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俺たちの魔王はこれからだ。  作者: かっぱ
第六章 〜カウントダウン〜
297/408

26:『5+』トール、シンボルと世界色。

4話連続で更新しております。(4話目)

ご注意ください。

俺はトール・サガラーム。

かつて、黒魔王と呼ばれた男だ。



マキアがレナと一緒に寝ると言って、俺たちの寝室から枕を持って出て行った。

元々寝付きの悪い俺が、マキアの催促も甘えもホールドも無いのに眠りにつけるはずも無く。


正直もうほぼ婚約者的な扱いで、魔族もマキアを王妃様のように敬っている。

やっとこさ……いや記憶を思い出せばこそ、本当にもうやっと!

俺とマキアの心が通じ合い、俺たちのいちゃいちゃ新婚ライフはこれからだ!(※まだ結婚はしていない)という所で、この放置プレイ。

流石マキアさん。何枚も上手。


まさか、レナにジェラシーを抱く時が来ようとは……


「……」


レナ。

彼女は今日、自らの秘密を知った。

かつて、ヘレーナだった時に日記に残した覚醒の呪文が、トワイライトの一族に伝わっていたものを、巡り巡ってレナが知ってしまったらしい。

それもまた運命だったのだろうか。


ただ、一度俺たちに対する強い殺意を抱いた事が、逆に気持ちを切り替えるきっかけだったんじゃないかと思った。

母親が自分を捜している事を、マキアに知らされたレナは、強く自分が“平玲奈”であると意識した。

それこそが、ヘレネイアを押さえつける唯一の方法だと、カノン将軍が言っていた。


レナは自分を知り、何者であるのかを理解する事で、まるで生まれ変わったかのように前向きな少女になった。いや、なろうとしているのだ。

彼女自身は、やるべき事がわかっているから、と言っていたが。


レナは“地球へ戻る事”を、最大の目標とした。

そのために、ヘレネイアを押さえつける、と。そのくらいなら、頑張れる、と。


自分を知ったレナは、何もかもを知らなかったヘレーナと同じように思えた。

要するにとても生き生きしている。

“中途半端”に情報を持っていた頃のレナが、一番不安定で、一番ふわふわしていていたんだろう。

これからは新しい関係で、語り合う事が出来るだろうか。








『まさか、トール様から通信が入るとは思っていませんでした』


「俺だって、お前が出るとは思ってなかったよ」


早朝、眠れなかった俺は小型戦艦フリストを訪れ、フレジールとの通信を試みた。

レピスが変わらない淡々とした表情で、モニター画面に現れる。


『シャトマ姫様なら、朝の湯浴みに行っておられます。しばらくフリストに居てくだされば、後ほどかけ直しますが』


「そうだな。というかお前、随分とフレジールとルスキアを移動しているようだな」


『ええ。……身軽なのが私しか居ませんので。そのうちそちらに行く事になるでしょう』


「ああ、さっさと来ると良い。マキアも喜ぶ」


『所で、マキア様は?』


「お前本当にマキアが好きだな……」


『マキア様に戻ったマキア様は?』


俺の事にはさして興味が無さそうだが、マキアの事になると微妙に表情が変わるレピス。

マキアは俺の事を信用ならないハーレム魔王といまだに言うが、マキアも大概女たらしなんだよな……


ま、俺も真っ青なくらい男前だからな。仕方ないな。


「あいつはまだ寝てんじゃないのか? レナと一緒に風呂入って寝るって言ってたから。……正直、女子って良くわからん」


『あら……百戦錬磨の黒魔王様がそのようにおっしゃるなんて……』


「女心が分かっていたら、今頃こんな事にはなっていない」


『そうですね』


レピスは容赦ない。

至極その通りというように頷いた。いつも少し間を空けて落ち着いた口調でしゃべるのに、えらい即答だったな。


「ああ、そうだ。俺、お前に確認しておきたい事があったんだった。……トワイライトの一族に、ヘレーナの残した呪文が言い伝えられているようだな。それは、本当か?」


『……いったいどのような?』


レピスが少しばかり、妙な表情をした。


「確か……“エラス・アプレイ・プシューク”とか言ったな」


『……』


少しばかり考え込み、彼女は小さく頷いた。


『確かに、言い伝えられております。しかし、それは……いえ、少々確認させてください』


「……?」


どこか妙な空気が、画面越しからも伝わってくる。

鉄仮面のレピスが僅かに焦っているように見えるというか。

この呪文、ただのヘレネイアの覚醒の呪文では無いのだろうか……


『……所で、新しい魔族の国は、いったいどういった名前になるのでしょう……』


