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第1話 この世に神がいるのなら

3話まで読んでもらえると、この作品のある程度の流れが理解出来ると思います。

どうか1話で切らずに温かい心でご覧ください。

ちなみにタイトルは「イケメンなので恋愛こいをしたいが俺はあまりについてない。」です。

「ユキトーいってらっしゃ〜い。お土産買ってくるからねー」


「母さんたちも気をつけてなー」


新年度が始まり、花粉が散りばむ卯の花月。

晴れ晴れとした朝の空に、母の声が響き渡る。



ーー俺の名前は神在月かざつき 雪斗ゆきと。私立 常春とこはる高等学校の二年生だ。

特技はゲームと授業中に居眠りッ⁉︎⁉︎


「イッて‼︎なんだー?空き缶か…ハァまたかよ。今回で35回目だぞ?ったく朝からついてねーなぁ」

いきなり何処からか空き缶が飛んできて、うまい具合に頭にヒットした。

今回はアルミ缶だったのがもはや不幸中の幸い。

スチール缶だったら痛いじゃ済まない。


せめて自己紹介中はやめてくれよなー。

もう慣れたけどさ。


昔から何かと運が悪く、誕生日は四月二日、あと1日早く生まれていれば既に高校三年生であり今頃志望校の現実的判断を迫られている頃だろう。

おかげで、本来なら同学年になって勉学を切磋琢磨するはずだった友が、先輩という学内ヒエラルキーの一つ上に立つことをみすみす許してしまい、何をするにも敬語を使わなくてはならないという苦い思いを強いられている。


ちなみに名前の由来は、俺が生まれた時期が四月なのにも関わらず雪が降っていたことから雪斗ゆきとと名付けたそうだ。

なんとも安易な名前のつけ方。


だが、全部が全部悪いことって訳でもない。

スポーツ万能で、身長は全国の高校二年生の平均身長を優に超えた175センチ。

そして!何を隠そう、俺は超絶級のイケメンなのだ‼︎なのだ…なのだ……なのだ………なの…だ…


そう!俺は学内トップクラスのイケメン‼︎俺の美貌に敵う奴などいない!のだが…

そーーーーーんなことなんて無にしてしまうほど俺の運は悪い!ヒジョ〜に悪い!

もはや一種の才能…とすら思う。


高校入学三日目にして、階段で前を歩いていた学年のアイドル冬宮ふゆみや 氷菓ひょうかのスカートを誤っておろしてしまい、さらに何を血迷ったか『グッジョブ』と下から覗いたまんまの体勢で本人に言い放ち、辺りに隠れていた発足三日目の冬宮ふゆみや親衛隊にボコボコにされるという救いようの無い大罪を犯してしまった。

おかげで俺は一年間『グッジョブの人』と女子から呼ばれ、彼女どころか女友達すら作ることさえできなかった。


女子に対してのこういうことはそれまでも何度か有り、その度に持ち前のイケメンでなんとか大ごとになるのを回避してきたのが今回の仇になったようだ。

俗に言うラッキースケベとは、実際にやったらまず助かることは無い。


そうこう言ってる間に、着いてしまった我が学び舎。私立 常春とこはる高等学校‼︎


ふっ…相変わらずレベルの低い男どもだ。

まぁ、俺に勝るイケメンなどこの世の何処にもいないけどな‼︎


キマッた


「朝っぱらから校門の前で何してんだよユキ。早くしないとチャイムなるぞ」


「あぁ…おはよう」


まったく、カッコイイ俺がカッコよく決めてんだから邪魔すんなよ。

友人が俺の肩をポンと叩き、引っ張られるように二人は校門をくぐった。



キャーキャーー‼︎

周りの人たちが俺を見て一斉に叫び出した。

そのまま周りの人が少しずつ離れていく。


そんなに露骨に逃げなくってもいいだろ!

俺はウイルスか!病原菌なのか!

流石に泣くぞ。


キャーキャーー‼︎

尚も悲鳴があちらこちらで鳴り響く。

なんという阿鼻叫喚、聞いているだけでこちらのライフが根こそぎ削られていくような酷い惨状。

耳栓をしていても貫通してくるであろう高い声。


駄目だ…涙が……ん?待てよ、なんかさっきから悲鳴とは違う声が。

耳をよーく澄ましてみる。

うるさい…

耳を澄ましたいのに、澄ませば澄ますほど耳がおかしくなっていく。


「キャーキャー‼︎みてあの人!ちょ〜カッコよくない⁈」

「ほんとだ!モデルみた〜い」


ん?何かがおかしい。

そうかっ!新しく入ってきた一年生だ‼︎


振り向くと、こちらを指差しては隣の子と一緒にはしゃいでいる。

自分で言うのアレだが、なんと珍しい光景。


なるほど。

入学したばっかりだから俺のやらかしたことを知らないのか!

これは一年ぶりに女子に話しかけるチャンス‼︎

これを逃したらもう後は無い…

後は無いっ‼︎


ゆっくりと女子たちに近づいてみる。

あたかも偶然通りすがったかのように。

あと少し、もう少しで…


「あなた達!気をつけなさい‼︎あいつの外見に騙されないで!あの男は変態よ‼︎女子のスカートをおろしてグッジョブって言い放った、イケメンの皮を被った変態よ‼︎」

あと少しという所で、俺のことを知っている同学年の女子が一年生に忠告をする。


「なっ‼︎」

あの女、なんてことを!

俺の最後の希望が!


