表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺たちの魔王はこれからだ。  作者: かっぱ
第六章 〜カウントダウン〜
323/408

52:『 3 』マキア、なんだかんだと言って自分はトールに甘いと思う。

3話連続で更新しております(2話目)

ご注意ください。

私はマキア。

ただのマキアね。紅魔女でも可。



さて、トールと私のぶらり西の大陸珍道中も空しく、なんか良くわからない小汚いおっさんと、何だかとても凶悪な巨兵幼女を拾ってしまったがばかりに、再びレイラインに帰ってこなくちゃいけなくなった。


しかも、ダリという小汚いおっさんに聞いた所、西の大陸に見えている研究施設は幻影で、実のところただの視覚的な立体空間で、転移魔法装置でもあるとか?


まあ要するに、私たちはみんな連邦のあのお姫様に騙されちゃってたと言う訳。

こんな嫌らしい手を考えたのは、もしかしたら青の将軍かもしれないけれどね。



「……」


眠るリリスを眺めていた。本当に、深く深く眠っている。

私はこの子が暴走をしたら、この子を殺すとカノン将軍に約束してしまった。

だってそうでもしないと、今すぐにでも殺せって言うから。


トールが迷うのは仕方の無い事だわ。

あいつはそう言う奴よ。悪いと分かっている存在でも、放っておけないの。


紅魔女自体が、そんな黒魔王に救われたんだもの……私がトールのその部分を否定する訳にはいかないわ。


「……って、私は本当にトールに甘いわね」


カノン将軍の方が、言っている事は正しかったと思うわよ。


それにしても、トールとカノン将軍の微妙な距離感は何とかならないかしら。

あいつら、勇者と魔王として争い憎しみあっていた頃の方が、よほどしっくり来ていたわよ。

今の状況は、気がついたらお互いの前世のしがらみを脇においておいて淡々とした仕事の関係を築かなければならなくなった。というものだ。

私がトールの記憶を封じたせいもあり、トールの勇者への憎しみは説得力を得ず、彼の中で宙ぶらりんになってしまったのよね。

今更それを振りかざす事も出来ずに、トールはおそらく、カノン将軍に対してどう対応すれば良いのか分かっていない。

カノン将軍だけは相変わらずトールを嫌っているというか皮肉っていると言うか馬鹿にしていると言うか……

よくよく考えたら、カノン将軍はシャトマ姫や私に対しては、ただ単純に無愛想と言うだけで、嫌っているという感じではなかった。ユリシスやペルセリスに対しても、そうね。あとエスカも?

だけど、トールの事はなんか凄い嫌いなんだろうな……という雰囲気は、私には分かる……

あ、あと青の将軍とか銀の王もかな。トールとは違うのかもしれないけれど。


いったい何なのかしらね。

前世からトールにゾッコンな私には、見えてこない部分ってあるのかしら。

そりゃあ、トールみたいなイケメンハーレム魔王、他の男から見たらぶっ殺したくなるのかもしれないけれど。

でもカノン将軍だってトールに負けず劣らずハイスペックじゃないのよ。

そりゃあ、威圧感が凄いから近寄りがたいのはあるけどさ……


見た目の色の持つ印象からは正反対。

性格も正反対。


今よりずっとずっと昔に、何かあったのかしらね……


「そう言えば、銀の王もやたらトールにご執心だったわね。私の事はぼろくそに言っていたけど……ほんと、あちこちの女の子に色々なトラウマを植え付けてんのね、あの無自覚ハーレム魔王様は…………いや、銀の王ってもともと男だっけ? んー……おかしな事になってるわね。あんまり考えないようにしましょ」


ぶつぶつと言っていたら、リリスが目を覚ましたようで、目をごしごしと擦っていた。


「あら、おはようリリス……夕方だけど」


「……」


「気分はどう? お腹すいたでしょう?」


そもそも巨兵が何かを食べたりするのかは分からないけれど。

リリスは私の言っている事が分かっているのかいないのか、うつろな瞳を向けてくる。

トールにも似ているけれど、どことなくレピスにも似ているわね。


「柔らかいパンと、クラムチャウダーと、茹でたにんじんを持って来たわ。食べられるかしら」


「……にんじん、嫌い」


「あら、初めて私に喋りかけてくれたわね。リリス、あんたにんじんが嫌いなの?」


問うと、リリスはこれ以上無く嫌そうに表情を歪めて、コクコクと頷いたり、首を振ったり。

慌ただしくて、どっちだか分かんないわね。


「でも好き嫌いはダメよ。トールみたいな奴だったらあんたを甘やかして、人参は食べなくても良いとか言うかもしれないけど、私はそうはいかないわ。あんたはちゃんと、人参を食べなくちゃいけないのよ」


フォークで、小さくカットされた茹でた人参を突き刺して、リリスの口へ持って行く。

リリスは「いやいや」と言いながら頑にそれを拒否したけれど、私はガッとリリスの鼻を摘んで、リリスの口に人参を放り込む。


ペッと吐き出しやがった。


「リ〜リ〜ス〜〜〜、あんた食べ物を粗末にするなんて、良い度胸じゃないのよ」


ズズズ……と顔を近づけ、ねちっこい言い方で叱ると、リリスは少しばかり青ざめて小さく頷く。

私の事は、一応少しだけ怖がっているみたいね。そりゃあ、一度戦っているしね、私たち。


だけどやっぱり、にんじんを疎ましく見ているリリス。

今度はクラムチャウダーに茹でたカット人参を入れて、一緒に食べさせる作戦。


スプーンですくって、リリスの口元に持って行く。


「はい、もう一口。はい、噛む!」


私の命令魔法が働いた訳ではないのに、私の声にびくっとしたのか、リリスはそれを口にして、我慢して噛んだ。


肩を上げて目をぎゅっとつむって、モゴモゴと口を動かせるリリスに、思わず吹き出した。

何だか梅干しを食べている時の顔みたいね。


「……たべた」


「そう、偉いわねリリス」


リリスが思いのほか、簡単に食べてくれた。

クラムチャウダーに入れると、なかなか美味しく食べられるようね。

ああ、何だかとっても美味しそう。自分が食べたくなる……


「もっと」


「あ、はい」


リリスに催促されて、今度は白い丸パンを与えた。

その白いパンをしばらくじっと見ていたが、小さな口でかじりつくリリス。

定期的に、クラムチャウダーを食べさせてあげた。


「……」


お腹が空いてたんだろうな。

リリスは食べながら、また少しだけ泣いていた。


本当に泣き虫だこと。だけど、お腹が空いていてどうしようもない時に、美味しいものが食べられたら、泣けてくる気持ちは分かるわよ。


何だか共感しちゃって、愛着が湧きそうだわ。



リリスはその後、用意した食事をぺろりと平らげて、再び眠りについた。

機械のような耳はラクリマを封印した時からぺちゃんと垂れてしまっていて、すっかり静止している。


ほんとうに、ただの幼い女の子のようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