親友が主人公を攻略している間に、わたしは攻略キャラで逆ハーレムを作りたいと思う
親友の亜沙美視点ですが、内容が全く違います。
わたしは幼なじみであって親友でもある入江 伊樹と一緒に異世界トリップをしたみたいだ。しかも、トリップした先の世界はどうやら、わたしが好きだったゲームの世界みたいだ。
だが、このゲームは攻略キャラが格好いいということで買ったBLゲームなのだ。わたしは乙女ゲームしかやったことがなかった。抵抗がありながらも、やってみたら主人公は女装をしていて女みたいでフルコンしやすかった。何よりも、攻略キャラが格好いいし、わたし好みのキャラだ。
そんなわたし好みのキャラで逆ハーとか素晴らしい。
だから、わたしは決めた。
「逆ハーレムを作る!」
「頑張ってー」
やる気のない声で応援されても嬉しくない。
今後の計画のために、まずは入学式前で迷子になるイベントを遂行しなければ。そのためには、主人公の代わりにわたしが迷子にならなければならない。なら、主人公はどうなる?
「私はギャルゲーの方が好きなんだけど…可愛い女の子」
親友の伊樹の言葉にハッとなった。
そうだ、わたしには可愛い女子が大好きな親友がいるではないか。主人公は男だけど、失礼ながら伊樹は馬鹿だから気付くことはない。
「可愛い子なら、ゲームの主人公が居るよ!」
「どこ!どこに居るのヒロイン!」
ガバッと勢いよく食い付いてきた。
わたしは辺りを見回して主人公を見つけると、伊樹に主人公を押し付けて、わたしは早々に最初のイベントをするために庭園へと行った。
ゲームでは実際に移動するわけではないので、わたしは初めて来た場所で本当に迷子になってしまった。
最初のイベントは迷子になって、庭園に入り込むというものだ。そこで、女装をしていた主人公は女子だと思われて口説かれてしまう。
だが、ここでわたしに重大な問題が発生したようだ。さっきも言ったが、わたしは絶賛迷子中だ。庭園にもたどり着けない。
「どうしよう、迷ったー!」
この学校広すぎるんだ。新入生には地図とか渡すべきだろ。
「なに、迷子?」
クスクスと頭上から笑い声が聞こえ、ハッと上を見上げる。そこには、木の太い枝に座っていた男性が居た。
男性は紫がかった黒髪に紫の瞳をしている。この男性は紛れもない、庭園に居るはずの攻略キャラだ。
名は、霧生。三年生の先輩だ。
ポケットに手を突っ込んだまま、木の枝から飛び降りる。素晴らしい身体能力だ。
「ふーん、なかなか可愛いじゃん」
「え、ありがとうございます?」
「語尾に疑問系はいらいないんじゃない?」
「…あっ」
ミスった。どうして霧生が目の前に居るのかに気を取られすぎてて、受け答えを間違ってしまった。
そこは「ありがとうございます?」じゃなくて「そんなことはいいですから、ここはどこですか?」だった。その受け答えで、霧生は自分に興味を表さなかった主人公に興味を持つことになる。
てか「ありがとうございます?」ってなんだ。なんで、疑問系なんだ。
最初からミスるなんてツイてない。そう思って霧生を見ると、彼はクスクスと笑ってた。
「きみ、おっかしー」
「はっ?」
「なかなか楽しめそうじゃん?いいねぇ、気に入ったよ」
「はぁ!?」
なんで、その受け答えでフラグが立つんですか?あなた、ゲーム設定を無視するつもりですか?
いやいや、これは好機と取るべきだ。わたしの行動でフラグが立つならいいじゃないか。
わたしは、思いっきり作り笑いをすれば、彼はスッと目を細めた。その姿に画面越しで見ていたスチルを思い出して、鼻を押さえたのは言うまでもない。
「わざわざ、作り笑いしなくてもいいよ。きみは素の方が可愛いんだから」
作り笑いがバレた。まだ、親友にしかバレたことないのにー!
目を細めたまま、霧生はわたしに顔を近付ける。至近距離に霧生の顔があるため、わたしの脳内はあらぶり状態だ。
格好良すぎる!いやもう、これってキスしたいんだけど!
「うんうん、そっちの方が可愛いよ」
「ん?」
わたし、さっき変な顔してませんでしたか?それでも、可愛いだと?随時と変な趣味なんですね?
若干引き気味で霧生を見るが、彼はわたし好みのイケメンだ。逆ハー要員には欠かせない。
ジッと観察するように見つめれば、霧生は優しく微笑んだ。その笑みにドキッと胸が高鳴る。
「かっこいい」
つい、思ったことが口に出てしまった。わたしは急いで口を塞ぐが、霧生は顔をしかめていた。
今度こそミスった。霧生は「格好いい」と言われるのが一番嫌いなのだ。
「きみもぼくの容姿が目当てなんだねぇ」
マズい、フラグを折ってしまった。こうなると、霧生とのフラグは一生立たない。
どうするかと焦っていたら、いきなり霧生がブッと吹き出した。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。放心状態で、ただ霧生を見つめた。
「あっははは…ぶっ、まじ面白い」
「はっ!?なぜそうなる」
「あぁー、まじ面白い。きみって最高!おれの言葉を鵜呑みして、焦る姿とか‥!」
やばいツボだ、と言いながら笑っていた。
わたしは呆然と霧生を見つめる。何が起きたのか、本当に分からない。
フラグ、とにかくフラグはどうしたのだろうか?折れてないのか?
