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下位神のワールドメーキング  作者: 文字trum
第1章 第一部
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第22話 無関心・無表情

第22話 無関心・無表情




かつて元全神ローマイヤーがこよなく愛した世界。いまやその世界の名すら禁句となった理由は分からないが、ローマイヤーは『地球』という星の『日本』という国を溺愛していた。他国より優れた先進技術と文学、学力。どれをとっても他国とは比べなれないほどの高い質の国。

世界名が外され、廃棄世界となったそれは今もその場所に漂っている。


ある場所に、様々な世界があった。

周りは真っ黒。でも、よく見ると光の点がたくさん溢れかえっていた。

そこは廃棄場。廃棄世界のあるべき場所。

誰にも支配することも干渉することもできない空間。

だが、ある1つの光点に、フヨフヨと緑色の光を放つ何かが吸い込まれていった。

音を立てずにひっそりと……。

よく見たらその光はどんな形だっただろうか?

それは誰にも分からない……。



<<


ラウル=リチャットは暗闇で目を覚ましていた。ラグタナからの最後の言葉のあと、処理システムに呑み込まれたラウルは廃棄された世界へと転移するはずである。

しかし、周りを見渡しても何も見えない。まだ色がある時空間の方がマシだったと言える。暗闇にポツンと1人。おそらく敵の仕業であるだろうが、どうなのだろう。

先ほどから頭がズキズキしていた。頭痛ではあるだろうが、今までに感じたことがないぐらいに強烈は痛みだった。脈拍とともに頭痛の痛みが重なっていく。

暗闇故あって静かというわけではないが、どこか静寂。まるで声が聞こえないかのようにさえ感じてしまう。

「あーーーー。」

大声で叫んで見たら、

『あーーー』

と、反響したことに驚いた。

すると、その空間はまるで何かの中にあるかのように動き出した。前後左右上下……あらゆる方向に当然ラウルもその揺れの影響を受ける。立っていられず倒れてしまったラウルは、しばらく立ち上がることはできなかった。

揺れが収まったとき、ことは生じた。

暗闇に赤い光源が現れ、

パリンッ!

それが弾け人の形が見えた。

その人物はラウルへの前へと姿を現した。


黒髪黒目の少年。背は大して変わらないが、筋肉が自分と比べて付いていない。

話しかけようとラウルが一歩前に出ようとしたとき、あることに気づく。

少年の目には光がない。どこか虚ろで正気すら宿っていないように見受けられる。

「悪いんだけど、君はだれ?」

ラウルは声をかけた。

虚ろは少年の身体は、ラウルに応じたように歩き出したのではなく動き出した。

急速に一直線にラウルの元へと近づく少年の身体。

動けなかった。

自分の足を見た。

まるで全身金縛りにでもあったかのようにラウルの足は地面へと吸い付き、ラウルのゆうことを聞かない。

ラウルが顔を上げ、前方を確認しようとしたときにはもう遅かった。

少年の身体は眼前へと迫っており、勢いよくぶつかるっ!はずだった。

その恐ろしさに目を瞑ってしまったラウルも体への衝撃が感じられないので不思議に感じていた。

目を見開いたラウル。

そして、変化に気づくのであった。

黒髪の少年は消えたが、自分の中に変化を感じたラウル。胸に手を当て色々と考えるが何がどうなったのかさえ分からない。

金縛りはもう解けていた。

考えても分からないことをこれ以上考えるのは無意味と考えてたラウルは、ラグタナとの腕輪でのメッセージのやり取りを思い出す。


「!?」


そう思った直後、目の前が真っ白になった。

声をあげられないくらい、頭の中にぽっかりとした空間が開く。


まるで、何かがなくなったように。


そして、


膨大な量の何かがその空いた空間を埋め尽くした。


ラウルは言葉を発することも、ましてや思考することもできなかった。

まるで、自分が凍結されてしまったかのように。

どうすることもできないラウルは、そのまま暗闇へと足から沈んでいった。


<<


一方その頃、

「どうしよう。廃棄世界はまずい。不味すぎる。あっ、そうだ。確か…」


ある所では、1人の神が汗を飛ばしていた。

敵に対抗する唯一の手段とも言える鍵が、なくなってしまうかもしれないのだ。

慌てる神は、机にある本棚から一冊の古めかしい辞書のようなものを取り出した。


パラパラとページをめくり、そして止まる。

そこにはこう書かれていた。


《処理システムによる廃棄世界への転移による影響》

・生体反応のある者に限り、その世界の住人への憑依。また、前世界でのすべての記憶の抹消。故にある者は、廃棄世界の住人に憑依したにも関わらず元の世界の記憶を失い何事もなかったように憑依する前の人間となんら変わらない存在となる。これが、処理システムのメリット。生体反応のある者をその世界の害とならないように処置する。神暦13569年作成『時空間管理プログラム』より


