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俺たちの魔王はこれからだ。  作者: かっぱ
第一章 〜幼少編〜
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09:エレナ夫人、庭の子供らを観察しながら。



私はエレナ・オディリール。

オディリール伯爵夫人。


先日、我が屋敷に新しい使用人がやってきた。

私の娘マキアの御付きにと、夫のエルリックがカステッドより連れて帰って来たの。黒髪黒目の、トール・サガラームという器量の良い可愛らしい男の子。


何だかとてもおかしいの。

マキアとは初対面のはずなのに、元々知った仲であるかのように、初めて会っときはお互いびっくりしていたのだから。


でも、マキアはとても嬉しそうだった。あの子のあんなに嬉しそうな顔は初めて。

いつもどこか遠くを見ている子供で、本当に7歳やそこらの少女なのだろうかと思わせるほど思慮深い子だったのに、あの日の誕生日は年相応にはしゃいじゃって、なんだか少しうるっときたわ。


本当にトールを気に入ったよう。

ここ最近はいつも一緒に居るし、どこに行くにしても彼を連れて行くの。

誰と何をしていても退屈そうだったあの子が、トールと話している時は目がキラキラしているの。

たまに口喧嘩しているけれど、それはそれで微笑ましいわ。だってあの子は、お友達と喧嘩すらしなかったのだから。


最近活き活きしているあの子を見るのが嬉しくてたまらないわ。





そう、トールはとても不思議な子。

エルリックの大切な書類を盗人から取り返したのがきっかけで、この屋敷に雇われた、東の大陸出身の異国人。


色々苦労して来たんでしょうね。確かにマキアより年上だけれど、あの歳にしてはどこか落ち着いていて冷静な所があるわ。

何事も自分で考えて、何が一番いいのかベストをつくせるの。頭が上がらないわね。最近羽目を外しがちなマキアのストッパーにもなっていて、正直助かっているわ。


まあ少し生意気な少年という様な印象だけれど、そこが可愛いとメイドたちの間で大人気。


エルリックもあの子をとても気に入っている。

多分息子のように可愛がりたいのね。

なかなか子供の出来なかった私たちにとって、あの子もきっとかけがえの無いファミリーになれるわ。


そうそう、トールは我が家に仕える騎士のグラハムに、剣を教わっているのよ。

グラハムはとても期待しているらしいわ。すっごく筋がいいんですって。身体能力も高いし、物覚えもよくて、根性もあるからって。

グラハムには息子が居ないから、将来は自分の引退後、彼に騎士の座を譲りたいらしい。


本当に才能と魅力に溢れた子。将来が楽しみね。






マキアとトールは、たまにとても難しい話をしている様に見えるの。

大人ぶった態度で、眉間にしわ寄せて、何かを真剣に考えているのよね。いったい何の話をしているのかしら。

でも、確かにマキアは昔から、難しい顔をして何かを考え込んでいる時があったわ。

いまは一緒に考えてくれる人が居るのね。


あの子たちには、そう言った言葉にできない繋がりがあるんだわ。

エルリックは、どこかで二人、会った事があるのではないかってしきりに考えたりしているけれど、結局分からないようだった。


でもいいじゃない、分からない方がロマンチックよ。



いま、あの二人は庭のオリーブの樹を見て、何か口々に言っている。

気になるけど、私は盗み聞きに行ったりしない。

想像してみるわ。私なりに、あの子たちの会話を。



さあ、まだ幼いあの子たちが、これからどのような大人になっていくのか。

私はとても楽しみだわ。



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