第14話 これは恋、それとも友情!?
第14話 これは恋、それとも友情!?
午前零時、ほとんどの家が暗闇と同化するなか月の光があたりを照らしていた。
その光は、ファルマン家の道場もかすかに包んでいる。
中には、女が2人。
暗闇の中、相対し、今戦いの火蓋が切られようとしていた!
未だ終わらぬ夜の時間が紡がれようとしていた!!
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リエラ=ドレッドと、桐生静葉は互いに向き合っていた。
互いに表情に色々を示さないが、心の中はドロドロとしたマグマが煮えたぎっていることだろう。
「静葉先輩、1つ聞きたいことがあります。」
リエラの表情は暗闇に溶け込んでいるが、その強気な声色に静葉は慎重に対応する。
「どんなことですの、リエラさん?」
「率直に訊きます、ラウルのことはどう思っていますか?」
リエラの目は、月の光を反射し静葉へと向かう。
「良き弟子だと思っていますわ。
そう遠くないうちに私を追い越すでしょう。」
「そういうことではありません。
ラウルに恋愛感情はあるのかと聞いているんです。」
静葉にとって、ラウルの存在は同じ流派を学ぶ同士であり、弟子である。
故にそんな感情を持ったことな一度もなかった。
「恋愛感情などありませんわ。
あくまでも私は師匠のみですわ。
それに、ラウルさんには女性と仲良くなっている時間などありませんの。」
「それは、いじめのことですか?
それともアルと戦わせるためですか?」
リエラには先輩がラウルに急かして剣術を教える理由がこれしか思いつかなかった。
だが、この理由だと女性である先輩がラウルに剣術を教える理由の説明にはならないのである。
「確かにいじめのことも関係していますわ。
ですが、1番はラウルさんの周りにリチャット流剣術を使える方がいらっしゃらないこと、そしてそれを使える私が今年で卒業することですわ。」
「確かに、リチャット流剣術を先輩にしか使えないからという理由は分かります。
でも、今年で卒業なんて出来るんですか?」
「では、リエラさんだけに昨年の学内テストの私の順位をお教えしましょう。
全校生350人中第4位ですわ。
1位から3位までは前任の生徒会長と副会長の2人ですの。」
それはすごい成績だった。
1年組なのにも関わらず2年組や3年組ましてやそれ以上在籍している生徒を押し越して4位を取ったということである。
「つまり、今年卒業してしまう可能性は高いと…。
でも、卒業したあとなら!」
「私が王国外の一族の娘であることは知っていることでしょう。
しかし、このアカデミーには両親に必死に頼み込んで来たのですわ。
学長が叔父上であったこともありましたので。
両親からは条件を出されたのですわ。
2年で必ず卒業して速やかに帰って来い。
そうしないとお前に帰る家はない。、と。」
そんな複雑な事情があるとは知らなかったが、学長以外誰も知らない事かもしれないとりは思った。
「そんなっ。
じゃあ、ラウルはどうするんです?
卒業してすぐさよならなんて酷すぎますよ!」
ラウルはただでさえアルベルクやリエラから心が脆いと思われているため、リエラはそんなラウルのことが心配なのである。
「ラウルさんにはもう伝えてありますわ。
きちんと了承してくださいました。
だからというわけではありませんが、すごい勢いで成長してくれていますの。」
ラウルが受け止めたなら、納得できる話だった。
「そうだったんですか。
私てっきり……いや待ってください。
たまにラウルに見せるデレはなんですか?」
「あれは私なりの優しさですわ。
稽古中は厳しくしないといけませんので、それ以外はできるだけリラックスできるようにと思っているのです。」
理解しがたいところはあったが、ラウルから日頃の稽古の厳しさは聞いていたので何も言わないことにしたリエラ。
「そうですか、分かりました。」
静葉の言ったことはおそらく事実だろうが、暗闇に隠れた静葉の表情がどうなっているのかは分かりかねた。
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静葉が口を開く。
「それでリエラさんはラウルさんをどう思っているのですか?恋愛感情はありますの?」
予想していた質問だが、唐突にされるとは思っていなかったため僅かな動揺を見せた。
「えっ、……。
私は、…まだ分からないんです。
弟みたいに思ってる部分もありますし、第一はじめて今日男の子なんだなと思ったぐらいですから。」
「ふふふ、そうですか。
確かにラウルさんを見ていると母性本能が働いてしまうのも無理はありませんわ。」
「確かにそうですね。
でも、ラウルって今まで女の子と関わり全くなさそうですよね?」
「それは、私も同意見ですわ。
素直という言葉では置き換えられないくらい鈍そうですもの。」
ここまでくれば、先輩に対抗意識を燃やしていた自分が馬鹿に感じられくるリエラ。
ましてや自分のラウルに対する気持ちまでもがしっかりしていないのでは仕方のないことである。
「先輩を疑ってすみませんでした。
ラウルは私にとって弟みたいな存在であり、先輩にとって弟子であるってことですね!」
「そうなりますわ。
ただ、卒業するときに私の気持ちが変化していたら申し訳ありませんわ。」
「なっ。
まぁ、それは私も同じことが言えるので何も言えませんけど。」
「そろそろ寝ませんと、明日の稽古に支障が出てしまいますわ。」
「そうですね、先輩。
一緒のところで寝ませんか?」
「お言葉に甘えますわ。
では、行きましょう。」
2人の女剣士は微笑みあうと、すっきりした顔をして眠りにつくのだった。