「ラウルくん、無事でいてくれ。」

彼の思いは、届くのだろうか……。


>>


ここは廃棄世界が集まる場所

廃棄場―通称『ダストエリア』

多空間と格別されたこの場所は、誰からの支配もされない。

鉄壁の場所。

そんなこの場所に神界を騒がせたある世界が存在している。

廃棄世界『フォーステルース』。

青き惑星が主に特徴であり、海がその半分以上を占める。青き母なる星『地球』と呼ばれるその惑星には、たくさんの国が大陸を分け合っている。

魔物もいない、魔族もいない。

平和そのものの世界。

そんな『地球』には、ある国がある。

国の名を『日本』。

唯一の世界技術発信先進国であり、その技術の高さは神界のそれに及ぶものがあるとされている。

だが、それがフォーステルースを廃棄世界へと誘う充分すぎる理由だったのだ。神にまで匹敵するほどの技術―知性の高さは、いずれ神にまで影響する。そう考えた神界の神たちはフォースアースを廃棄世界として葬った。


だが、廃棄から7000年。

一つの光が廃棄場を漂いフォーステルースの地球へ。そして、地球から日本へ一直線に飛んでいくのだった。



<<



今日は、暑い。

いや、今日も暑い……。

僕を、直接太陽がカンカンと光輝き照らしているわけではないが……。

そんなことは、今はどうでもいい。


前日の昨日は風邪らしきものを引いて寝込んでいた。

突然の激しい頭痛。

立っていられないほどの警報を鳴らす体。

熱もなく、風邪の症状が一切表れなかった。


なぜ普通に普通の生活を送る僕にこんなことが起こったのか……?


