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第三話

そういえば宣伝になってしまうのですが、ソーシャルゲームのアプリで企画とシナリオと、あとまあ管理?を担当したのがリリースされたので、よければやってみてください。そして評価を貰えると、作者の御給金に影響が出ます()

http://arithtap-api.arithtap.jp/index.php?action=go&id=14


iphoneでもAndroidでもストアとかで『もえゆりっ』って検索してもらえれば出てくると思います。

あ、ちなみに一応ですが、百合アプリです!


「ここか……」



 しばらく歩いて、ようやくクロトはラヴィエの村に到着した。


 小さいながらも、活気を感じさせる雰囲気があった。


 住んでいる人間の数は、村の大きさからして百と少しといったところだろう。



「ここに聖女ってやつがいるのか……」



 呟いて、村に足を踏み入れた。



「とりあえず宿でも探すかねえ」



 ひとまずクロトは村の中心へと向かう。


 その道中、すれ違った村人達から奇異の視線を向けられるのを感じた。



「……ん?」



 巨大な棺をいつも引いているクロトにとってそんな視線は慣れたものだったが、その中に、普段向けられる奇異や興味とは違う雰囲気を感じ取った。



「……」



 その正体を探ろうとする内、村の中心にある噴水の広場にクロトは到着した。



「村の中心なら宿屋くらいはあるだろうと思ったが……」



 クロトが辺りを見回すが、宿屋らしき建物は見当たらない。


 普通の民家ばかりが並んでいた。



「……手っ取り早く誰かに聞くか」



 決めて、クロトは丁度視界に入った女性に声をかけよう口を開いた。



「おい、あんた――」

「……!」



 声をかけようとした女性は、クロトの声を聞くと慌てた様子で身を翻し、小走りで去って行った。



「あん……?」



 顔をしかめつつ、今度は広場にいた男性を見やる。


 今度は声をかける間もなく、男性が立ち去ってしまった。


 そうして、広場にいた人間がどんどんと去っていく。



「……なんだ?」



 クロトが棺を地面に置いて、噴水の縁に腰を下ろす。



「この村には他所者と喋るなっていう決まりでもあるのか?」



 人気のなくなった広場に視線を巡らせて、クロトは溜息をついた。



「どうすっかなあ……初っ端からこんな感じかよ」



 ――聖女のいる村がある。


 クロトがその噂を聞いたのは、少し前のことだった。


 曰く、その村の聖女はありとあらゆる怪我を、病を、時に心の傷すらも治す。


 曰く、その村の聖女は古くよりその地にいる悪魔を己の命を犠牲にして抑え込んでいる。


 曰く、その村の聖女が生む子もまた聖女となり、三百年聖女の血は絶えていない。


 それを聞いたクロトはすぐさま出立した。


 クロトの勘が告げていたのだ。


 その村には、なにかある、と。


 あるいは自身の目的を達成することが出来るかもしれない。


 直感のままに、クロトは労働力として奴隷まで買って、はるばるこんな辺境の村までやってきたのだった。



「……ん?」



 そこでクロトは、視界の端に動くものをとらえた。


 見れば、一人の初老の男性がこちらに向かって歩いてきていた。



「なんだ?」



 男性は、そのまま真っ直ぐクロトの目の前にやってきた。



「こんにちは。旅の方、ですか?」



 柔和な笑顔で、男性がクロトに声をかけた。



「ああ。ちょっと目的地の途中に寄らせてもらった。宿をとりたいんだが、どうにも見つからなくてな」



 さも当然のようにクロトは嘘を吐く。



「ところで聞きたいんだが、この村は他所者を受け入れてはならないって決まりでもあるのか?」

「いえ、そういうわけでは……」



 男性が苦笑する。



「ああ、名乗り遅れました。私はロブフ=ルトゥマ、この村で村長をしております」

