第3話 改心と前進と世界作成[前編]
この小説は、先導者と呼ばれる案内人がナレーターを務めます。地の文中の状況説明文以外の改行を加えてはじまるセリフは先導者の心の声であることを表しております。注意してお読みください。なお、その他の登場人物の心の声は()内に表しております。他に読みにくい点があれば、コメント欄に書いてくださると大変助かります。今後ともよろしくお願いします。
どもども、文字trumです。今回は神ラグタナが勇気を振り絞り、話し出すところから。ではでは、どうぞお楽しみくださーい。
第3話 改心と前進と世界作成[前編]
ラグタナは勇気を振り絞って話しかける。
「あのっ!、すみませんが、あなたは本当に上位神の使いの方ですか?そうであるならば、姿をお見せください。上位神の使いならば、纏うオーラを見ればすぐにわかりますので…。」
覚悟はしても、やはりオロオロして話す安定のラグタナ。
見せてください、と言われても見せられるものではないんですがね。姿が見せられないことを知らないラグタナは実に真剣そのもの。その前に、一般的に話の前にお茶を出すところから始まるのでは?…。
と、お茶に向かって視線(気配に目はないが)を集中する。すると、ラグタナはビクッとしたかと思うと
「これは、すみませんっ!そ、粗茶ですが…。」
と言い、こたつに入らず正座をして気配があるこたつの角にお茶を置いた。
(この際テンプレは傍に流すことにしましょう。)それにしましても、神はオーラを纏っているんですね。初めて知りました。神同士じゃないと見えないもののようですね。仮に姿を見せたとしても僕はオーラを纏っていないので見えないでしょう 。ふむ、仕方ありませんね。気配を身体化させて可視できるようにして話しかけてみましょう。
すると、『?』の気配は可視化されみるみる身体の形に変化していく。そして、粗茶を飲んでいた。『?』の身体は今や半透明なので食道を流れる粗茶が見えてしまう。ラグタナはそれをお茶をこぼしながら呆然と見ていた。数秒固まったあと、お茶の熱さに気づき、うぉっ、とビクっとした。タオルでお茶のかかった足を拭きながらラグタナは話した。
「見た所、オーラを纏っているようには見えませんが…。はたまた、嫌がらせに来たようにも見えません。はっ、嫌がらせというのはこちらの話でありました。その…。はい。…。それで、あなたはどなたなのですか?」
女の子のようにおぼんを胸に抱える見た目イケメン下位神。明らかにオネエ路線のように思えてしまうのは気のせいなのだろうか。
ふむ。僕、どうしたらいいのでしょうか。声だせますが、あの方にあとで怒られそうです…。面白いものが見れれば怒られるのも苦ではないんですけどね。この際、仕方ありませんね(二回目)。事件の犯人みたいな声で話してみましょう。
ラグタナは混乱していた。
(目の前にいるのはどの種類の生き物、いや生き物ではないが、何なのかがわからない…。まあ、とりあえずこたつに入ろうかな。)
嫌がらせに抵抗する姿勢はその時どこかに消えていた。ラグタナは正座を崩し、こたつの中に足をいれる。足が下につかなかった…。
(……。へっ。もしかして床板開いちゃってる?)
おそるおそるこたつの中を見ようとした時、
「ヤァ、コンニチハ。ボクハセンチャンヨロシクネ。」
と『?』は話した。
本当にこれで大丈夫でしょうか…。犯人特有の声じゃなくて、機械音声になってしまいましたよ。ロボットの最初の挨拶みたいですね…。
ラグタナは固まっていた。先導者の生声よりもこたつの中の床板の状態が気になりすぎている。といのも言われた瞬間ラグタナはこたつの中を覗こうとしており急に声をかけられてビクッと驚いてしまったのだ。ごまかしのできない行動にラグタナがどんな返答をするのか楽しみな先導者。
センチャンって名前まずかったですかな。先導者故に、センチャン。ふむふむ、僕ながらいいネーミングセンスですな。
「えっ、あっ、…。どうも、こんにちはです。私は神ラグタナ。せんちゃん様、お初にお目にかかります!」
安定のラグくん、返答も別の意味で一級品である。だけど、ごまかしきれてないですよ。
すかさず、こたつの中を覗くのをやめるラグタナ。もちろん、先導者には見え見えである。何しろ、床板がないのはすでにわかっている。
「ソッカー、ラグタナッテイウンダネー。ソレデ、ラグクン。ナンデ、コタツノシタニクウドウガアルノ?」
率直にストレートに言ってしまいましたが、大丈夫でしょうか?さぁ、どんな返答が返って来るのでしょう!…。
彼は混乱しながら返答した。
「こ、これはこれはお気遣い感謝します。こ、こは元々井戸だったのでありますよ。だから掘りごたつにするのにちょうど良かったのです。床板が外れていたのは偶然でしょう…。空洞は、く、空洞はその、偶然出来たみたいなんですよ。ハハッ、アハハ。不思議なこともあるもんですねー。」
なんですか、その言い訳は 。井戸ですかぁ。確かにあり得るかもしれませんが、あの空洞奥しっかりと人工的な光で照らされていたんですがね。ふふっ、でもラグクン面白いですね。僕も行動に移しましょう。
「ソウナンダー。クウドウナンテメズラシインジャナイ?ミテモイイ?ダメ?」
いやいくらなんでもこのようなな頼み方では無理ですかな…。
さらに動揺するラグタナ。
ふむふむ、下の空洞に何があるのでしょうか。
「えっ、この下に行きたいってことですか。だ、だめですよ。危険ですし、結構深いですから。」
ほほぅ。真面目に答えてきますか。なら、これはどうでしょう。
「サッキミタトキ、ハシゴガスグチカクニカケテアッタケド…、。?」
といって、ラグタナを見ると、もう冷や汗かきまくっていた。
(せんちゃん様、み、見たのーーー!?