興味がない……。


自分のことを自分でいうのは、馬鹿馬鹿しいことである。

といっても、何か羞恥心を隠しきれないというわけではない。

多くの人は、いや一般人は、自分の内面的な顔を覗かれるのが酷なのである。


だが、僕にはそのどちらにも関係ない。


無関心だから……。


何をやっても興味がない……。

何をどう感じても顔に出ない。

まぁ、無表情でもある。


とはいえ、生きることには興味はある。

なかったら、当の昔に首吊り自殺に及んでいるはずだから。


唯一の興味、趣味とも言えるだろうか……。

『人間観察』

簡単にいうと、例えば学校の教室で出来事を周りから眺めるだけの傍観者。

人の行動には必ず意味がある。

頬杖をついたり、空を見上げたり、目をそらしたり……。

そんなことに興味を持ってしまったおかげで、クラスメイトの知らない一面まで余計に知ってしまうこともある。

何かに使える!、とは考えたことはないが何にも使えないだろう。


今この時期―つまり、高校一年の4月の終わり。

ついこの間中学生という本当のガキを卒業したわけだが、高校一年もなんら変わりはない。

男子はいつまでたってもガキ。

女子は多少色気付くぐらいで、中身は子供のまま。

ようやくクラス内にも仲良し同士のグループが出来始め……。

当然僕は孤立組…。


キーンコーンカーンコーン


そろそろ一時間目の授業が、始まるようだ。

窓際の僕は突っ伏してきた顔を机から持ち上げ、つまらなそうな目で外を見つめた。


白雨柊 高校一年 趣味は人間観察。

と青空に説明するかのようにスッも目を細め太陽へと自己紹介する。



>>


4月28日 一時間目 総合


柊のいる一年四組の教室ではすでに生徒が着席しており、教壇の上で話す教師に目が向けられていた。


「よぉし、今日の総合では5月に行われる体育祭についてだ。

体育祭は年に二回、今月と10月なわけだが、違いがある。

今月の体育祭は桜祭とか呼ばれてはいるが、学年対抗ではない。

グループ対抗戦だ。5人一組のグループを作る。

男女比は3:2

全校生徒900名で180グループを作るってわけだ。

グループの運動力に力の差がでるのは、あまりいただけないんだが一年のうちは気にしなくていいだろう。

まずグループを作ってくれ。

手早く頼むぞー。」


ハツラツとした笑顔で、手をパンパンと叩き生徒たちに説明したのは、御上(みかみ) 真吾(しんご)教諭である。

高身長で、白い歯と聞けば熱血教師を想像するかもしれない。

だが、御上教諭は顔は並。

また、暑苦しい言葉も発しない。

ましてや、筋肉人間でもない。

自称熱血教師の彼は、その熱血でなく熱心なところが生徒に人気がある。教師のなかでも当たりくじのような存在らしい。



実は、白雨達は一年四組だが隣の五組の担任と密かに付き合っているのを柊は、気づいていた。


皆の前で二人で話しているときの、仕草を見れば一目わかる。かすかな瞳孔の動きも見逃さなければ、恥ずかしさも感じていると気づくことができる。


基本的にクラスメイトはおとなしい。

ただし、教師の前では。

これはどんな悪ガキにでも当てはまる。

当てはまらないのが不良だとするならば、四組に不良はいない。



御上先生の発言に質問する生徒はいなかったが、女子と組めることに男子は興奮を隠しきれていなかった。

当然の反応であるが、四組の場合は特別な興奮であるだろう。


なぜなら、一年マドンナ四天王の内2人がこのクラスにいるからである。

マドンナ四天王とは、学校裏サイトにおける各学年男子専用ページで企画されたアンケートの結果によって決められたものである。

勉強面、可愛さ、デレさ、ツンデレさなど、

男子が女子に求めるあらゆる要素が項目となっており、ホームページ内にある女子生徒の写真を見ながら行うことができる。

もう何年も前から行われているものであるさら、女子目的で入学してくるものも後を絶たないらしい。

ちなみに白雨はアンケートに参加していない。

なぜなら、女子にも興味はないからだ。

興味があるのは、その人間の動作が何を理由にして行われたかである。

それ以前に恋愛感情というものを理解したことがなかった。


四組にいる四天王の内2人を紹介しよう。

まず一人目


古河 薫子 (ふるから かおるこ)


成績優秀、容姿端麗はテンプレものだが、

演劇部のスーパースターのルーキーでもある。

黒髪ロング故の可愛さとクールさ。

身長は高いため、その容姿から委員長キャラにも思えなくはないが、口調は優しく一声話すだけで教室中に花畑が広がり、空に虹がかかるほどである。

面倒見のいい性格をしていて、非の打ち所がない。


二人目


西野 みのり (にしの みのり)