その後、わたしは笑い疲れた霧生に講堂まで送ってもらった。
これって、迷子イベント達成でいいのだろうか?よく分からないが、怒ってないようだし大丈夫だろう。
親友には、わたしの行動に笑われないように迷子イベント達成と霧生がイケメンだったということを伝えた。
今日は、同級生のイベント達成を目指そうと思う。
同級生の攻略キャラは二人居て、一人は同じクラスで、もう一人は違うクラスだ。その二人の最初のイベントは同時に起こる。
この二人は幼なじみで、意見が合わずによく喧嘩する。出会いイベントも喧嘩中の彼らに会うものだ。
そして、わたしは笑みを浮かべた。なにせ、目の前には喧嘩中の二人が居たのだから。
「おい、さっきなんて言ったんだよ!」
「一度で聞き取って下さい。これだから、馬鹿は…」
短気な方は、同じクラスの雷綺だ。金髪に赤い目の彼は不良系の人種だ。
そして、対照的なのが優等生系の春雨だ。紺色の髪に同じく紺色の瞳を持つ。
わたしは、にやつく顔をペシッと叩いて二人に近付いたら、二人はわたしの方を見ていた。
なんで?さっきまで喧嘩していたのに、わたしの方を見てるのか?さっきの変な行動を見られたじゃないか!
「えっと、大丈夫ですか?頬が赤くなってますよ?」
「おい、このハンカチ使えよ」
二人はわたしのことを心配しているみたいだ。なんで?その言葉に尽きる。
「あ、りがとうございます」
「別に…」
ハンカチを受け取るとフイッと顔を背けたが照れていることが分かる。もう、雷綺が可愛すぎる!
にやにやしていたら、重大なことを忘れていた。ここにはもう一人の攻略キャラがいたことを!
「雷綺より僕のハンカチの方が綺麗ですよ?それに、僕の方がいいと思いませんか?」
「えっ?」
「おい、春雨!」
春雨の言葉に雷綺が突っかかって、また喧嘩が始まりそうな雰囲気だ。
ここで止めないとイベントが!
「ちょっと、二人ともっ!」
因みに言っておくが、わたしは決してタイミングが悪い子ではなかったはずだ。異世界トリップをする前までは。
ドサッドスッと嫌な音が聞こえ、何だか意識が朦朧としてきた。
次に目を覚ますと、すぐ近くに綺麗な顔が二つあった。いやぁ、凄く目の保養だ。
「大丈夫ですか!?」
「おい、お前!」
あぁ、心配そうな二つの顔は雷綺と春雨だということが分かった。
そういえば、わたしは二人が殴ろうとした瞬間に間に割り込んだのだった。そして、わたしが二人に殴られたということだ。
「いたい…」
「当たり前です!貴方は馬鹿なんですか!」
「そんな言い方ないだろ!こいつは俺たちの喧嘩を止めようとしただけだろ」
「そうですよね、すみません」
また喧嘩かとハラハラしていたが、二人はわたしの世話をせっせとしてくれていた。
そして、わたしは雷綺と春雨の好感度を同時に上げたのだった。
今は生徒会室に資料を持ってきた。そこで、イベントが発生する。
生徒会といえば、生徒会長だ。赤みがかったオレンジの髪に瞳を持つ、晴碼だ。
彼は一人しか居ない生徒会室で主人公と出会う。
生徒会室の扉をノックして、了承を得てから生徒会室に入る。忙しそうに書類を片づけている晴碼と目が合った。
「えっと、何かな?」
「書類にサインを貰いに来ました」
「うん、じゃあ見せて」
書類を晴碼に渡しながら考える。
晴碼のイベントは地味なのが多い。タラシの霧生とは違い、恋愛に興味がない晴碼は少しずつ進展していく。
今日の出会いイベントでも、仕事が大変そうな晴碼にお茶をいれるというものだ。
「あの、忙しそうなんでお茶をいれましょうか?」
「ん?あぁ、頼んでもいいかな?」
「はい!」
わたしは小さくガッツポーズを作る。
これでお茶を飲んだ晴碼が「また頼んでもいいかな?」と言えば出会いイベント達成だ。
わたしは生徒会室の備え付けのキッチンでお湯を沸かし、お茶をいれる。この日のためにどんだけ練習をしていると思っている!
