リーダーと参謀閣下その3
小ネタ。バンとジーン。
俺はお前に与える事ができるのだろうか。お前という存在が望む、誰もが共存できる世界を。迫害されることなく、誰もが生きていける世界を。俺は、お前に与える事ができるのだろうか?
答えてくれ、ジーン。俺の、『兄』…………。
「ねぼすけリーダー殿、目を覚ませ。」
「……ん?」
「ん?じゃねーよ。もうじき昼だぞ、バン。」
「もう、そんな時間か?」
「いったい何時眠ったんだ?お前が寝起きが悪いなんて、珍しすぎる。」
「……朝日を、見た気がする。」
「阿呆か、お前は。」
ぽかりと頭を殴られた。手加減された力とはいえ、痛い。寝惚けていた頭が、ゆっくりと覚醒していった。こいつ、時折腹が立つ行動しか取らないな。
もぞもぞと起き上がった俺の視界で、ジーンがカーテンを開けている。どうでも良いが、こいつ何でここまで元気なんだ?たしか、夕べも遅くに戻ってきたと思うんだが。連日の激務は俺だけじゃなくて、こいつも疲れてるはずなのに。……流石、タフな鬼神との混血児。
「仕事があったのか、寝付けなかったのか?」
「両方。」
「何考えてるのか知らないが、しっかり休めよ?」
「煩い、過保護。」
「言ったな、このボケ。」
じろりと睨み付けてくるジーンを見て、俺は笑った。そうだ、この会話が、俺達だ。こうやって、何もないような会話を、繰り広げるのが。深い意味のない会話を続けているのが、俺達だ。それだけで、いい。
「何を惚けた顔をしている?」
「いや、相変わらずいい男だな、と。」
「俺がか?何を今更。俺程いい男はそこらにはいないぞ。」
「まぁ、俺を除けば絶世の美男子と呼んでも良いかもしれないな。」
「さりげなく、自分を上に置くな。」
「痛い。」
頬を引っ張ってくるジーンに、俺は抗議する。その声が笑っている事を、自覚しながら。ジーンの顔も笑っているから、それで良い。この阿呆な遣り取りで、良いんだ。…………今は、まだ。
いつか俺は、皆が共存できる世界を、お前に渡そう。お前の父親が死んだ時のような思いは、しなくてもいいように。お前が、少しでも幸福に生きていけるように。そして、俺の、願いの為に。