「でも先輩、男はみんな獣だって昔っから言いますし。それくらいは…」

一年生がフォローに入る。


ナイス!ありがとう。名前も知らない君‼︎後で僕がハグしてあげ…

嬉しさのあまり泣きそうになった。


「駄目よだまされちゃ!彼はしかもホモなのよ‼︎女だけでは飽き足らず男にも手を出す真の変態なの!」

同学年の女子が追い打ちをかける。


違う!断じて違う‼︎

言いがかりはよせ!

お前はアレか⁉︎俺の敵対勢力なのか?俺と前世で殺しあった仲なのか⁉︎


「見なさい彼の後ろにいる男子を。あの二人はできてるのよ!」


ちがぁぁーーう‼︎

そんなことはない!全くもって違う‼︎

これだけは弁明させて貰おう。


さっき校門で俺のことをユキって呼んでた後ろの男は多田野ただの 友達ゆうた

俺の小学校からの幼馴染みだ。

そいつといつものように机の上に座り、向かい合って話していたら。

突然、教室で騒いでた男子バカヤロウがぶつかって来て、バランスを崩した拍子に友達ゆうたも巻き込んでもつれるように倒れこみ、誤って互いの口が触れてしまったのだ。

しかも、みんなが見ている教室のど真ん中で。


その後、急いで二人ともトイレに走り込み、食ったばっかの昼飯を全て解き放つハメに。


それからしばらくして、『二人を陰ながら応援する団』なるものが出来たらしいが、何をやっているかは定かではない。



てなわけで、俺はホモじゃ無い。ひたすらに彼女を求めている、純粋な男子高校生だ。

分かってくれ!


俺は弁解をすべく、少しずつ一年生に近づいて行った。

今の俺はさながら小動物に餌やりをしようとする幼気な少年。

…のように、思っているのはおそらく俺だけであろう。


「ねぇやばい!なんか近づいて来たよ⁉︎来ないでキャー‼︎」

一年生は散々俺を罵倒して、そのまま逃げ去ってしまった。


君達も結局そっちに行ってしまうのか。



「おいユキ!なぁユキってば‼︎急に立ち止まってどうしたんだよ」

友達ゆうたが心配そうに肩を掴んで話しかけてきた。


「おまっ!このタイミングで俺に触る奴が…ってか、お前の手デカいな‼︎」


どうもこうもあるか!

俺はまた…またこんな地獄を一年間過ごすのか‼︎


「この世界は俺に対してなんて厳しいんだ」

ぼそりと呟きながら自分のクラスへと歩いて行った。




この学校は全学年が五クラスずつあり、俺と友達ゆうたは二年三組だ。


俺が教室の一番左後ろにある自分の席に座ったと同時に、朝のチャイムがなり始めた。


「出席番号4番ーーー」

担任の先生による、朝の点呼の時間だ。


先生の名前はたちばな 癒器ゆき、みんなからはユキちゃん先生と呼ばれている。

歳が若く、可愛らしいルックスと生徒思いの性格から、男女問わず生徒にとても人気だ。


「出席番号5番 神在月かざつきーーー」


先生は俺の名前にも自分と同じユキが入っているためか、やたらとお節介を焼いてくる。

優しいといえば優しい先生だ。


「聞いていますか‼︎出席番号5番 神在月かざつき 雪斗ゆきと君‼︎」


「はっ、ハイ‼︎」


考え事をしていて全く聞こえなかった。


「ユキト君!先生は悲しいです‼︎君には先生と同じユキが入っているんだから、もっとしっかりして下さい‼︎次やったら先生泣きますからね!」


別に泣かなくてもいいだろ…


「でもユキちゃん先生ー!あいつには『グッジョブの人』って名前もありますよー」

クラスの男子がしゃしゃり出てくる。

こういう自分面白いだろって勘違いしてるやつは何処の世界でも共通しているのだろうか。


うるせー。お前みたいな顔面偏差値の低いやつは、せいぜい黙って授業でも受けてろ!


「ほら!余計なこと言わない‼︎悪い子には、授業の宿題を倍にします!」


「えぇー‼︎ご勘弁を!」


ふっ、ざまーねぇな。




今日は授業が半日で終わり、いつもより学校が早く終わった。


「はぁ〜あ。寝疲れたー。って既にみんな帰ってんじゃん!」

長く居眠りしていたせいか机の跡が顔に残ってしまった。


誰か起こしてくれよー。

というか幼馴染で親友の友達ゆうたすら俺を置いて帰る始末。

俺とお前の友情はそんなものだったのか。


相変わらずついてない。


「ったく。この世に神がいるんなら、こんな理不尽なんとかしてくれよ‼︎」

そう言って、後ろにあった黒板に対して怒りを込めて勢いよく叩いた。


ーーフニッ


…はずだった。


「ん?フニッ⁈」

黒板を叩いたはずが、やたらと柔らかい。

それも、包み込まれるような柔らかさ。

太古の昔に感じた懐かしい感触。

見えないソレを少し掴んでみた。


「ン…ンッ‼︎」


今度は喋った?

恐る恐る自分の手の先を見る。


柔らかい二つの膨らみを俺の手がしっかりと掴んでいた。


「……」

ゆっくりと目線を上に上げると、


そこには翼の生えた見知らぬ女の子が。


「見つかっちゃった‼︎」

彼女は舌をペロッと出して、恥ずかしそうにそう言った。




ーーいや、探してないです。


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