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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
19/95

19 みなと新池 ただいま調整中

新浜しんはまだより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1994年4月号掲載


19 みなと新池、ただいま調整中


 1月9日の通水祝い後、やり残しや手直しの作業をいくつも経て、1月31日にみなと新池への試験揚水をはじめた。みなと新池は昨年4月に千葉県が造成した水鳥誘致用の池で、全体が0.6ヘクタール。本体の池はそのうち約3分の2で、残りの部分には池を掘った土を積み上げ、水質浄化のための斜面(棚田)にしてある。昨年6月、この池に水を導入するため、千葉県の都市部公園緑地課を通して大蔵省に「近郊緑地土地使用許可」と「近郊緑地内行為許可」を申請したが、12月になってようやく許可が出た。年末年始にあわただしく残りの工事を終え、通水祝いにこぎつけた。

 たいへんありがたいことには、水車やポンプ、パイプ等の購入から電気工事など、120万円をこえる経費について、地元の市川南ロータリークラブが全面的に負担してくださることになった。水車を入れる前にも、道路から4メートルも下にある湊排水機場遊水池の水面に水車を吊り下ろすため、ユニックブーム(小型のクレーン車)を提供していただき、幸いに事故もなくスタートすることができた。行政、地元、保護団体という三者が一体となって環境再生にとりくむというはじめての試みである。

 昨年は記録的な雨続きのため、湊新池にはずっと水があったが、こんな年はめったにあるものではない。おまけに埋立地特有の現象として、たまった水は㏗4前後という極端な酸性に傾き、放置すればこの状態が何年も続く。その間、水中の生物は少ないままになる。このため、行徳地区最大の内水排除のためのポンプ場である湊排水機場の遊水池の水を導入し、乾燥や酸性化を防ぐというのがもとからの計画だった。

 遊水池の水は排水百%。見るからに汚い「どぶ池」で、常に無酸素状態。水車で水質改善をはかろうとしているが、一朝一夕で自浄能力がアップするものではない。一方、みなと新池本体の方はこれまでの池よりも深めに設定されている。アシの侵入をくい止め、蓮やオオバンに適した状態をめざすためだ。深いと水底に日光が届きにくく、自浄能力は落ちる。池全体の状態が悪くなっては元も子もないので、「どぶ池」の水がみなと新池の本体に入るまでに、棚田を通してできるだけ浄化を進め、窒素やリンを10分の1以下に落とすことを目標としている。

 この日は26時間揚水。翌日行ってみると、水質浄化用の棚田は5枚とも満々と水をたたえ、池本体にもとうとうと水が流れ込み、前日に比べて10センチ近くも水位が上がっていた。ポンプの揚水能力は十二分にあることがわかったが、リンや窒素の減少は3分の1前後にとどまった。揚水を止め、2月6日に再び水質を見たが、池本体の水質は揚水前とだいたい同じくらいまでに落ちついた。大量に窒素やリンが流入した結果、水は藻類の発生を示す緑色になり、酸性に傾いていた㏗はぐっと上昇して中性にかなり近づいた。

 2月7日からは日に2回、2時間ずつの揚水を続けている。2月18日の水質調査では、原水のCODが14(ppm),アンモニアが7、リン酸が4に対して、5枚目の棚田ではそれぞれ4.5、5、0.8になっていた。リン酸とCODはかなりうまく減っているが、アンモニア(窒素)はまだ減り方が少ない。池本体ではアンモニアは0.8で現状維持を続けていたが、アンモニアが酸素と結びついた亜硝酸は増えていた。つまり流入する窒素量が消費される量を上回っているということだ。窒素が多すぎては植物プランクトンの大発生が続き、池が濁って底に日光が届かなくなってしまうので、注意して水を入れなくてはいけない。

 もっと気温が上がり、また棚田の水中の生態系がしっかりしてくれば、微生物の働きがはるかに活発になり、目標の10分の1までリンや窒素を落とせるはずだ。揚水を始めて半月としては、まあまあの状態だろう。

 水質と水量のかねあいがうまく調整できれば、ちょうどよい状態の池が維持できる予定なのだが、おおよその釣り合いがとれるまでにはどのくらいかかるのだろう。しかし、ささやかであるにせよ、近々のうちにオオバンが泳ぐ蓮田が再現できるかもしれないと思うと、わくわくする。



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