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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
18/95

18 タカの狩り

新浜しんはまだより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1994年3月号掲載


18 タカの狩り


 空が赤く染まっている。保護区一周カウントの終わりも近く、ひとりで下池のふちを歩いていた。西日に輝くアシの穂先に見とれていると、目の隅に飛ぶ鳥の姿がうつった。斜め後方から私の前方を横切るコースを飛ぶコガモだ、と思ったとたん、その飛行コースと直角に交わるように猛烈なスピードで近づいてきた鳥が、私からほんの10メートルほどの距離のところでコガモとぶつかりそうになり、ササササーッと鋭い羽音を響かせて身をひるがえした。コガモがバランスをくずしてあわてて向きを変え、ちょっとふらついた様子で飛び去ったあと、あっ、ハヤブサだ、ハヤブサがコガモを襲ったところだったんだ、と気づいた。ハヤブサは攻撃をかけようとした瞬間、すぐ近くにいた私に気をとられたに違いない。一瞬の隙をついてコガモが逃げ、ハヤブサが身をひるがえし・・・・・・そうか、そのままコガモに体当たりしていたら、私に衝突しかねない位置だったんだ! すごいところを見てしまった。

 自分では冷静に見ていたつもりだったが、さすがに興奮していたらしく、翼の裏の横縞は見たものの、くっきりと見えたはずの腹の模様が若鳥の縦斑か、それとも成鳥の横縞か、まったくわからない。おまけに飛び去るハヤブサを見送ったのに、どこへ姿を消したかがどうしても思い出せなかった。12月17日のことだ。

 1月4日は朝から何度もオオタカが飛んだ。いつも見慣れたチュウヒなら首を上げて少し警戒する程度のアオサギたちが、オオタカが近づくたびにあわてふためいて舞い上がる。セグロカモメやアオサギはオオタカよりはるかに大きいのだから、なにもそれほどこわがらなくてもよいのに、と思ってしまった。

 野鳥病院の治療室に戻って鳥の世話をしていると、目の前の丸浜川の導流提から茶色のゴイサギが2羽飛びたった・・・・・・と思ったとたん、前を飛ぶ1羽が不意にバランスをくずして水に落ちた。後を飛ぶ方は身をひるがえして舞い上がったが、尾羽が長く、おまけに横縞が入っているではないか。なんとオオタカの若鳥がゴイサギの若鳥を襲ったところだったのだ。狩りに失敗したオオタカは堤防上のセグロカモメにちょっかいを出して全群を舞い上がらせ、次は草かげで休んでいるアオサギとゴイサギの群れにつっこみ、ちりぢりばらばらの群飛の中、結局1羽もとれないまま鴨場の方へと姿を消した。川に落ちたゴイサギの方は岸に向かって泳いで行くところまでは見たが、その後の動静は見届けていない。

 タカが獲物を襲う様子は、何度見ても胸がどきどきするような光景だ。私もけっこう血なまぐさい性格をしてるのかな、と反省する。しかし、2年ほど前に見た狩りの光景は、これとは違った意味で感動的なものだった。晩秋、日溜まりの板の上にコカマキリが一匹止まっていた。そこへクロスズメバチが通りかかった。コカマキリはほんとうにさりげない様子で鎌をのばしてあっさりとハチをとらえ、すぐに食べ始めた。大きな動きも物音もなく、そこにあったのは、一つの命がもう一つの命へと受け渡される厳粛な瞬間だった。


 1月9日、みごとな快晴の空の下、東京支部の探鳥会のみなさんにも参加していただいて、待望の「通水祝い」が行われた。昨年4月に千葉県が造成した池に、家庭排水のため池である湊排水機場の遊水地から水を入れる許可が12月にようやく下りて、電気工事もいちおう終わり、これでいつでも水が入れられるようになった。ただし、かんじんの湊排水機場遊水地に入れた養魚用水車は、係留ロープや電源コードをきちんと整えないと、まだ稼働をはじめられないし、池の方も堤やなにかを手直ししないと水を続けて入れるわけには行かない。様子を見ながらの土木作業がこれから当分続きそうだ。

 それにしても、まずはよかった。当日延々とお待たせしたみなさま、ごめんなさい。お手伝いやご寄付をいただいたみなさま、ありがとうございました。これからも、くれぐれもよろしく。



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