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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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87 いまはもう晩秋

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」1999年12月号掲載

新浜しんはまだより


87 いまはもう晩秋


半日休みの午後、コタツでのうのうとしながらワープロに向かう。書き出しがすらすら出てくればなんということはないのだが、そうは問屋がおろさない。10分、20分、30分・・・・・・出ない。よし、しかたない。ちょっと保護区を見てこよう。

 明日は市民まつり。友の会の展示のために朝のうちに植物を集めておくのは私の役目なので、どのみち下見には行くつもりだった。なんとなく自分に言い訳をしながら長靴をはく。

 道ぎわのトウネズミモチの実が目立って白っぽくなり、紫に色づきはじめたものもある。先週は実っているのにまだ気づきもしなかった。このトウネズミモチは、住宅地との境に植えられた並木から鳥に運ばれた実生木で、鳥が道のへりにあたる昔の堤防に止まって糞をすることから、堤防ぎわの丸浜川岸にまるで植えたようにきれいにそろってのびている。水面がまったく見えなくなってしまったので、実が終わったら少し枝をすかそうか、と気にしているところだ。

 ノイバラやトキワサンザシの実が赤く色づいている。ノブドウの実のパステルカラーは見るだけで美しい。セイタカアワダチソウは盛りをすぎたが、ススキやオギの穂は今がいちばんみごとだ。今年はずっと陽気がおかしくて、きりっと冷えた大気などまるで味わっていないが、真向かいから吹きつける北風はなまぬるい木枯らし1号かもしれない。

 あちこちでアオジが鳴く。ジョウビタキがオレンジ色の尾羽を見せて飛び立つ。上空をオナガガモが飛ぶ。鳥の姿から見ると、あたりはすっかり晩秋だ。先週おびただしく見られたアキアカネや、越冬場所を探す蜂類はほとんど目につかない。

 10月11日に稲刈りを終えた田んぼでは、2番生えの若葉が青々としていた。稲架けにびっしりかけた稲束は、カルガモと2度にわたる嵐のせいで、もののみごとにばらばらにされてしまい、下の段は全滅に近い。一昨日、指導・総指揮にあたった森田さんが、一升ビンでこつこつと精米されたお米を届けてくださったばかり。ほんもののお米だ、とみなで感動した。わらなわ作りの講習会をやろう、とか、草鞋がつくれる人を探して教わりたい、とか、次から次へと夢がひろがる。田んぼというものの求心力はすごい。来年はもうひと工夫、と次の挑戦への暗黙の了解ができてしまったようだ

 ヒメガマはここ、コガマはここ、と翌朝の最終場所の目星をつけながら、田の字池の観察壁にたどりついた。この観察壁はこれといった特徴がなく、ほとんど活用されていなかったのだが、大黒柱さんたちの発案で、この秋は正面をさえぎる畔のアシを部分刈りし、ところどころ地面が出るようにした。背後の水面がよく見えて、畔にはいつもカモが上がっている。手をかけただけのことはある、と気をよくしている場所の一つだ。

 畔で休んでいるマガモを見ていると、背後の水面で黒っぽい大蛇のようなものがうねっているのに気づいた。マスクラット! 2頭がぴったりとつながるように泳いでいるので、まるで蛇がうねるように見えたのだ。求愛行動に違いない。やったね! 複数個体の目撃例はこのところまったくと言ってよいほどなかったので、健在がともかくうれしかった。

 秋のトラクターがけは9割がた終了。来年の繁殖期へ向けての裸地づくりも、面積が広くて、ただもう心配だった新しい場所の草刈りが、あと1日程度で終わりそう、というめどがついた。観察路の草刈り最終ラウンドは、もうひと手間分残っている。

 助っ人さんとお天気に恵まれたおかげで、野鳥病院の本体半分のゴキブリ燻蒸消毒や、個別禽舎8室のペンキ塗りも、どうにか済ませることができた。作業の進捗状況は幸いに順調だ。もっとも、とかく後回しになりがちなデスクワークは、外作業のしわよせ分だけ、しっかり残っている。

 セグロカモメが餌場に戻ってきた。夏から秋の農繁期を今年もどうやら無事に乗り切ったのだから、落ちついて冬を迎える準備をしよう。



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