どうしよう。もう誤魔化しようがないよ…。ということは、人工光も見えたはず…。まずい、あの下にはあれがある。みんなを守るためには。この場を乗り切るしか。いや、神の使いじゃないのかな?あら、見せても…。いやいや、でも…)
相当考えているラグタナに、せんちゃんは痺れを切らしたのか、こう言った。
「ンー、ジレッタイ。ボクミテクルカラー。」
硬直するラグタナ。
必死に止めようと言い放つ。
「だ、だめです。危ないですから…。あっ。ちょっとー!」
言い終わる前にせんちゃんはラグタナの視界から消えた。一瞬の出来事すぎて状況の理解に時間がかかったがそれでも2秒ほどだった。それでもまだ梯子を下っている最中だろうとこたつをどけて下を見降ろすラグタナ。しかし、せんちゃんの姿はすでになかった。
「あわわわ、まずい不味いマズイ。は、速く下に行かないと、みんなが危ない。」
足をドタドタさせながら穴の周りを何周か回りながら思考を巡らせるが、慌てすぎて途中で転ぶ。
「イテテ。、ハッ、速く見に行かないと。」
急いで起き上がり、穴の下へと梯子で下っていった。
はぁはーん、なるほどそういうことでありましたか。ラグくん、僕に下にいかせたくなかったのはこれを見られたくなかったのですね。そもそもこの空間でさえ知られたくなかったはず…。ですが、見つけてしまったものは仕方ありませんね(三回目)。
バキ、ボキッ、ガ、ガタン、ドサッ。何事かと思いきや、それはラグタナが慌てすぎて梯子の棒が落ち、そのせいで次の棒を踏み外しそのまま落下したようだ。先導者は振り返ると当のラグタナは身体をくの字に折ったまま倒れていた。もしかしたら、どこか骨でも折ったのかと近づくとザァー、っと大量の涙を流していた。
(うぅ、痛い。なんで、なんで。ちゃんと隠してたのに。見つかっちゃった。他の神に知られて終わりだよ、私は。まだ何者かもわからないのに、せんちゃんっていう名前を聞いただけで嫌がらせじゃないって思って、しまいにはこの場所までバレて…。うぅ。はっ、僕の天使達はぶ、無事なのか、でも見られたら終わり。終わりだ。あ、飽きられるしか私にはできない…。)
ど、どうしましょう。ナレーターどころじゃなくなってきました…。とりあえず、ふむ、仕方ありませんね(4回目)これで、信憑性があがるように話してみましょうか。
「ラグタナサン、ボクハ『カミノツカイ』デハアリマセン。『イヤガラセ』デモアリマセン。アナタガタカミノオウ、トウソツシャデアル『ゼンシンファウセン』カラ、タノマレテキタノデス。(ラグタナさん、僕は『神の使い』ではありません。『嫌がらせ』でもありません。あなた達、神の王・統率者である全神ファウセンから頼まれてきたのです。)」
ファウセンとは、神達をまとめる王・統率者といったところで読者の知るところのゼウスといったどころでしょうかな。
ラグタナははじめピクリと動いたが、起き上がることはなかった。しかし、ファウセンの名前を聞いた瞬間、ガバッと身を起こしこちらに頭を下げる。
「ハッ。ファウセン様に頼まれていらっしゃったと…。やはり、見限られましたか。そうですよね、100年も仕事をサボってこの空洞に篭りっきりだったのですから…。それで、何用でいらっしゃったのでしょう?」
先ほどの弱々しい姿はどこへ消えたのかきちんとした姿勢と態度で話している。
もちろん、先導者の話は作り話だが半分は事実である。ファウセンがあの方にラグタナのことを頼んだことは知っていたのだ。知っていて良かったと本当に思う。
ここは、作り話をさらに展開するしかないようですな。
「ファウセンガアナタノコトヲキニカケテイマシタ。コノクウドウノコトモシッテイマス。アナタニハキタイシテイルトモウシテオリマシタ。ソレデ、マズコノクウドウハナンナカセツメイネガエマスカ?(ファウセンがあなたのことを気にかけていました。あなたには期待していると申しておりました。それで、まずこの空洞は何なのか説明願えますか?)」
先導者は質問する。
もちろん、作り話ですが。
