりきっている。


「久木野瀬先輩から少し言っておいてくれると助かります。少しでいいから吐き出してくれって」


「わかった、言っておこう。とはいえ素直に聞くとは思えないのだが」


蒼音がどれだけ耳を塞いでも、俺らは声をかけ続けることしかできないのだろう。意味のないことだろうがやるしかない、あいつは潰させない。


「じゃあ俺はそろそろ……」


「あぁ、そうだ最後に……なにか困ったことがあったら相談してこい、和人」


「はい、ありがとうございます伊月先輩! 」


頼れる先輩の言葉に笑顔で返す。


この終盤で伊月先輩との距離が縮まった。名前で呼びあえる関係になったのは嬉しいものだ。



特別棟に急がなきゃな……


伊月先輩と別れ、急ぎ足で特別棟の倉庫に来た。


そこにはちゃんと秋穂と睦月がいた。


「確認の方どうだ? 」


「あっ先輩、もうすぐ終わります」


「先輩暇なので少し喧嘩しませんか? 」


「やめろこんなところで、問題になるんだから」


今日の睦月はつまらないそうにしている。気分がノッてないな。


「葉月先輩の方は終わったみたいですよ、あと少しなんですから早く終わらせましょ! 先輩も手伝ってください! 睦月が働かないんで」


「もちろん働くよ。睦月も頑張れ」


「いやーこういう雑用はサボりたくなるんですよね」


「お前な……」


まぁこんな日もあるのか。睦月は真面目な作業とか好きではなさそうだし、しょうがないんだろうけど。


その後、主に秋穂と俺が頑張って、備品の確認を終わらせた。



「おつかれー」


部室に戻ると冬だけしかいなかった。


「冬、みんなは? 」


「疲れたからってジュース買いに行ったよ。3人ともお疲れ様」


「おつかれです、あー干物ー」


秋穂はその場でぷかぷか浮いて寝ていた。


「ソファで寝たら? 空いてるんだし」


「いいですよー私はこっちが落ち着くのでー」


とろけてるな。完全に脱力していて最大の干物になってる。


「先輩、少しゲームでもしませんか? 組み手なんですけど」


「それはゲームじゃない! というか睦月、お前とは戦いたくないって言ってるよな!? 」


好戦的な睦月には参ってしまう。休みの事情を知った時、目を輝かせて来たからちょっと怖い。俺は無駄に戦いたくない。


「あっ和人、そういえば千華がちょっと心配してたよ。蒼音さんになにか言われてないかなって」


「そっか、大丈夫だよって伝えとくよ」


千華は心配してくれたようだ。ちょっと嬉しい。


「ただいまー! ジュース買ってきたよ! 」


そうこうしていると葉月たちが帰ってきた。あいつ元気だなー



その後、俺たちは残りの時間をゆったりと過ごすのであった。

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