いわゆる可愛さ満点のスポーツ少女。

剣道部所属。

肩まで伸びた茶色の髪を時々二つにわけて結んだりする。

身長は平均的だが、道着を着ると……剣道部曰く自分の体の2倍以上に見えるそうだ。

凄まじい迫力と圧力は中学生時代から続いており、全中ベスト8の好成績を残している。

性格は温厚だが、深く考えすぎなところが多い。周りに目を配れるところは剣道の才が出ているだろう。


他の2人は1組と9組にいるが、紹介は省かせてもらおう。


とにかく、クラスの人数は30人。

つまり、6グループできるため、二人と同じグループになれる確率は30パーセント弱だ。

しかし、二人が同じグループに入るとなるとその確率は15パーセント近くまで下がってしまう。


そんなことを考える男子が取る行動は一つ。


女子が組み終わるのを待つことだ。

男子が先に組んだとして、そこに二人が来る可能性はゼロに等しい。

女子が先に組むことにより、男子は選択肢をできる得ることができる。


だが、そのかわり負けられない戦いの火蓋がおろされるのは言うまでもないだろう。


男子がよそよそしくなるなか、女子は席を立ち固まり始めた。


男子はそれを見て、目を瞑り手を合わせて何かに祈りを捧げながら待っている。


真吾先生もこのことは想定済みだったというように、苦笑いしていた。


黒板には、6グループのメンバーの名前が書けるようになっておりチョークでうまく書き分けられている。


グループの決め方にルールなんてものはない。たかが、学校行事。

柊の頭の中は、空っぽだった。

一番相手の行動を読み取りにくいのは、授業中である。

教師の一言で、生徒が取る反応は限られているため判断がつけにくいのである。

そんな時、柊はいつも自分が行動することによって生徒たちがどんな反応をするのかと考えていた。


そして、男子は静まり、女子が和気藹々と恥ずかしがりながら話し合いをするなか、


柊が席を立つ。

大体こんなことに時間を使うぐらいなら、この後の皆の反応を見たくてたまらない柊であった。


1人の男子生徒の予想外の行動に、動揺する生徒たち。

真吾教諭ですら、驚きを隠せていなかった。


「あれ何してんだ?」

「まさか、女子より先に組む気か?」

「嘘だろっ、あいつ本当に男なのかよ……。」

「あぁ、あいつっていつも何考えてるかわからない……んーと、名前は確か……」


周りの男子がどんな言葉を囁こうが、関係のない話である。

前方で固まる女子陣に近づいた時にも、同様の反応だった。



女子は呆気に取られた顔をして、なにも言葉を発さなかった。

女子から見た柊は、はっきり言うとわからない存在だった。

発言もしないし、授業では一切指名されない。もはや、いないかのような存在として認識されていた。

私たちに興味が無いのだろうか?という疑問が生まれなかっただけ、四組の女子はいい部類に入るだろう。


壇上へと上がった柊は、黒板に書かれたA〜Fグループ―6つのグループのうち、Aグループに名前を書いた。


ガタッ。


ガタッ。


すると、柊の背後から二人が立ち上がる音が聞こえた。

振り返ると、男子二人が立ち上がり壇上へと近づいてくる。


予想外の連続に男子はようやく言葉を失った。

柊が入学してから教師以外で唯一話した二人だ。


1人は、小学校からの腐れ縁。

陶山 恭平 (とうやま きょうへい)

全中ベスト4に輝くほどの実力を持つ剣道部の期待の新人である。

顔も身長も一般的。短髪黒髪。

熱心な性格ゆえに、真吾教諭の生き写しともいえるが歯はキラキラしていない。


もう2人は、純チャラ男

梅咲 和仁 (うめさき かずひと)

