ここは僕等の家だから。
小ネタ。ユーヤとレイジ。
ある日、ふと思ったことを、ユーヤはレイジに尋ねてみた。
「お前、帰りたいとは思わないのか?」
「何が?」
「いや、聞いた話によると、試験の前日に飛ばされたって事だし。プロ目指してたんだろ?」
「目指してたよー。でもね、美味しく食べて貰えればそれで良いんだ。」
「は?」
きょとんとしたユーヤを見て、レイジは笑った。幼い子供のような笑顔だが、その瞳だけがひどく大人で。あぁ、これがあるからこいつはこれなんだと、そうユーヤは思った。ただのぼけた料理番ではない、純粋に願うモノがある青年。だからこそ、彼はここにいるのかも知れない。
「作りたいっていう願望と、食べて欲しいって言う願望。それを一番手っ取り早く満たせるのが、プロになることだろう?」
「あぁ、そうだな。」
「だから、なりたかっただけ。でも、ここならいくらでも作れるし。」
「そういうもんかぁ・・・・?」
まぁ、好きにやってくれと、ユーヤは呟いた。既に3年をこの世界で過ごしているレイジに、今更戻りたいという感情はないのかも知れない。それを少なくとも寂しいと思う感情は彼にはない。何故だろうかと思って、ユーヤは理解した。自分もまた、この世界に、この場所に、馴染んでいる。
バタバタという騒々しい足音がして、食堂の扉が開かれる。途端に、レイジが笑顔になった。彼を必要としてくれる人達が、ここにはいる。それだけで彼は、幸せなのだ。
「レイジ、御飯!」
「ハイハイ、すぐに用意するよ。ユーヤ。」
「分かってる。邪魔になるから向こうに行ってるよ。」
「皆ー、そろそろ夕飯の仕度宜しくねー。」
レイジは以下の料理人達は、ハイと元気よく答えた。なるほど、下のモノには慕われているらしい。まぁ、レイジの料理の腕前は確かなモノだが。幸せなのだろうと、思った。
不思議と愛着をわかせる、それがレジスタンス『闇の翼』。
同じ世界から来た二人。巻き込まれた二人。
けれど何故か、彼等はここに愛着を感じて、親しんでいるのだ。
いつもと代わらない遣り取りの中に安らぎを見出すように。
そこは、彼等の家なのだから。