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リーダーと参謀閣下その2

小ネタ。バンとジーン。

 10年。それは永いようで短い時間だった。10年前に、拾われてきた黒髪の少年、その日から、アレは俺の『弟』になった。俺はただ、兄弟が増えた事が嬉しかった。それだけ、だった。

 いつも、泣きそうな目をした子供だった。自分はいてはいけないのだと、無意識に責めているような。幼かった頃の俺と、同じような瞳をしていると思った。だから俺は、助けてやりたかった。いても良いのだと、教えてやりたかった。他には何も、考えてはいなかった。

 あれから、もう10年が過ぎた。俺達は兄弟でありながら親友で、親友でありながら兄弟だ。10年という時間でお互いの何を理解できたのか。それでも、この絆だけは偽りではないと知っている。誰が何と言おうと。


「何をしているんだ、ジーン?」

「お前こそ、何やってるんだ?もう夜中だぞ。」

「喉が渇いたんだ。お前は?」

「寝付けなくてな。」


 俺のコトバに、バンは首を傾げた。そうさ、眠れないんだ。嫌な予感がしてるわけじゃない。お前を疑っているわけじゃない。けれど、バン。お前、本当に、アレで良かったのか?あの男をあそこに残したままで、拒絶したままで、良かったのか?

 俺は知ってる。お前が抱え込んでいる痛みも。お前が何故あの男を拒絶しながらも、斬り捨てられないかも。俺だけが、それを知っている。だから俺は、眠れない。寝てしまえば、夢に見るようで、怖いんだ。

 ガキのようだ。情け無いという事ぐらい、解ってる。けれどバン、お前は俺の『弟』なんだ。何があっても、お前は俺の兄弟なんだ。お前の望みが何処にあって、それが何処に辿り着くモノなのかは解らなくても。俺は、お前の『兄』なのだから。


「ほどほどに休めよ。身体壊すぞ。」

「お前もな。」

「心配してくれなくても、体調管理ぐらいできるさ。」


 ヒラヒラと手を振って去っていくお前を、俺は見た。立ち直ったフリをしている、お前を。意地を張りながら、それでも直向きに前へ進むお前が、俺は好きだった。だから俺は、お前の障害を取り除いてやりたいと思う。お前の辿り着く先は、親父の夢と同じような気がするから。

 ザーリッシュ・シュバルツ。俺はあの男が嫌いだった。今も昔も、俺は、あの男だけは大嫌いだった。憎しみではなく、ただ嫌いだった。けれど今は、同情してしまう。俺はあの男から奪ったのだろう。俺達は、あの男から、バンという存在を、奪った。

 けれど、バンはもう、俺達にとって必要すぎる存在だ。リィはあいつを『兄』と慕っている。ここに集っている仲間達も、あいつをリーダーとして欲している。だから俺は、あいつを護る盾となり、剣となろう。たとえ敵が、ザーリッシュ・シュバルツであろうと、皇帝であろうと。


 まだガキだった頃に、俺はあいつを護ると、決めたのだから。


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