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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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74 台風のあとで

新浜しんはまだより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1998年11月号掲載


74 台風のあとで


 キイキイキイキイ、と鋭い声がひびいてきた。モズの高鳴きだ。ああ、よかった。秋になった。

 むし暑くて無風、うっとおしい曇り空といったこの夏が過ぎて、9月は台風前の荒れ模様や長雨、たまに晴れると真夏の暑さというわけのわからない天候。気候の影響かどうか、カモの到着が遅い。コガモの初認は9月5日と例年に変わりなかったが、中旬ごろからふえてくるはずの群れが一向に見られなかった。おまけにモズがいない。今年はこのあたりではちゃんと巣づくりをしなかったらしく、4月以降、モズの記録がぱったりと途絶えてしまった。9月に入れば戻ると思っていたのに、いつまでたっても高鳴きが聞かれない。

 9月30日、ようやくモズが鳴きだした。カモの群れも25日すぎからぼちぼち目につきはじめた。ススキやセイタカアワダチソウの開花はいつもと同様だが、珍しく鳥の時期がずれている。来てくれさえすれば、それでいいけれど。

 南海から直撃コースをたどった台風5号の通過直後、9月17日のこと。

「ハシボソミズナギドリが来ましたよ。でもねえ、足がピンクなんだけど、ハシボソですよねえ」

 箱に入れられたミズナギドリは、色合いも大きさも、翼裏のぼんやりした白色も、目つきまで、どう見ても例年5月に何羽も持ち込まれるハシボソミズナギドリそのままだ。足の色は確かに薄く、黒みを帯びたピンク色に見える。ハシボソミズナギドリの足は黒灰色だが、みずかきなどはピンクがかって見えることがある。こんな色のもいるのかなあ、と首をかしげながら、干し草を敷いた箱に入れて、塩水につけた魚を食べさせるといういつもどおりの世話をした。

 翌18日、県立の中央博物館からオナガミズナギドリの持ち込みがあった。小笠原方面にいる種類だが、私などまだ見たこともない鳥だ。前日に連絡を受けて以来、どんな顔をしているのか、と期待していた。

 さて、入院してきたオナガミズナギドリ。透き通るような桜色の足と、喉から下の白い下面が美しい。ところが17日の「足がピンクのハシボソミズナギドリ」」と並べてみると、大きさや体つき、嘴の感じなどはまるで同様で、異なるのは下面と足の色のみ。オナガミズナギドリには暗色と明色の2タイプがあるので、下面が白か黒かは問題にならない。同じ日にもう1羽、やはり全身が黒灰色のものが持ち込まれたが、これまたそっくり。

 尾羽の測定値から、この3羽は3羽ともオナガミズナギドリであることがわかった。ハシボソは92ミリ以下、オナガは127ミリ以上で、3羽とも130ミリ以上あったのだ。中央博物館に持ち込まれ、ハシボソと考えられていた死体も、いざ測定してみると、結局オナガの方であったとのこと。秋にはハシボソミズナギドリは太平洋の中央からアメリカ大陸沿岸を南下していることになっているので、時期が変だ、とは思っていたけれど。

「あれだけ毎年つきあっていて、ハシボソミズナギドリもわからないようでは、鳥のプロ失格ですよねえ。もう、プロやめちゃおうかなあ」

「そうそう、やめちゃおうよ、やめよう」

 ちなみに、私の実感として、ハシボソとオナガの大きな違いは、オナガミズナギドリの方が嘴のふちが鋭く、かみつかれると簡単に血が出るということ。少し距離を置いて眺めると、確かにオナガの方が全体に細長く、大きめに見えるが、その割には体重が軽い。換羽時期のせいもあるが、背面にぼんやりと褐色の縞が見えるのも、ハシボソにはなかった特徴かもしれない。それにしても、そばで見てこんなによく似ている鳥が、野外で見分けがつくのかしらん。もう、プロやめたい!

 8月末に草を刈って水面を開いた後、連日数十羽のサギ類で「白鷺の湖」になっていた竹内が原の湿地にまた草が伸び、鳥がめっきり少なくなった。大黒柱1号の一樹君と2号の達ちゃんは、一樹君が鳥島での作業に出発する前日の10月5日、二人して草刈りの目途をつけてくれた。これでサギやカモが再び入るかどうか、お楽しみ。




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