「え? ああ、それなんだが……ふふん」


レピスが話題を変えたので、ゴホンと咳払いして、先日決まったばかりの国名を可愛い子孫に告げようとした所。

画面の向こう側から「何だ何だ何だ」と声がして、レピスの座っていた椅子の背もたれに手をかけ、身を乗り出す少女が一人。

藤色の長い髪からは雫がこぼれ、湯上がりそのまま、薄い衣を纏ったシャトマ姫だ。


『何だ、トール・サガラームか。で、魔王の連国“レイライン”のタワーの事か? それとも……』


「ああああああっ!」


『ん? どうした?』


シャトマ姫、あっさり口に出してしまった。

新魔族連合国家レイライン。

そう。この西の大陸の魔族の国はレイラインという名で決定した。


その昔このいったいはローレイ王国という小国家が、治めていたと、地下遺跡に書かれていた所から、連合国家の意味を含めレイラインと名付けた。

レイラインというのには、岩石遺跡的な意味合いもあり、理由は様々あるのだが。

……まあ、そんな説明はもう必要ないらしい。


『レナの事なら、昨晩カノンから聞いた。カノンはそこに居るのか?』


「……さあ、フリストのどこかに居るだろうが、通信室には居ない」


『それは良かった。このような格好でお前と話しているのが見つかれば、たちまちはしたないだの、だらしないだの言われるからなあ』


「自由を満喫しているようだな、シャトマ姫」


シャトマ姫は相変わらず。

確かに少々プライベートな格好だが、いつものきっちりした格好ではないシャトマ姫も、それはそれで良いものというか……

あ、こんな事言ってるからマキアに信用されないのか。


『で……だ。レイラインの王』


「……?」


突然、シャトマ姫が真面目な声音になった。

彼女は自室からレピスや使用人を払った。


『レナの事だ』


「……レナ、か。確かに、ヘレネイアの事は、彼女には酷な運命だ。しかし、レナはとても前向きに……」


『そこではない。まだ、ハッピーエンドだと安心するのは早いぞ。レナはこれから、長く苦しむ事になるだろう』


「俺たちへ、仕組まれた殺意ってやつか」


『ああ。とりあえず、レナをフレジールへ帰還させようと思うが、良いか? 殺意とは、意識する魔王クラスに強く働く。レイラインには、そなたや紅魔女が居るからな。……色々な意味でよくない』


「それは、まあ……そっちの方が良いのかもしれないが」


「ふふ。お前たちの所に放り込んでおいて、と言いたげだな。仕方が無いだろう、あやつがそれを望んだのだから。黄金の林檎は投げ込まれるものだ」


「……」


シャトマ姫は、目の前の台の上に頬杖をついて、ずいと画面に寄った。

そして更に小声になる。


「それに、そなた……そもそも、カノンやレナの持つ“神殺し”の力が、どういったものか分かっておるのか?』


「……どうとは」


シャトマ姫の問いかけは、甘い蜜のように秘密めいていたが、同時に毒のようにも思えた。

彼女の周囲に舞う蝶の精霊が、画面越しに横切る。


『あの神器の力の仕組みは、実は至極単純なのだ』


「……冥王の……宿命が?」


『ああ。だが、この時代になって、やっと解明できた事とも言える。前にフレジールで……我々魔王クラスの体内に“魔導回路”があるという話をした事があっただろう。そもそも魔導回路とは、カノンが魔王クラスの遺体を長年研究し見つけ出したもので、今やっと実用化されている、と』


「ああ」


『我々の、破格の魔力数値、自己治癒能力、長寿の秘密は、実はそこにある。体に内蔵されている魔導回路によって、我々はこの世界の人間とは一線を画す力を、このちっぽけな体に収める事が出来ているのだ。要するに、一人一人がシステムタワー並、という事だ』


「……なんだと?」


『“世界の境界線”を越え、メイデーアへやってくる時、体、および魂に、魔導回路が書き込まれるらしい。それこそ、異世界へ跳ぶという超魔力的な現象と、このメイデーアという概念的に魔法の存在する世界が可能にした、特別な術式回路だ。世界を越えるたびに魔力が増えるのは、その回路が更に書き加えられるからだと、カノンは見ている』


「……そう言えば、前にルスキア王国の“システムタワー”が稼働した時、魔力の繋がったような、鼓動の重なったような感覚に陥った事がある。マキアと」


『それは、お前たちの体に魔導回路があるから、タワーと共鳴したのだろう。魔導回路は“繋がる”事の出来る術式だからな』


「……」


『カノンやレナの持つ、“神殺し”“魔王殺し”の力は、単純明快。要するに“魔導回路”を破壊する力なのだ。体内の魔導回路を破壊されれば、我々はただの人間となり、負った傷のまま死に至る』


