リーダーと参謀閣下その1
小ネタ。バンとジーン。
何気なく言葉を交わす、それだけがきっと彼等の望み。
「起きろ、ジーン。」
「ぁ?……もう少し寝させろ、バン。」
「そうしてやりたいのは山々だが、もうすぐリィ達がやってくるぞ。のし掛かられても良いのなら、俺は見逃してやるが。」
「……起きる。」
がっくりと肩を落として、ジーンは起き上がった。眠そうに目を擦り、欠伸を噛み殺しながら半身を起こしている。昨夜も随分と遅くに戻ってきた。門が開くのはひどく不規則で、彼はその管理をしていた。ジーンしか知らない門も多い為、自然と忙しくなるのである。
バンの方は、そんなジーンを見て肩を竦めていた。1人でやるのが大変ならば、他のゲートキーパーに権利を譲ればいいのである。門が欲しいゲートキーパーは山程いるのだから、受取人は多いだろうに。そういっても、ジーンのポリシーに反するのか、彼が頷いた事はない。
元々、ゲートキーパーは2人一組だ。その役目を、ジーンは1人でやっている。レジスタンス『闇の翼』にはジーン以外にその力を持つ者がいない所為なのだが、こうやって疲れている彼を見ると、そろそろ限界なのではないかと思う。レジスタンスにも人が増え、参謀の役割も重大になってきた。ジーンが休む暇がないのは、一目瞭然、誰もが知っている事である。
「お前、しばらくゲートキーパーの方は休んだらどうだ?」
「何を言うんだ、いきなり?」
「最近疲れ気味だろう?そのうち倒れるぞ。」
「バカ言え。もしもその間に迷い込んできた奴がいたらどうする?帝国に掴まりでもしたら、目も当てられねーぜ?」
「それは、そうだが……。」
兄貴分の発言が正しい事を、バンは知っている。非常に悔しい事だが、ジーンは正論しか口にしない。だがしかし、それとこれとは別である。疲れて目覚めの意識覚醒が遅いジーンを見ていれば、そう思うのだ。元来彼は眠りの浅い方だというのに、ここ数日は他人の気配に気付かない程に深く眠っている。それが疲れの所為以外の何だというのだろうか。
そう思っているのだが、ジーンは譲らない。確かに、仕方のない事だとは解っている。ゲートキーパーの仕事は、2人の父親から譲り受けた仕事だ。バンがリーダーの座を継いで、リィが斥候役を継いだように。ジーンは、2人の父親達が行っていたゲートキーパーの仕事と参謀の仕事を、たった1人で受け継いだのである。彼等3人は、父親2人の仕事を分けて引き継いだのだ。
「とりあえず、リィが来る前には起きておけよ。」
「もうおきてる。」
「半分寝てるだろう?」
「失礼な奴だな。」
そう言いながらジーンは、疲れたように欠伸を一つ噛み殺した。




