甘いものなんかいらない
小ネタ。バンとジーンと+α。
「バン、匿え!」
「・・・・・・・・・はぁ?」
いきなりバタバタという音をさせて廊下から入ってきた親友に、バンは眉間に皺を寄せた。こちとら嬉しくもない書類の整理をやり続けているのに、いきなり何を?そんな彼を無視して、ジーンはバンの机の下に潜り込む。邪魔だと蹴り付ける彼を無視して、匿えと再度促す。今度は、目がマジだ。ここで逆らったら殺される。そんな気が、した。
次の瞬間、勢いよく扉が開いた。誰か1人ぐらいは、静かに扉を開けられないのだろうかとバンは思う。まぁ、無駄だろうが。花を背負ったリィとハイネに、二人に引きずられているレイジ。そのメンツを見た瞬間、何故逃げてきたのか分かった。少女二人の持つバスケットの中身は、おそらく甘いモノ。極度の辛党で甘いモノ嫌いのジーンにしてみれば、それはただの地獄の責め苦だ。
「バン、ジーンは?」
「さぁな。」
「しらばっくれるな。あいつが逃げるとしたら、お前のところしかない。」
「ユーヤやラードのところかも知れないぞ?」
「ぐぐぐぐ・・・・。」
動じた素振りを見せないバンの静かな返答に、リィが歯を噛み締める。内心、バンはリィに拍手をしたい。もっとも、二人の妹分なのだから、分かって当然かも知れないが。だったら、追い回すのを止めてやればいいのにと思う。
「いい。とりあえず他を探してから、もっぺん来る!」
「いってらっしゃい。」
ヒラヒラと手を振って見送った後、足音が遠ざかるのを確認する。出てこいと覗き込むと、げんなりした表情がそこにあった。腕利きのゲートキーパー兼参謀も、これでは形無しだ。くつくつと、楽しそうにバンは笑う。
「何が楽しい。」
「らしくなく取り乱すお前が見れて楽しいんだ。」
「お前、それは悪趣味だろうが・・・・。」
「まぁとにかく、さっさと逃げた方がいいぞ。又来るはずだからな。」
「いわれなくても逃げるわ。」
がらりと窓を開け放ち、今日は外泊すると言い捨てて消えるジーン。毎度毎度、おやつの為だけに外泊するのはどうかと思う。もっとも、ちゃっかり情報収集もすませてくるので、怒れないのだが。
「少しは大人になろうぜ、皆。」
そう言いながら、彼は楽しそうに笑った。
甘いモノが嫌いな人に、甘いモノを食べさせてはいけません。
むせるそうです。胃もたれするそうです。
だから止めてあげましょう。あの二人は止めないでしょうが。
とりあえず、ある日の一風景。