シャトマ姫は、そんなに大事な話を、こんな画面越しに伝えていいのだろうか。

俺は、衝撃的な事実に、しばらく声が出なかった。


しかし、これで納得できた事がある。

かつて、黒魔王や白賢者は、ヘレーナや勇者の持つ神器に刺され、何故か体の中の自動治癒能力が働かず、息絶えた。

あれは、自身の魔導回路が破壊されたからだったのか。


そう説明されれば、理解できてしまう。


『レナは、異世界を越えて何度もやって来ているのに、実のところ魔導回路が無い。故に、どれほど努力しても、一般レベルの魔法しか使えない。それは、その存在自体に、魔導回路を破壊する神器の欠片が埋め込まれているからだ。我々が彼女から取り除いてやらなければいけないのは、そういったものだ。……容易ではない』


「だが、可能性はあると、カノン将軍は言っていた」


『……勿論だ。それこそ、三つのシステムタワーが完成すれば、可能性は……』


シャトマ姫が人差し指を立て真面目に話していた所、いきなり彼女が口をつぐみ、目を見開き青ざめ、ガタンと立ち上がったから何事かと思った。

俺はやっと、背後に居る存在に気がつき、そろっと振り返る。


「……勇者」


今さっき人でも殺して来たのかと思わされる程冷たい視線でモニターを見つめるカノン将軍が一人。

俺は久々に彼を勇者と呼び、無意識に腰にさした時空王の権威の柄に触れてしまっていた。


「……姫。そのような格好で“公務”をするなと、あれほど」


『だ、だってカノン。レピスが誰かと話していたから、気になってそのまま』


「だって、では無い。言い訳は聞かない。さっさと髪を乾かして結い、公務用の服に着替えるように」


『わ、わかっておる!』


「……」


俺は、モニター越しの二人のやり取りを聞きながら、思った。

……おかんかよ、と。


カノン将軍のこういう所を俺は知らなかったから、こいつ誰だろうと本気で思ったものだ。

あのシャトマ姫が子供みたいに怒られて、たじたじなのは見ていて面白いけれど。


シャトマ姫はその後、身支度の為に俺との通信を切った。

沢山の情報を、俺に与えて。









フレジールへの帰還命令をレナに告げると、彼女は素直に受け入れた。

本人もそちらの方が良いと思ったんだろう。

マキアは「早過ぎるわよ」と文句を垂れていたけれど。




その決定から、三日後の事だ。

マキアがやっと俺の部屋に戻って来た。レナの部屋から、枕を持って。


「やっと帰って来たのか」


「……そろそろトールにかまってあげようと思って」


「……」


「ねえ、トール、良いのかしら。レナをこのままフレジールへ返して……」


「何だ、今更。……まあ、そのかわりレピスが来るんだ。これから本格的に、レイラインは国づくりに入るし、トワイライトの者たちを奪還する作戦に移るだろう。連邦も、じきにここに気がつく。激しい戦闘は避けられない。レナも、ここより安全なフレジールに居た方が良い」


「……せっかく、もっと仲良くなれそうだったのに」


「楽しそうだなあ……」


ぼそっと呟くと、マキアは耳をぴくりと動かして、何だか少し嬉しそうに俺に聞き返す。


「あれ、もしかしてあんた、妬いてる? 三日も放置したから?」


「アホか。女友達に妬く程、俺は度量の小さな男に見えるのかよ」


「何よ……可愛くないわねえ。妬いてくれるのは、結構嬉しかったりするのにな。あんたが私の事で妬いてくれる事なんて、あるのかしら……」


しょぼんとしてしまったマキア。

ソファの上で膝を立てて枕を抱き、毛玉をむしって投げている。


何それ可愛いな。新技ですか?