「できた」
あとは、お茶を運ぶだけだ。
一つ言っておこう。決して、わたしはドジなのではない。
だから、何かに躓いてお茶を持ったまま転けるなんて予想もしてなかった。
ガッシャン!とティーセットが落ちる音を聞きながら、自分が温かい何かの上に乗っているなんて想像もしなかった。
「大丈夫?」
「あぁぁ、すみません!まじですみません!」
やってしまった!!
まさか転けて、仕事を増やさせてしまうなんて有り得ない!自分が有り得ない!
これで、晴碼は確実に攻略不可になった。好感度がマイナスだよ、絶対に。
「すぐに拾います!」
「いや、いいよ。女の子の君にそんなことをさせれないよ」
「でも!」
「君は大人しくしときなさい。そうしないと、キスするよ?」
「えっ!?」
このお方なんて言いましたか?キスするって聞こえたんですけど、なんで!?
これはあれか、新手の嫌がらせか。わたしをその気にさせて、あとからどん底に落とすという作戦か。
「固まってる君も可愛いね。今ここで食べちゃおっか?」
「はっ?」
もしかして、あなたは晴碼の皮を被った霧生ですか?
それでも、そんなことを言わない晴碼だからか!凄く格好いい!
「食べられたいです!」
わたし、何を言っているんだよ!何が食べられたいんだ。こんなこと言ったら、好感度がマイナスのマイナスだ。
「可愛いね、私に食べられたいのか」
チュッと額に唇を寄せる晴碼。
ヤバい額にキスされた!と額を両手で押さえる。わたしの脳内は「この額はもう洗えない」だ。
「また、生徒会室で待ってるよ。今度は、私に襲われる覚悟をしてきてね?」
優しい笑みを浮かべる晴碼に胸がドキドキだ。格好良すぎる。
わたしはなぜか知らないが、晴碼の好感度も上げたようだった。
今度は、二年生の攻略キャラ二人の出会いイベントをしようと思う。これで最後の出会いイベントだ。
この二人は、わたしが攻略するなら大変な人達だ。それは、この二人だけが男色家なのだから。
あとの人達は、主人公を女だと思って好きになり、男と知っても好きだからという感じになる。だが、この二人は違う。
そして、この場で彼らにあってしまった。
空いている教室の一角で、水色の髪と瞳を持つ霙と灰色の髪と瞳を持つ曇葵がイチャイチャしてた。
わたしはその教室のドアを開けたので、二人と目が合ってしまった。
「なに、覗き?」
クスクスと笑みを零すのは、曇葵だ。照れて恥ずかしそうに両手で顔を覆うのが、霙である。
「あ、いえ…失礼しました」
ガラガラと開けたドアを閉める。
なぜ、そうしたかというと、わたしはリアルな男同士を見たことがない。BLゲームもこの世界のやつしかしたことがない。
驚きすぎて、やっぱりわたしにはこの二人はレベルが高いと思ったので止めてみた。わたしは、霧生と雷綺と春雨と晴碼で逆ハーを作るからいい。
「うん、そうしよう」
わたしはドアの前で回れ右をしようとした瞬間、目の前のドアが開き、腕を掴まれて中へ入れられた。
「にげるの?」
「いえ、お邪魔だったみたいなので」
「おじゃまじゃないよ?」
わたしに話しかけるのは霙の方である。もじもじとしていて、守ってあげたくなるような男の子。年上なんだけどね。
「俺たちな、男って飽きてきたんだ」
「だから、ねっ?」
「はっ?」
何を言っているのですか、お二人方は。
男って飽きた?だから、わたしにどうしろと?
「あんた、俺たちの女になれ!」
「なって?」
いやいや、あなたたちは男が好きなはずだ。どうして、わたしにその言葉を言うのか理解出来ない。
女のわたしでは攻略不可能のはずの攻略キャラだ。
今頃思ったのだが、この世界ってゲームの内容と違いすぎてないか?
「もしかして…」
「どうした?」
「なに?」
本来、彼らを攻略する主人公が今ではわたしの親友にベタ惚れだからか?だから、彼らを攻略しようとするわたしが、彼らを攻略しやすいようになった世界なのか?
「だったら、それは凄く美味しいことではないか!!」
「おう、やっと俺たちの女になる決心をしたのか!」
「ずっと、あいしてあげるね」
なんか、よく分かんない方向に進んでいるが、これはこれでいいだろう。
なにせ、わたしは攻略キャラで逆ハーレムを作るのが夢だからな!
そうして、わたしは攻略キャラ六人を侍らせる女子となったのであった。
わたしのクラスに一人の攻略キャラが現れたら、次々と現れる攻略キャラ達。彼らは時にわたしを奪い合い、わたしの世話を焼こうとする。
そして、彼らは声を合わせて、わたしにこう言った。
「みんなで亜沙美を愛するから、亜沙美は全員を平等に愛してね?平等に愛さなかったら、お仕置きね?あぁ、それと他の男は見たら駄目だよ」
その時、主導権を握ってるのはわたしじゃなくて、彼らだと気付いた。だが、今更気付いても遅い。
だって、わたしは彼らを攻略してしまったのだから。
お読み下さって、ありがとうございます!