ラグタナは感心したように頷きながら返答した。
「ファウセン様が私のことを気にかけてきださっていると…。そうですか。私のようなものを、期待しておられると…。そ、そうですか。………………。」
会話が止まってしまったが、何かに気づいたのか物凄く、さっきの暗い表情とは違って気持ち悪いくらいの笑顔になった。そして、勢いよく立ち上がり先導者の方を向く。
「よし、決めました!私の篭りもそろ潮時のようです。自分もそろそろ仕事に精を出そうと思っていたのです。この空洞は私の趣味が詰まった場所です。私たち下位神は主に世界の管理と新たな世界の作成を仕事としているのです。それで、今私が管理している世界が4つほどありましてそれらの世界の文化に興味を持ってしまいまして…。特にアニメなどの二次元と呼ばれるものに。」
坦々と話すラグタナの姿に、かつての弱々しい様子が見えないことに流石に驚く。何が彼に火をつけたのかはわからないが面白い方向には確実に進んでいるだろうと確信する先導者であった。この宣言を受けて、先導者はこう返す。
「ナルホド、ニジゲンニキョウミヲモッテシマッタト…。コモッテイルキカンガナガカッタノハ、ソレホドハマッテシマッタトイウコトデショウ。(なるほど、二次元に興味を持ってしまったと…。篭っている期間が長かったのは、それほどハマってしまったということでしょう。)」
さらに続けて言う。
「コノトウシンダイノフィギュアタチモ、ソノエイキョウデスナ?ソレニシテモ、ホカニモタイリョウノマンガヤライトノベル、DVDナドガバッとアルヨウデスネー。(この等身大フィギュア達も、その影響ですな?それにしても、他にも大量の漫画やライトノベル、DVDなどがあるようですねー。)」
説明が遅れたが、この空洞はかなり広く目測で約50平方メートルほどあるが、その3分の2、つまり約30平方メートルを等身大フィギュアが埋めつくしている。
残りの空間は、読者がよく知るパソコンがなぜか置かれており、それを乗せたデスクの周りを囲むようにDVDや漫画、ライトノベル、さらにグッズの収納ボックスがしまわれた複数の棚が置かれていた。足の踏み場がないとはこのことだと感じるほどに週刊誌が床に綺麗に並べられており言語が違うものもいくつか見られる。辺りを一回ぐるりと見回すとラグタナが口を開く。
「そうです。ハマりすぎて気づいたら100年も経っていたのです。それにどうです?僕の天使達は。何か気になるところはありましたか?実は、管理の仕事だけは密かに行っていました。どの世界が二次元という最高峰の境地へと到達できていました!!本当に素晴らしいですよ。二次元というものは。」
すごい興奮して話すラグタナ。
イケメンなのにオタクですか…。天使達は…触れないようにしておきましょう。話がこれ以上長くなっては困ります。しかし、二次元は神の性格でさえ捻じ曲げてしまうんですね…。でも密かに仕事してたっていっても、どうせ二次元目的でしょう。
さらに質問を続ける。
「キニナルトコロハアリマセンガ、ナゼキュウニヤルキニナッタノデスカ?(気になるところはありませんが、なぜ急に仕事をやる気になったのですか?)」
このまま二次元目的で篭っていてもなんらおかしくはないが、急に篭るのをやめるとなれば相当な理由があるはずである。単にファウセンに目をかけられているという理由だけでは、あのひ弱なラグタナがここまでイキイキとするわけがない。ラグタナはその質問を待っていましたというばかりに、言い放った。
「せんちゃん様、よくぞ聞いてくれました。少し長い話にありますがどうかお聞きください。実は今ある4つの世界の二次元はもう全て網羅してしまったのです。それで、……実際30年から暇だったのです…。だから、だからですね今までのものを読み返したり観直したりしていたのです。ですが流石に今では気になる作品しか見ないようになってしまい…、言うならば飽きてしまったのです。
それで、私は世界管理以外のもう1つの仕事に気がついたのです。なんだと思いますか?