「クロト=メレイム。流れの吟遊詩人をしている」

「ほう、吟遊詩人と。それでは、そちらの箱には楽器などが?」



 ロブフがクロトの足元の棺に目をやる。



「ああ……商売道具が入ってる」

「なるほど。なにが入っているのかと思いましたが、このように大きな楽器があるのですな。どうでしょう、一度、なにか簡単なものでも歌ってはいただけませんか?」

「……悪いが、俺は俺の気が向いた時に、気が向いたものしか歌わないんだ。じゃないと、いいもんが歌えなくてな」



 クロトが素っ気なく返す。



「そうなのですか……」



 ロブフが残念そうな顔をする。



「で、どうしてこの村の人間は俺をあんなあからさまに避けるんだ?」

「……この村は、少し特別な事情がありまして。昔から他所からの干渉を避けてきたのです。そのせいで、どうも他所から来た方を避ける傾向が強く……この村には宿が一軒もないのですが、それも、このことが理由です」

「なるほどね……」



 ここでクロトは、自分に向けられた視線の中に含まれたものの正体に気付いた。


 忌避だ。


 村人達がクロトに向けたのは、触れてはならないものを見るような目だったのだ。



「しかし、宿が一軒もないというのは困ったな……流石に、村の中で野宿なんて情けない真似は避けたいんだが……」

「でしたら、よろしければ今夜は私の家に泊りませんか?」



 提案にクロトは内心ほくそ笑んだ。


 クロトからしてみれば、村長の家に転がりこめるなど、これ以上ないくらいに好都合な展開だった。



「それが許されるなら、是非。と言っても、馬鹿げた宿代を吹っかけないでくれるなら、だが」

「はは、もちろんその辺りは食事代だけでも渡してもらえれば問題ありませんよ。もちろん、色をつけてくださっても構いませんが」



 ロブフが明るく笑う。



「こんな気性で吟遊詩人なんてやってるせいで路銀はいつも厳しいんだ、勘弁してくれ」



 クロトは苦笑を作った。



「でしたら、是非一度、その吟遊詩人殿の歌が聞きたいところですね」

「……美味い飯があれば、もしかしたら気分が向くかもな」

「でしたら私の妻の料理にかかれば問題ありませんな!」

「そりゃ楽しみだ」



 作った笑顔で、クロトは肩を竦める。



「それでは、行きましょうか」

「ああ」



 ロブフに促され、クロトは立ち上がって棺を手にした。



「こちらです」



 先導されて、クロトは広場を出て、来た方向とは逆に向かって歩き出した。



「しかし、あんたは俺のことを避けないんだな?」

「別にこの村には他所の方を迎えてはならない、などという決まりはないのです。ただ過度の干渉を嫌うだけで……ですから、村長という責任ある立場の者として、また村人の一人として、この村がただの不親切な者達の集まりなどと旅の方に思ってもらいたくないのですよ」

「なるほどねえ」

「……それと、まあもう一つ理由はありまして。実は私は、身寄りのなくなった姪を村の外から引き取っていまして。だから、他の者より、他所の方に抵抗がないのかもしれません」



 なるほど、とさらにクロトが納得する。



「ところで、差し支えなければもう一つ教えてもらいたいんだが」

「なんですか?」

「……この村は、どうしてそこまで他所者からの干渉を嫌うんだ?」



 クロトの問いに、ロブフの表情が一瞬固まった。



「……別に言いたくない類のことなら無理には聞かないが」

「いえ、別にそういうわけではありません。これは、隠すような後ろめたい話ではないですし。ただ、こちらから一つお願いが」

「なんだ?」

「この話を、歌にしたり、それ以外でも誰かに伝えるのはやめていただきたいのです」

「……分かった」



 クロトが頷いたのを確認して、ロブフは語り始めた。



「――この村には、聖女、と呼ばれる女性がいます」

「聖女?」

「はい。この村の人間を悪魔から守り、あらゆる怪我と病を治してくださる、慈愛の聖女様です」


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