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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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22 たまごがいっぱい

新浜(しんはま)だより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1994年7月号掲載


22 たまごがいっぱい


 「サシバに卵、やりましたか?」

 バイト生の佐藤君がけげんな顔で聞きにきた。小屋の敷草の上にころんところがる薄青色の卵2つ。2羽いるサシバはどちらも翼の骨折で、入院後2年になろうという鳥だ。1羽はほとんど鳴かず、もう1羽はピックイーとさかんに鳴くので、たぶん雌雄だろうと思っていたが、まさか卵を生むとは思わなかった。抱卵を期待して卵はそのままにしたが、翌日1個がつつかれたので、2個とも取り除いた。鳩の卵よりはきもち大きめ、薄青色の地にわずかな斑があるきれいな卵だ。

 白鷺類をひとまとめに入れた中部屋では、ダイサギが卵を1つ生んだ。美しい青緑色の鶏卵大(Sサイズ)の卵だ。こちらには少々複雑な事情がある。ダイサギ、コサギ、アマサギがそれぞれ2羽ずついるが、何年も前からダイサギ雄・コサギ雌の異種間ペアがひと組できている。ダイサギ雄はまめまめしくコサギ雌の世話を焼き、コサギ雌は甘え声を出してダイサギから餌をもらい、草の茎をくわえて巣づくりめいた動作もした。卵も生んだが、これまではカモメやカモと同居の大部屋住まいだったため、いつも食べられてしまっていた。

 もう1羽のダイサギは昨年入院した新入りで、つれあいがいないため春になっても非繁殖期の黄色のままだったくちばしが、5月に入るころから繁殖期の黒色に変わり、目先も美しい空色の婚姻色になった。そのうちにダイサギ夫人のコサギがこのダイサギを目の仇にして追いかけるようになった。三角関係かな、と思っている矢先の産卵。雄のダイサギの行状がはっきりしないので、片思いの悲恋か、それとも不倫なのかはわからない。それにしても説明がややこしい。

 ちなみに2羽のアマサギもうっすらと夏羽に変わってきたが、白い羽が生えかわってオレンジ色になるというより、色素に染まったような感じだ。どこから色素が出るかはわからない。1羽はくちばしも赤くなったが、産卵はまだ見られない。

 保護区の「みなと新池」ではセイタカシギが1組だけ産卵してくれた。手間ひまかけた繁殖用の島ではなく、こともあろうに水の浄化用の棚田の中に4個の卵をうんだ。増水に対応してアシの茎をうず高く積み、まるでバンの巣のような体裁だ。無事にかえってくれるとよいのだが。

 今年最大の卵情報は、妙典の区画整理組合の工事現場内でのコアジサシのコロニー繁殖かもしれない。スーパー堤防としてひな壇状の住宅地が造成されることになっており、確保した土砂が高さ1メートル、50メートル×150メートルほどに何面か積まれている。3月末、平らにならした後放置されているそうで、草もほとんどない。地下鉄東西線の操車場を隔てた先は、格好の餌場である江戸川放水路。すぐそばには手ごろな池もあり、コアジサシにとっては絶好の繁殖環境だ。

 5月17日、区画整理組合の方の案内で様子を見てきたが、6面ほどの段にそれぞれ15~20の巣があるようだ。このうち4面をざっと見ただけで、3個の卵がそろった巣が30近く見つかっている。シロチドリの巣も少なくとも2つはあり、コチドリも近くで繁殖しているらしかった。親鳥をかぞえる前に踏み込んでしまったので、合計数はわからないが、百つがい以上は確実にいるだろう。

「最大限の配慮をするという結論はもう出しています。いずれにしてもずっと放置しておくわけではなくて、少なくともあそこの砂を敷いた上にこっちの土砂の山をくずして積み上げるという工事は今年やるんですが、工事の期間とか手をつける場所とか、できるだけ鳥に被害が出ない方法をとりたいということにはなっていますから」

 区画整理組合の方に心強いことばをいただいた。少なくとも今年の繁殖期については、いちばん望ましい対応をしてもらえそうだ。1羽でも多くのヒナが秋の渡りに旅立てるようになることを祈る。

 実は、もう一つうれしい卵ニュースがある。なんと、丸浜川で鯉が産卵した。卵も確認できた。いくら状態がよくなったとはいえ、あいかわらず生活排水を水源としている丸浜川で、である。やった、どんなもんだい、水車くんのおかげだぞーっ!!



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