でもまあ確かに、俺、マキアの事で妬いたことってあったっけ。

呆れる事は山ほど合ったが。

マキアが焼きもちをやいている所は何度も見た事があるけど……


「嘘だ。数日は少しだけレナを恨んだかな……」


「眠れなかった?」


「分かってるじゃねーか」


ユリシスが以前、マキアとペルセリスが仲良くしていて若干ジェラシーと言っていた意味が、やっと分かって来たかな。


「まあでも……早起きして、フリストから通信でフレジールの女性陣にかまってもらったりした」


「あ! こいつまた、私の見てない間に!!」


マキアは何度か俺に指を突きつけ、何が悔しかったのか枕の端を噛んで引っ張っていた。


「シャトマ姫に、色々と聞いただけだ。魔導回路の事なんかをな……」


「ああ。私たちの体にあるって言う?」


「ああ。何だお前、知っていたのか」


「前に少しだけ聞いた事があるのよ……」


マキアはソファの上でコロンと横になって、天井を見上げていた。

そう言えばこいつ、一度死んでからこちらに戻って来て、俺と出会うまであちこちで色々と動いてたんだよな。

フレジールとも繋がりが合ったから、俺よりよほど、色々な事を知らされてたんだろう。


「ねえ……もう眠いわよトール」


マキアがてくてくと側に寄ってきて、いつものごとく、猫撫で声で催促。

白い絹のネグリジェは胸元が大きく開いていて、前屈みにされると凄い。生唾を飲むレベルで。


しかし今晩、一緒に寝てやる事が出来ないんだな……実は。


「せっかく戻って来た所悪いが、今日はお前一人で寝てくれ。俺は今晩までに仕上げる仕事がある」


「……え」


ショックを受けた彼女の顔。

ふん、やり返してやったぞ。


「い……意地悪言わないで? ほら、あんたも寝ないと、ここ数日私が居なくて不眠なんでしょう?」


「すまないが、仕事だ」


しらっと。

マキアはムーッとして、「じゃあここで寝てやる!」と、隣の寝室から毛布を持って来て、ソファで寝てしまった。


しばらく放置してたら勝手に寝付いたので、まあ大ざっぱなマキアらしいなと思う。

仕事と言うと、なんだかんだ邪魔しない所も。


後で、ちゃんと彼女を寝室へと連れて行った。






「マキア……マキア、起きろ」


「ん〜」


日の出の頃。

俺は寝室で眠るマキアを起こす。


マキアは髪をぼさぼさにして、目を擦りながら起き上がった。


「もうあさなの?」


「日の出の頃だ」


「なんでおこすのよ」


あくびをして、また寝ようとする。

そんな彼女をまた揺り起こし、寝ぼけ眼のままだが部屋を連れ出す。


マキアはうつらうつらしながらも、俺に手を引かれるまま付いてくる。

地下神殿を上っていって、更に岩山に掘られた螺旋階段を上っていく。

寝ながら歩けるマキアの体力は凄いな。


「ほら、見てみろマキア」


「んあー」


マキアが俺に声をかけられ、やっと顔を上げた。

そしてやっと、彼女は自分が今どこに立っているのか理解した。


この岩石地帯にある、横からスパッと切り倒したみたいな台地の上。

強い風が、彼女のネグリジェと髪を巻き上げる。


「あれ、いつの間に私、こんな所に!」


「……けっこう歩いたぞ」


東の方から朝焼けがやってくる。

前に上空から、マキアと一緒に見た日の出のようだが、今日はより色が赤い。


「この台地の上に、システムタワーを建造するんだ。昨日、魔道要塞としてのプログラミングが終わった」


「……え」


マキアが何か尋ねる前に、俺は腰から時空王の権威を抜き、宙に掲げた。


「魔道要塞……“魔法の大塔グランタワー”」


この乾いた台地に、半透明の空間素材が出現し、積み上げられ、それはパズルのように組み合わさり、細長く白い、氷柱を逆さにして立てたような高い塔へと構築されていった。

この塔はまだ“イメージモデル”というだけで、確かな形や質感は無く、中身は透けて見え、レア・メイダも核となるラクリマも無い。


だが、マキアはそれを、これ以上無く目を見開いて見上げている。

所々に浮く透明の素材が、キラキラと、朝焼けの色を吸収して、赤く輝いた。

それらの素材はゆっくりと軌道を描いて塔の周りを回転し、世界の色を反映するのだ。


「凄い……凄い凄い、トール!! なんて綺麗なタワーなの!!」


「気に入ったか?」


「ええ、勿論よ!!」


興奮して、両手を広げてタワーを仰ぐマキア。

その横に並んで立ち、俺も想像以上のタワーの美しさに目を見張る。


「流石トール。デザインも最先端ね」


「はん。一度、地球という先端技術の発達した世界を経由した黒魔王を舐めるな」


「……あんたあのまま地球に居たら、建築デザイナーとかになってたかもね」


それは、ifの話でしかないが。

レナが地球へ戻ると決意してから、俺たちもここ最近、あの世界を思い出さずにはいられなかった。


だが、俺たちの生きる場所は、このメイデーアだ。


「このタワーは世界の色を反映する。青空の下では青くなり、星空の下では星を飾り、夕焼けの下ではオレンジ色になり、今日みたいな真っ赤な朝焼けの日は、赤く染まる。お前には、この色を見せたかった……」


マキアの赤を。

マキアは俺をじっと見上げて、その猫目をぱちくりとさせていたが、しまいにクスッと笑って俺の腕を取った。


「ふふっ、なかなか粋な事するじゃないトール?」


「ま、これは外装で、中身をこれから作っていかないといけない訳だが、シンボルがあるだけで、国づくりは多いに盛り上がるだろう?」


「ええ。そりゃあそうだわ。魔族たちはずっとここで生きていきたいって、強く願うでしょうね」


「……」


マキアの言葉は力強く、俺は少なからず勇気づけられた。


ここで生きていきたい。

そう思える、望まれぬ者たちの国を作っていきたい。


この、因縁の西の大陸で。



しばらく俺とマキアは、その塔を見上げ、二人だけの静かなる予感を抱いていた。

何かの幕開けに近い、予感のようなものを。


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