学年一位の秀才、容姿は抜群だが、髪色は茶色。

ただし、地毛らしい。

チャラチャラしていて、ピアスの穴やネックレスをしているが意外と優しい。

誰とでも仲良くしているが、彼の過去は誰も知らない。


さて、そんな2人は柊に話しかけてきた。

「柊ちゃん、俺もグループに入れてくれ。」

「ラギっち。俺も入れてくれっす。」


柊とは「ひいらぎ」とも読むため、後ろ二文字とって「ラギ」と呼ばれている。

恭平が入りたい理由はわかるが、和仁が入りたいと言って来るのは意外だった。

まあ、早くメンバーが埋まるならいいことである。


「いいよ、あとは女子を待つだけだし。

名前は僕が代わりに書いておくよ。」

「「サンキュー」」

笑顔に見せ応じた二人。

グループに3人分の名前を書き終えた柊はチョークを置き、3人は席へと戻る。


再び始まるガヤガヤとした話し声。

席に戻っても誰からも文句をつけられることはなかったが、男子を敵に回してしまったのかもしれない。


その後男子であるクラス委員長と、女子である副委員長により時間もかからずグループは決められた。

クラス委員長に関しては、男子の不平をよく抑えたなと思う。

そして、決まったのが次の通り。


柊のいるAグループは、

白雨柊、陶山恭平、梅咲和仁に加え、

女子2人は、四天王の1人である西野みのり、クラス副委員長の七瀬かおり(ななせ かおり(である。


七瀬かおりは、クラス委員長である月浦一星(つきうら いちぼし)に生徒会選挙で勝利したメガネ女子。

黒髪ろんぐだが、常に後ろで結んでいるため髪を下ろした姿は誰も見たことがない。

その高い身長とメガネゆえに女王と陰から呼ぶ失礼な人間がいるが、古河同様そんなキャラではない。ただ、口調が厳しいのは当てはまるかもしれない。


月浦 一星

選挙で負けたことで七瀬かおりに対抗心を燃やす漢。

とはいっても、安定のメガネで高身長。

時折、右手をメガネに添え、レンズが輝くのはリーダー権を行使している時と勝ち誇っている時である。

短髪黒髪こそ、委員長の王道だ。


古河かおりが入ったグループはCグループ。

最後までギリギリ入らずにいたため、メンバーは控えめそうなおとなしい男子ばかり。

柊の無表情と張れるぐらいの無表情である。


大分、男子からは非号の声が上がったが、真吾教諭がなんとか宥めた。


意外と早く終わったことにフゥーと息を吐く。

「よし、組み終わったな。じゃあ、今度は各グループで……って、なんだあれは?」

真吾先生が途中で話をやめ、教室の天井を目を凝らして見ていた。

釣られて生徒たちも天井を見上げる。


しかし、柊たち生徒が見る間もなく、教室の天井が突然激しい光を放つ。


「うわぁ!」「何なの!?」

蛍光灯よりも強く眩しい光であり直視できない。

皆が驚いて目を瞑る中、柊は光の原因を探るため必死に発光源をじっと見つめた。


「何だ?。」


それは、ファンタジーでいるなら魔法陣。

錬金術でいうなら、錬成陣というのだろうか。

おそらく天井に書かれていたはずのそれは次第に回転しながら降りてきた。


柊は自分が魔法陣に潰されてしまうのではないかと見をかがめるが先に生徒たちをすり抜けていった。


そのまま魔法陣は光を発光したまま回転し、教室の床へと消えていった。


光が収まり、自然光に目が慣れていく生徒たち。


すると、真吾先生の姿は消え教室の出入り口の引き戸は消失し暗闇が奥には見えていた。

窓の向こうさえも、体育で使われるグラウンドではなく暗闇しか見つけられない。


突然の事に、呆然とすることもなく目を丸くし唖然とする生徒たち。



「おいっ、どうなってんだよ!」そ

その第一声を発したのは、

久喜雅人(ひさき まさと)。ある1人の少年をいじめる3人組の1人。金色に染められたその髪は、周りの生徒を怖がらせている。

3人組のなかで最も頭が回るが、悪知恵にすぎない。


久喜の言葉を聞いて、現実へと戻ってくる皆。


「どうなってんだ!?」

「外が見えない……。」

「入り口もだ!」

途端に教室内は動物園と化す。

引き戸は開けることができず、窓も同様だ。

万が一開けられたとしてもあの暗闇の中に踏み込めるかといったら中々いけるものではない。

こういう時は、委員長だろうと内心思う皆。

それ答えるように立ち上がる一星だが、事態は進んだ。


突如、途轍もない揺れが柊たち生徒を襲っていた。

引き戸が外れ、窓ガラスも割れた。


「うわぁ、」「きゃぁぁぁ。」

「机の下に入るのよ!」


叫び声が教室内に響く中、七瀬の声が教室に響き渡る。

次の瞬間、謎の浮遊感に包まれた。


浮き上がることはなかったが急に耳が詰まる。

エレベーターに乗っているような感覚だった。


長く続く感覚。


ヒュウヒュウゥゥゥゥゥウウウーーー


時折聞こえる風切り音からして落下しているのだろうか?


そして、その揺れと浮遊感が感じられなくなった時、教室に光が差した。


パタン

四方向の壁と天井がまるで薄い板のように音もせず生徒たちに倒れないように、外側に倒れた。


教室全体が光に照らされ、気持ちの良い風が頬に当たっている。


風……?

校内であるはずの教室の壁が外側に倒れた時点でこの場所は、もう違う場所であることは変わらなかった。


周りは辺り一面の木々。

深々と生い茂っているそれらは教室を包むように円形に立ち並んでいた。


背の高い木から差し込む細い日差し。


ジャングルのような動物の鳴き声が聞こえ、上空高くを飛ぶ鳥のような生き物さえ見える。


たった数分間の出来事は柊たちの想像を遥かに超える結果となった。

呆然とする生徒や、泣き出す生徒がいる中1人だけは、冷めていた。


白雨柊、彼だけがこの状況に無関心というか何の反応も示さなかった。


僕は何が起ころうが、関係ない。


ここがどこだろうと構わない。


だが、全身から吹き出す大量の汗に不思議な目を向ける柊。


この状況は彼の全神経を刺激していた。


僕はなぜこんなに汗をかいて、ドキドキしているんだ?


自分の観察でも始めてみようかと思った。


柊はかつてないほど無表情で空を見上げていた。

そして、言った。


「分からない。」

でも、僕はなんだか変われそうな気がした。





















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