それは、、、、世界作成です!!
下位神は主にこの仕事を任されているのですが、私はまだおこなったことがないのです。世界作成するとどうなるか、わかりますか?。名前の通り、新しく世界が作成されますが私が興奮気味なのは別の意味があるからです。。その世界を二次元として見ることができるのではないかと思ったからです。ハマってから100年というものの気づかなかった自分かわなさけないです。それでですね、1人の人間の人生を見つめて見たいとおもいます。。はじめ、その世界に住人として紛れ込むことも考えましたが流石にそれでは上位の神に下位神以下の存在にされてしまうので諦めたのです。
これって、ある意味そこらに転がるクソアニメを見るよりマシですよね。はい、マシですよ。ふふっ、ふふふり
どうです、興奮しますよね。」
興奮気味であることは自覚していましたか。
それにしても、なるほど、世界作成ですか。先ほど何かに気づいていたのはこのことだったのか。つまり、4つの世界の二次元を全て網羅した彼は仕事でもある世界作成を利用して1人の住人に少年に焦点を当て、その人物の人生を追体験するような感覚で観察したいということですね。
確かに、そこらに転がるクソアニメよりは価値があるかもしれないと僕も真面目に思ってしまいました。
「タシカニソレハオモシロイデスナ。デシタラ、イマカンリシテイル4ツのセカイデハダメナノデスカ?(確かにそれは面白いですな。でしたら、今管理している4つの世界では駄目なのですか?)」
ひ弱は彼は本当に真面目な話どこへいったのだろうか。ラグタナは自信満々に腰に手を当て返答した。
「それは、ですね。この4つの世界は前任者から引き継いだものなのです。もし自分が管理している世界で素晴らしい二次元に出会えるなら、その世界は自分の作成した世界であってほしいのです!初めての世界作成で初めてのリアルな世界の二次元的観察。もちろん、二次元的観察を実現するに値する設定の世界にしますよ。」
自身に満ち溢れているラグタナの目。もうそれはかつての彼ではなかった。完全に篭りという殻からでてきたようだった。あの方がラグタナを勧めた理由もわかるような気がしてきた。
あとはこのまま世界作成を後押しするだけである。先導者は立ち上がり向かい合い、ラグタナ級の興奮度を装い発言した。
「ナ、ナント、スバラシイカンガエデスナ。サッソク、セカイサクセイヲオコナイマショウ。(な、なんと、素晴らしい考えですな。早速、世界作成を行いましょう。)」
ラグタナは向かい合って立たれて、一瞬激昂されるかとも思ったが、せんちゃんの予想外の言葉に歓喜していた。
「おぉ。せんちゃん様にわかったいただけて嬉しいです。で、では早速あちらのパソコンで。仕事は普通、上の八畳間のほうにある専用の端末で行うのですが、こちらのパソコンでできるようにしました。」
ラグタナは先導者をパソコンがあるデスクへ手招きをすると椅子に座りキーボードを操作する。慣れた手つきで操作し、ディスプレイに世界管理、世界作成の項目が並んで表示される。世界作成をクリックすると設定画面が何百項目に渡って表示された。実に300項目。それを彼は、今までにないほど目を輝かせて入力していく。わずか1分で終了してしまった。
途中、
「西洋系にしようかなフフフ、いや핲ㄹでもいいな、やっぱり帝国ものに…、いやいややっぱり…フフフ」
といった感じで気持ち悪い声を出しながら笑い、悩むようなこともあったがそれでもすばやく全ての設定を済ませた。そして、最後のステップに差し掛かる。
[作成検査]
という部分をクリック。
すると、画面にはサークルが表示されている。何かを読み込んでいるようだ。どうやら、ラグタナの話によると作成検査というのは、上位神に、不正な世界作成が無いか見てもらう行為だという。読者には、作文の添削のようなものだと思ってもらった方がわかりやすいだろう。
説明をしていると、サークルが消え
「検査が完了しました。このまま作成できます」
と表示された。彼はおぉ!、と、激しい叫び声に近いものを上げると下に表示されている
[世界作成_実行]
を震えながらクリックする。
すると、パソコンのディスプレイは激しい光を放ち目の前を照らす。
その光は、僕とラグタナだけではなく約平方50メートルの空洞までもすっぽりと包んでいった。